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第506話

「とりあえず、全部脱げ」 「っ…」 脱げって…お仕置きとは一体何をされるんだろう。 完全に怯んでいる俺は、大人しくその命令には従えなかった。 「翼」 ニヤリ、と妖しく笑う火宮が、ギシッとベッドに乗り上げてくる。 「っ、ひ、みや、さん…」 ギクリと勝手に引いてしまった身体が、小さく震えた。 「ククッ、怖いか?」 「だ、って…なに、を」 これから身に起こることが分からないのは、なかなかの恐怖だ。 苦痛に泣かされるのか、快楽で責め抜かれるのか。どちらでも辛いことには変わりないけれど…。 「ふっ、百…」 「っ!」 百叩き? ビクッと竦んだ俺の身体を見て、火宮の目が愉悦に揺れた。 「ほら、脱げ」 やらなきゃ無理矢理剥ぐぞ、とその目が語っている。 「っ…」 その場合、さらに追加のどんな言い掛かりをつけられるか分からなくて、俺は震える指を服にかけた。 ぱさり、と脱ぎ去ったティーシャツが、ベッドの上に落ちる。 「それも」と顎をしゃくられ、ビクビクと脱ぎ去ったズボンと下着を、パサリとその上に重ねた。 「火宮さん?」 脱いだけど、と火宮を見上げる。 「ククッ、そのまま仰向けで寝転べ」 「えっ?」 百叩きって、うつ伏せとか四つん這いとかじゃないの? 不自然な体勢の指定に、思わずキョトンと火宮を見つめてしまった。 「ククッ、なんだ」 「っ…」 まさか、とは思うけど、今日はお尻じゃなくて、腹とか胸とかをぶたれるんだろうか。 怖い、と思いながらも、俺は恐る恐るベッドの上に寝転んだ。 「ククッ、声を出して、数をちゃんと数えろよ?」 「っ…」 スッと唇を指でなぞられて、ビクリと肩が跳ねる。 あまりに残酷な要求に、俺はぎゅっと固く目を閉じた。 「っえ?」 不意に、柔らかい何かが肩口に触れてきた。それは衝撃でも痛みでもなく、チクリと小さくくすぐるような淡い刺激を残していく。 「ほら、数」 「い、いち?」 反射的に答えを返して、ソロソロと目を開けた俺は、目の前でニヤリと意地悪く笑う火宮の美貌を見つけた。 「っ、お仕置きって…」 百回ぶたれるんじゃなかったのか。 「ククッ、百の痕を、おまえにつける」 「ひゃぁっ!」 「ほら、数」 意地悪く弧を描いたままの火宮の唇が先程とは反対側の肩口に消えていき、またもチクリと甘い刺激が加わった。 「あんん…に」 「んっ、さん…」 チュッ、チュッと音を立てては、チクリと甘い刺激と共に、身体に赤い痕が残されていく。 「ククッ、次は脇腹」 「んぁっ、ご…ッあ、ろくっ…」 ゾクゾクと、甘い刺激に身体が熱く震えた。 「んぁぁっ、よんじゅ、さ…ハァッ、ハァッ、もっ、つけるとこないッ…」 胸に、腹に、腕に足に…表側にびっちりと散りばめられた赤い痕を見下ろして、俺は上がった息で訴えた。 身体中に与えられるキスの刺激だけで、中心はすっかり勃ち上がってしまっている。 「後7つ」 「んぁぁっ!」 ぐい、と片足を持ち上げられ、性器のすぐ横、内腿の際どいところを吸われて、思わず身体が仰け反った。 「ほら、数」 「あっ、あっ、よんじゅ、よん…」 「こっちにも」 「あぁぁっ!よんじゅ、ご…」 内股を集中的に責められて、俺の中心からは先走りがタラタラと零れた。 それでも火宮は、中心を無視して掠めるようなキスと鬱血痕を残していく。 「ふ、ぁぁっ、ごじゅうっ…」 ようやく半分まで数え終わったところで、ゆっくりと身体を起こした火宮が、壮絶に妖しく微笑んだ。 「次は後ろだ」 「っーー!」 ぐるんと身体を返されて、まだまだ続く甘いお仕置きの予感に、ゾクリと胸が震えた。

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