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第557話※

「うぅ、あぁ」 「ククッ、何を唸っているんだ」 ニヤリ、と意地悪く笑う火宮が憎らしい。 「っーー!唸りたくもなります!こんな、手錠なんて…」 カシャン、と上下させた両手首の間で、右手と左手を繋いだ鎖が耳障りな音を立てた。 「ふっ、仕置きだと言っただろう?安心しろ、ちゃんと泣き叫ぶほど悦くしてやる」 「……」 泣き叫ぶのは、すでにいいとは言わない…。 ジトッと据わってしまった目を火宮に向けたら、艶やかな嗜虐者の微笑みが返された。 「さてと、下も剥くか」 ニヤリと弧を描く口元に、ゾクリとなる。 寝室に連れ込まれ、ベッドに下ろされてすぐに、上半身の衣服はすでに剥ぎ取られてしまっている。 「っ…」 「ん?なんだ。そんなに固く足を閉じ合わせて」 クックッと喉を鳴らす火宮が、せめてもの抵抗と身体を縮めた俺を、心底愉しそうに見下ろしていた。 「ふっ、まぁいい。そのうち、自分から脱がせてと懇願するようにさせてやる」 「っ、そんなこと、しませんっ」 「せいぜいそうして強がっていればいい」 ニヤリと笑う火宮は、すでに勝利を確信しているようで。 「っーー!どS火宮」 んべー、と舌を出した俺は、不意にトンッと肩を押され、ボスンッとベッドに倒れ込んだ。 「っぁ…」 「悪い口はどれだ」 「んっ…んんーっ」 がぶり、と唇に噛みつかれたかと思ったら、ヌルリと舌が、唇の間を割って入ってくる。 「んっ、ぅふ…」 わぁぁぁ、鼻にかかった吐息が…。 自分の反応が恥ずかしくて、カァッと頬に熱が集まった。 「あ、んっ、ぅ…」 べろりと顎の裏の弱いところを舌でなぞられ、歯列をツゥーッと滑っていく舌に、ゾクゾクと腰が痺れる。 「っ…」 「ククッ、きつくなってきたな?」 ニヤリと囁く火宮の声が、唇を擦る動きと同時に耳に触れた。 「はぅぁ…やぁ」 「嫌?気持ちがいいの間違いだろう?」 クッと喉を鳴らす火宮の低音が、ズクンと下半身を直撃する。 「っや、やっ」 苦しくなってきたズボンの前が辛くて、俺はフルフルと首を振りながら、カシャンと手枷の鎖を鳴らした。 「おっと。自分で触れることなど許していないぞ?」 下肢に伸ばそうと動いた手は、ひょいと火宮に鎖を捕らわれ、そのまま頭上に持ち上げられてしまった。 「ククッ、さぁどうする?」 ニヤリと愉しげな火宮の双眸が、俺の陥落を今か今かと待ち構えている。 「っ、だ、れが…」 あなたの思い通りになんて簡単になるものか。 ツン、と強気に顔を背けてやれば、途端にピチャリと別の場所で水音が上がった。 「はぅぁっ…」 ずるい! 無防備に晒された胸の突起に、チロチロと火宮の舌が這う。 「あぁっ、やだっ。やだそこっ…」 チュゥッと強く吸われたかと思えば、かぷりと甘噛みされて、たまらず腰がユラユラと揺れた。 「ククッ、その目」 「あっ、はっ、あんンッ…」 どんな目かは分からないけど、多分無意識に睨んだんだろう。 火宮の声に愉悦が揺れて、その目にはサディスティックな光がギラリと宿る。 「ぅあっ…」 眇められたその双眸。そこに俺だけが映っていることに、なんだかゾクゾクと甘い痺れが走った。 「あ、あぁぁ…」 もう駄目だ。 カシャカシャと手枷の鎖が鳴り、自ら腰を火宮の身体に擦り付けてしまう。 「ククッ、翼?」 妖艶に笑った火宮が、チゥッとひときわ強く、胸の飾りの斜め上を吸い上げたのがとどめだった。 「あぁっ!」 チクリとした小さな刺激と、全力の愛と独占欲がたまらなく嬉しい。 ドクンと中心に集まった熱が、解放を求めて荒れ狂う。 「あっ、あっ、火宮さん、刃…っ」 「なんだ」 「もっ、脱が、せて…あぁ、触って、下…もっ…」 完勃ちした性器が苦しくて、俺はゆらゆらと腰を揺らして強請っていた。 