477 / 719
第477話※
差し出した両手に、カチャン、と金属の輪っかが嵌められ、俺は深い諦めのもと、静かに目を閉じた。
あぁ、きっと霧生がしたことをそのままそっくりなぞられる。
両手を拘束されての、バイブに鞭に…と覚悟を決めたところに、ククッと火宮の笑う気配がした。
「っ…」
「これから何をされるか、分かってます、という態度だな」
潔いことで、と笑った火宮が、スルリとお尻を撫でてきた。
「っ!だ、って…」
塗り替える、って言われたし。それは上書きするって意味なんでしょ?
独占欲も嫉妬心も、並みじゃない火宮のことをよく知っている。
「ククッ、それは、苦痛にも耐える覚悟があるということか」
「そ、れは…」
嫌だけど、火宮がお仕置きって言うんだったら仕方がない。
「ふっ、確かに、俺以外の男に好きだなどと、たまには仕置きに痛みを与えてやるのもいいかもしれないが…」
「っ…」
「おまえにはやはり、こっちだろう?」
ぱさり、とお尻に触れたのは、鞭…?
だと思うのに、なんだかいつも火宮が扱う1本のそれとは違う感触で。
「こんな、苦痛なだけの打ち方をされて…。こんな鞭跡など、綺麗さっぱり塗り替えて消してやる」
「っあ!」
パシッ、と振るわれた鞭が、お尻の上で弾けた。
「ククッ、いい音が鳴る」
「っあんっ!ひゃっ!」
パチン、と上がった派手な音に、ビクリと身体が揺れた、けど。
あれ…?
「んあぁっ。ふぁっ?」
派手な音の割に、苦痛をそこまで感じない。
それどころか、じわりとむず痒く湧いた、この感じは…。
「な、に、これ…」
気持ち良さに近い感覚にギクリとして、俺は恐る恐る後ろを振り返った。
「っ?!」
「ククッ、バラ鞭だ。打ち方1つで、いくらでも快感を引き出せる」
「っな…」
柄の部分は1つで、そこに数本の革紐が束ねられているような、先がばらばらといくつにも分かれた鞭を振って、火宮が口角を上げる。
「テクさえあればな」と言外に聞こえたその言葉に、クラクラと目眩がした。
「な、んのテクニックですかっ…」
このどS。鞭を好きなように操れる技術とか。バカなの?
「ククッ、気持ちがいいようにだけ打ってやる」
「っな…」
薬も使わずに、そんな真似…。
「ふっ、せいぜい快楽に身悶えて啼くがいい」
パチン、とまた1つ、鞭が肌に当てられた。
「っあん…」
じわりと湧いた気持ちよさを、俺は首を振って振り払い、必死で、感じるものかと歯を食いしばった。
ともだちにシェアしよう!