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第540話
*
楽しかったバカンスから数日後。
俺たちの生活もすっかり通常に戻り、今日も火宮は朝からいつも通り出社していき、俺は1人、残りの夏休みを、ダラダラと過ごしていた。
「はぁっ、暇だなー」
楽しく、充実していたバカンスの思い出を呼び覚ましながら、俺はリビングのソファーに寝そべって、呑気にスマホをいじっていた。
「あーぁ、今更思ったけど、写真とかもっと撮ればよかった…」
ボーッと見つめるスマホの画面の、写真フォルダを開けば、サービスエリアで豊峰たちとはしゃいで撮った写真が1枚、バーベキューでワイワイしているときに何気なく撮った写真が1枚、そして、クルーザーの甲板から撮った海の写真が1枚あるだけだった。
「まぁあの火宮さんが写真に写ってくれるとも思わないけどさ。1枚くらい、一緒に撮ってもらえばよかったかな」
次々に写真をスクロールしては、すぐに尽きてしまうその枚数の少なさを少々後悔しながら、ぼんやりとスマホを眺めていた俺は、不意にメールが届いたのに気づいて写真フォルダを閉じた。
「なんだろ?…って、真鍋さんか。ん、あっ、火宮さん、今夜は早いんだ?」
開いたメールはいつもの火宮の帰宅予定時間の連絡で、今日はどうやら夕食までには帰るらしい。
「そっか。じゃぁ今日は、腕を振るっちゃおうかな」
そうと決まれば、夕食の材料の買い出しだ。
「浜崎さん、っと」
ひょいっとソファーから起き上がり、俺はテクテクと内線電話のある壁際に向かう。
「ついでにちょっと、この前、真鍋さんがオススメだって言ってた参考書も見に行こうかな」
本屋と、スーパーと…と考えながら、外出したい旨を伝えた俺に、浜崎が快く返事をくれた。
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