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第576話※
「はっ、ふっ…」
息すらも奪い取るかのような熱い口づけ。
深く重ねられたそれが離れていったところで、ハッ、ハッ、と荒い息をつけば、ニヤリと笑った火宮の眇められた目が俺を見つめていた。
「な…んです、か…」
「いや?」
別に、と笑いながら、俺の身体をソファに下ろしてくる。
ひょいと俺が掛けた手錠の鎖の下から抜け出した火宮が、ニヤリと笑ってポケットから何かを取り出した。
「ほら、手を貸せ」
スッと翳して見せられたのは、どうやら手錠の鍵らしく。
「ん…」
そっと両手を火宮に差し出せば、カシャン、とあっけなく拘束が解かれていく音がした。
「ほら、自由になったぞ?」
「っ…」
ニヤリと笑った火宮のその言葉の意図は明白だ。
「んっ、ふ…」
言われなくても。
ちらり、と視線を向けられた、頭につけられた犬耳カチューシャを、俺は、ぐいと引きちぎる勢いで外してぽいっとぶん投げた。
「ん?」
で?ほら?と、意地悪く目を眇めている火宮の視線が何を言いたいのかが分かって、俺はムカムカと湧き上がる悔しさに唇を噛んだ。
「っーー!」
ギロッと睨みつけた俺の視線などどこ吹く風で、ニヤリと悪い笑みを浮かべたまま、火宮は意地悪く俺の行動を待っている。
ーーバカ火宮、バカ火宮、バカ火宮。
内心で、つける限りの悪態を吐きまくる。
だけど火宮は、シラッとしたまま、妖しい笑みを浮かべているだけだ。
「っ…」
仕方なく、恐る恐る伸ばした後ろの玩具が、ふさりと手に触れて、ビクッと身体が強張った。
「ククッ、どうした、翼。食えと言ったのはおまえだろう?ならば」
「っ…」
あぁそうですよ、分かってる。
この尻尾付きバイブ。これを抜かなければ、あなたの挿入る場所がない。
「っ、く…」
動きは止めてもらったとはいえ、すっぽりとしっかり銜えてしまっているこれを、抜き取るのは容易じゃない。
ずるり、とわずかに引いた玩具が内壁を擦り、得たくない快感に、俺はぶるりと身を震わせた。
「あ、あ、あ、やだ。やだ、じん…」
ずるずると、自らの手でナカを擦り上げてしまっているようなこの感覚がたまらない。
「あぁ、やだ。やだ、刃。助けて。たすけて」
ぞわぞわと、嫌なのに感じてしまう快感に身を震わせながら、俺は縋るように火宮を見上げた。
「ククッ、どこで覚えるんだ」
「ふぇっ?…じんー」
ぶわっと火宮から吹き付けた、むせかえるような色香の意味がわからない。
うるっと潤んでしまった目で火宮を見上げ、舌っ足らずになってしまった情けない声が漏れる。
「クソッ、おまえはな」
「うぇ?な、なに…っ?」
「これが計算なら、俺の完敗だぞ」
ククッと癖のある笑い声が聞こえたと思った瞬間、玩具に伸ばしていた手は振り払われ、代わりにそれを掴んだ火宮の手で、ズルッと一気にバイブが引き抜かれていた。
「ひゃ、あぁぁぁぁっ!」
だ、か、ら、その刺激はヤバいって。
さっきイッたばかりの性器が、ビクンビクンと勃ち上がり、再びの解放を求めて小刻みに震える。
「っ、や、火宮さっ…刃ッ」
グイッといきなり腕を引かれ、ぐるんと場所が入れ替わった火宮の上に、ひょいと身体が抱き上げられた。
「え…あぁぁぁっ!」
ちょっ、いきなりーっ!
ソファに腰を下ろした火宮の上に、跨る形で乗り上げさせられ、ずぷん、と一気に下から貫かれた。
ビクビクッと仰け反った身体に、目の前をチカチカと星が飛ぶ。
「ひぁぁぁぁっ…」
「クッ、締、まる…ッ」
はふはふと呼吸を整え、そろりと見下ろした火宮の眉が、きゅっと寄って気持ちよさそうに目が細められていた。
「あ、あぁぁ」
駄目だ、駄目。
その表情はずるい、反則だ。
きゅぅっ、と震えた胸と同時に、キュンと蕾も締めてしまう。
「クッ、ハッ、翼ッ」
あぁ珍しく余裕のない声。掠れて上気して俺を呼ぶ声がたまらない。
「あっ、あんっ、んっ、火宮さ…っ、刃」
「ふっ、はっ、イイ」
「あっ、あっ、激しっ…深ッ」
自重でいつもよりも奥深くを穿たれ、たまらず身が跳ねた。
「あぁっ、イくっ、イっちゃうっ…」
ガンガンと、下から思い切りナカを突かれ、ブルブルと震える性器が限界だ。
目の前に迫る絶頂に、髪を振り乱して頭を振れば、火宮がハッ、ハッと荒い息の下から、ニヤリと愉しげに笑う声が聞こえた。
「まだだ。まだもう少し」
「あっ、あっ、いやぁっ、離してっ…」
イきたいのに。
ぎゅぅと性器の根元を掴んできたその手が意地悪すぎる。
「ふっ、ハッ、おまえが、欲しいのは、誰だ」
「あっ、ひ、ひみやさっ…じん」
だからイかせて。
「ふっ、おまえが、好きなのは」
「じん。じんだけっ」
だから…。
「おまえは…」
「刃の。じんのもの。だから。あなただけだから…っ」
迫りくる絶頂を、せき止められるその苦しみの中から、俺は必死で。
必死で微笑んで、火宮にぎゅぅと抱き着いた、その瞬間。
「ふっ、愛している、翼」
っ!
満足そうな、幸せそうな、そんな柔らかい火宮の笑顔が、目の前いっぱいを満たして…。
「あっ、あぁぁぁぁ、あぁぁぁぁっ!」
パァッと眩んだ目の前に、頭が真っ白になった。
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