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第533話

その後も、ファウルを出しては代償を拒否する豊峰のせいで……というわけでもなく、得点をいまいち伸ばせない俺と、どんなに頑張る紫藤が1人巻き返したところで、大人チームとの点差は開き続けていったわけで。 「うーっ…」 最後の黒球を、真鍋が華麗にポケットに沈めたところで、再び大人チームの勝利が決まった。 「ククッ、2フレーム目もいただきだ。後1フレーム」 ニヤリ、と唇の端を吊り上げた火宮は、もう完全勝利を確信している。 「くっそぉぉっ、次こそ。次こそはっ…」 ぎゅぅぅっ、と固くキューを握り締め、火宮を睨みつけるけれど、それがどれほど希望の薄い話かは、俺にもさすがに分かっていた。 「っ…」 それでも、火事場の馬鹿力。追い込まれた俺は、3フレーム目、1つのファウルも犯すことなく、ゲームをやり切った。 紫藤は相変わらず華麗に、そして豊峰も、4点のファウルを1回出したものの、その他のショットは順調で、なんと子供チームがそのフレームを制することができた。 「っしゃぁぁぁ!この勢いで!」 たったの2点差。それでも勝ちは勝ち。 勢いづいて、調子に乗った俺は、メラメラと闘志を燃やして4フレーム目に挑んだ。 結果。 「まぁ、君たちの性格だと、当然こうなるよね」 あはは、と笑いながら、微笑とも苦笑ともつかない表情をしている紫藤が、静かにキューを置いた。 「ククッ、さすがは翼。予想を裏切らないな」 愉快、と声を震わせる火宮が、ニヤリと意地悪な顔をしている。 「1度勝てたからと、調子に乗って油断するからだ」 ひやりと微笑む真鍋の目は、相変わらずにこりともしていない。 「本当、浮き足立って自滅するとか、面白すぎるよ、きみたち。これで絶対服従決定かー」 とどめはクスクスと笑い声を抑えもしない夏原の、認めたくない大人チームの勝利宣言だった。 「っーー」 「くっ……」 返す言葉もございません。 みんなが言う通り、1度の勝ちに舞い上がった俺たちは、すっかりあやこれやとやらかした。 無駄な強気で攻めまくり、本来当てられるはずの的球を外しまくり、取れた得点はほぼ無得点。 豊峰に至っては、出来もしないミラクルショットを無謀に狙い、見事にマイナス点を稼いでくれた。 ぎゅっと握り締めた拳がフルフルと震え、悔しさを堪えて噛み締めた唇が痛んだ。 「ごめん。藍くん、紫藤くん」 みんなでこれから罰ゲーム。 「いや、翼だけが悪ぃんじゃねぇし。むしろ俺だし」 半分白い顔をしながら、豊峰が頬を引きつらせながら謝ってくる。 「まぁ、仕方がないよね。2人と組んだ時点で、大体覚悟はできていたし、それなりに楽しかったよ」 1人、これでも余裕そうなのは紫藤だ。 大人チームの3人衆様の性格を詳しく知らないっていうのは、なんと幸せなことか。 「クックックッ、それでは約束通り、敗者は勝者に絶対服従の罰ゲームだ」 「っ…」 ニヤリ、とサディスティックに頬を持ち上げた火宮が、王様然として、艶やかに俺たちを見回した。

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