「ククッ、そんなこと、しません、ではなかったか?」 「っーー!だ、って…だって」 そりゃ言ったけど、そう思っていたけど。 「ん?翼?」 ニヤリと勝ち誇って笑う火宮が憎くて。 憎くて憎くて、だけど体内を渦巻く熱はもう限界で。 「うっ、ふっ、あぁ…っく」 ボロッと目から涙が溢れて、俺は悔しさに唇を噛み締めながら、震える声を絞り出した。 「ご、め…なさ…」 「聞こえないな」 「っーー!」 このどSっ! ギリッと奥歯が軋んだけれど、ここでキレたらますます意地悪をされるのは分かっている。 「っ、ごめん、なさいっ!俺がっ…反抗、して…っ」 悪かった…そう言えばいいのは分かっていて、けれどそうとは思っていないから、その先は上手く言葉にならなくて。 「ん?」 「っーー!触ってっ、ください!脱がせて!俺の、負けだからっ…」 精一杯。せめて俺ができる、限界ギリギリの敗北宣言を叫んでやったら、ニヤッと火宮の顔が愉悦に崩れた。 「クックックッ、いいだろう。ただし先の反抗の数々、それなりの覚悟はあるだろうな?」 「っ…」 意地悪な台詞とともに、ズルンとズボンが引き下ろされ、下着も一緒に脱がされる。 カシャンと手放された手枷の鎖に、ふらりと両手を下ろしたかと思ったら、グルンと身体がうつ伏せに返された。 「っあ…?」 「ククッ、望みはもちろん叶えてやる。だが、散々抵抗したんだ。触ってやるのはこちらだけだ。こちらだけで、イけ」 ニヤァッ、と火宮が意地悪く笑ったのは、見なくてもはっきりと分かった。 同時にツプリと蕾を押し開いて差し込まれたのは、ローションのチューブの先っぽで。 「う、うぅ、あぁぁ…」 ジュプッとチューブを潰されて、中身をナカに注ぎ込まれた。 不快感に身が震える。イヤイヤと、むずかるように首を振れば、チュポンと抜き取られたチューブの先の代わりに、火宮の指がずぶりと突き込まれていた。 「あぁぁっ!はぁぁっ」 「クッ、いい反応をする」 ぬるっと滑りのいい指にナカを引っかかれ、たまらず背が仰け反る。 「あっ、あっ、だめっ、そこ、だめっ、イッちゃう…出ちゃうーっ」 迷いなくナカのいいところをグリグリと押されて、すでに限界ギリギリだった前が、弾ける寸前で震え出す。 「クッ、イけばいい」 ニヤリとした火宮の妖しい声が背後から聞こえ、俺は目の前を白く染める快楽と言う名の波にあっけなく飲み込まれた。 「あぁっ、あぁぁぁぁっ!」 ピュクッと白濁がまっさらなシーツに飛び散る。 クシャリと握り締めたシーツの上で枷の鎖がカシャンと音を立てた。 ガクガクと腰が震え、下半身を支える膝がベッドのスプリングに深く沈み、火宮の目論見通り、後ろだけでイッた身体が、ガクリと崩れる。 「あっ、あっ、あぁ…」 射精の余韻でボーッと目の前のシーツを眺めていたら、不意にヒョイッと枷の鎖が火宮の指先に掬い上げられた。 「っえ…?」 「ククッ、どうだ、久しぶりの仕置きの味は」 両腕を上にあげさせられ、膝立ちの形になった身体が、眇めた双眸に晒される。 そんなの苦いに決まってる。 決まっているのに…火宮がそんなことをするのは俺だけで、こんな姿を晒してみせるのも俺だけだと思うと、苦いだけじゃないから困ってる。 「前からも後ろからもあれこれと垂らして…」 そそる、と耳元で囁かれてしまえば、またもゾクリと熱くなってくる身体はどうしようもなくて。 「抱、いて…」 あなたのもっと熱くて太いもので、俺の奥を貫いて。 ゆらりと揺らした腰につられて、タラリと後孔から溢れたローションが、ツゥーッと太ももを伝い落ちた。 「クッ…」 ふわりと笑った火宮から、ブワッとむせかえるような色香が湧いた。

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