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第505話

「ふぁぁっ。なんか、一生分の楽しみをもらっちゃった気分です」 火宮との部屋に入り、ぼすんっとベッドに飛び乗った俺は、にこりと笑って火宮を見つめた。 「ククッ、大袈裟だな。だが、そんなに喜んでもらえてよかったよ」 「はい。すごく楽しくて、嬉しくて、幸せで。俺はどうしたらいいんでしょう?」 コテンと首を横に倒したら、火宮がクックッと喉を鳴らして、薄く目を細めた。 「おまえはおまえが感じるまま、そうやってただ俺の隣で笑っていればいい」 「んもう。またそうやって甘やかす」 ジタバタと悶えたら、ガサッとベッドの上に置いた白いバラの花束が音を立てた。 「あ。後で花瓶をもらって来なきゃ」 「クッ、真鍋にでも言って、適当に生けさせればいい」 「駄目ですよ。俺がやります。だって、火宮さんからもらった大事な贈り物ですもん」 花束なんて、キザで恥ずかしいと思うけど、火宮がくれるものは、なんだって俺には宝物だから。 「ククッ、おまえは、本当にな」 「え?あ、そうだ。ねぇ、火宮さん」 「なんだ」 「そういえば、今まで聞いたことなかったなー、って。すごく今更なんですけど…」 そろりと上目遣いで窺う俺に、火宮の目が不思議そうに揺れた。 「なにをだ?」 「えっと、誕生日」 「は?」 「火宮さんのお誕生日。まさかもう過ぎちゃってるなんてことは…」 本当に今更過ぎる質問を放った俺に、火宮の顔が完全に虚を突かれたものになった。 「俺の誕生日…?」 そうか、言ったことはなかったか、と呟いている火宮に、コクコクと頷く。 「何月何日ですか?」 興味津々でワクワクと尋ねたら、大した日じゃないぞ、と言いながら「11月24日だ」と教えてくれた。 「11月生まれ!」 「なんだ」 「いえ。ただなんか、そうなんだーって」 「ククッ、なんだそれは」 可笑しそうに目を細める火宮だけど、火宮のことを新しく知れるのはただただ嬉しい。 「それに、過ぎてなくてよかったです」 11月なら、これから祝ってあげられる。 「ククッ、なんだ。祝ってくれるのか?」 「当たり前です」 俺にだって、過ぎてしまってはいたものの、こうして花束とかクルーズとかディナーとか、嬉しい贈り物をしてくれたんだもん。 「そうか。ならばリクエストは…」 ニヤリ、と口角を上げた火宮の、妖しい目に気づき、俺はパッと表情を引き締めた。 「は、裸エプロンとかっ、自分にリボンをかけて俺がプレゼントとか…あっ、1日中エッチ三昧とか、しませんからねっ」 火宮が言い出しそうなことなんて、絶対にその辺りだ。 思いつくまま、いくつか上げて先に否定した俺に、火宮の妖しい笑みが深くなった。 「ほう?それは振りか」 「はぁぁっ?んなわけっ…」 だから、どうしてそうなる。 「ククッ、おまえの希望なんだろう?」 「だからっ、そんなわけがっ!このエロおや…っととと」 やばい。 またつるんと滑りかけてしまった俺の口。 慌てて両手でガバッと押さえた俺は、ヘラリと笑って火宮を見上げた。 「エロおやじ、ね?」 「っーー!言ってませんっ」 最後までは、ってだけだけど。 「ククッ、言ったも同然だろう?」 「違う。全然違います」 「じ」があるのとないのじゃ全然。 「屁理屈だ」 「そんなことは」 「往生際が悪いぞ」 「だってさっき散々…」 クルーザーの中で、えっちとか、えっちとか、えっちとか…かなりヤりまくってきたばかりじゃないか。 もう無理だって! 「悪いのは誰だ?」 「それは…」 「恋人をつかまえて、エロおやじだ?」 「う、だからそれは…」 ニヤリ、とサディスティックに笑う火宮に、俺はタジタジとベッドの上を後退る。 「ん?翼?」 ニィッと完全に愉悦に揺れ、綺麗に弧を描いた火宮の目に見つめられた俺は、その場でピシッと固まった。 「仕置きだな」 ニヤリ、と艶やかに笑みを浮かべた火宮の美貌に、ゾクッと背筋が震えた。

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