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第590話※

「はぁっ、はぁっ、はぁっ…」 ぐっしょりと汗をかき、グッタリと椅子の上で脱力した俺は、息も絶え絶えにぼんやりと火宮を見つめていた。 あれから本気で立て続けに2回、ドライでイかされた身体は、もうクタクタのボロボロで。 一瞬飛んだ意識は、火宮のペチペチと頬を叩く手で無理やり起こされた。 「ククッ、反省したか?」 「した。しました。だからもう…」 ただの事故だろうが何だろうが、火宮を妬かせればロクな目に遭わない。 苦しいほど痛感するその重すぎる愛を支え、俺はコクコクと頷いた。 「外してやろう」 ククッと愉しそうに喉を鳴らした火宮が、カチリとプラグのスイッチを止め、性器を縛めるリングを外してくれる。 途端にブルッと震えた身体が、堰き止められていた白濁をダラダラと吐き出した。 「あぁ、うぅぅ…」 清々とした解放感には程遠い、けれど零れ落ちる白濁は、それまでの過ぎる快感の証で。 「は、あ、ぅ…じんー」 ゾクゾクと背筋を這い上る甘い痺れに、俺はトロンと今にも瞼が落ちてしまいそうな重い目を火宮に向けた。 「こちらも解放してやろう」 ふっ、と薄く目を細めた火宮が、スルスルと、手足の拘束を解いてくれる。 ぐったりと倒れ込む身体をドサリと抱き留められれば、未だワイシャツをしっかりと着込んだ火宮の胸に、裸の肌がごそりと擦れた。 「やっ、や…」 そうだ。俺だけ裸。俺だけ1人で乱れている。 その現実と羞恥を思い出し、俺はカァァッと熱くなる頬をグリグリと火宮の胸に押し付けた。 「ククッ、どうした」 「うぅ、あぁ、やー」 グズグズと、駄々っ子みたいな甘ったれた声になっているのは分かっていた。 だけどこのごわつく布の感触が、嫌で嫌で堪らない。 「脱、で…刃も。じんに触れたい」 ガクガクと震える指先で、もつれるように火宮のシャツのボタンを引っ掻いたら、クックッと笑う、楽しげな火宮の声が聞こえた。 「半分飛んだままか」 可愛いな、と笑う火宮の口づけが、チュッと髪に触れる。 「んあぁっ」 ヤバイ。ただそれだけで異常なほど気持ちがいい。 思わずビクッと震えてしまった身体に、限界のはずの性器がまたもむくりと大きくなるのを感じた。 「ふっ、敏感になっているのか。まだいけそうだな」 「はぅ、あぁ…」 スルリと性器を撫でられて、ビクビクと腰が揺れた。 「ククッ、誘っているのか?」 「んぁ、じん。じんー」 抱いて、とは言葉にできず、ただコクコクと頷きながら、スリスリと身を寄せる。 「ふっ、せっかく押さえたこの部屋だ、次はあちらの台に拘束して、鞭でスパンキングでもしてやろうかと思ったが」 「っ?やだ。いやぁ」 スパ…なんちゃらは分からないけど、鞭という単語を拾い上げた頭が、反射的に拒絶の意を表す。 イヤイヤとむずかるように頭を振れば、クックッと笑う火宮の声が落とされた。 「こんなに可愛い媚びた態度を取られてはな」 「あぁ、じん。じんー」 も、わかんない。だけどただ、もうお仕置きは終わりにして、あなたとナカで繋がりたい。 「ククッ、その顔。翼、来い」 どんな顔なのか自分では分からず。コテンと傾げた頭で、ぼんやりと火宮を見上げたら、ふわりと抱き上げられた身体が、ゆらりと揺れた。 「んあぁ、じん。じん」 ゆらゆらと、心地よい揺れに運ばれていく先は、ヘッド部分の鉄柵状の作りを気にしなければ、普通のベッドの上で。 とすん、と背中に柔らかなスプリングが触れたと思ったら、ガバリと目の前に均整の取れた綺麗な裸体が現れた。 「じんー」 あぁ、嬉しい。 躊躇うことなく、パッパと服を脱ぎ捨てていく火宮に、望みが叶う予感がする。 「ククッ、先の仕置きで十分解れているからな」 このままいくぞ?と囁かれる声に、ゾクゾクと甘い毒が全身に巡らされた。 「んっ、きて。挿れてくださっ…」 痺れるような歓喜に、コクコクと首を上下させれば、ぐいっと持ち上げられた両足の間に、火宮の裸体が滑り込む。 「っあ…」 ぴたりと蕾に触れた凶悪なサイズの火宮自身に、それでも身体は期待と悦びにブルリと震えた。 「力を抜いていろ」 「んっ、は…あぁぁぁっ!」 コクン、と頷く暇もなく、ズンッと腰を進めた火宮に蕾を穿たれた。 ビクンと仰け反る身体から、ガクガクと快感に震える愉悦が溢れる。 「クッ、締まるッ…」 「あっ、あっ、ひみやさっ、じんっ」 ズブズブと、ナカを拓く火宮の性器に、ぞろりと内壁が絡みつくのを自覚した。 「ふっ、はっ、動くぞ」 「んぁっ、あっ、いい、イイっ」 ズチュズチュとナカをハイペースで擦られて、身体は歓喜に跳ねまくる。 「くっ、はっ、食われそうだ」 「あっ、あっ、じん。じんっ、好き。大好き。気持ちい…」 ぎゅぅっと抱き付いた火宮の身体が、しっとりと快楽の汗を滲ませ、ハッ、ハッと上がる息が耳に触れて、あまりの嬉しさにじわりと涙が滲んだ。 「じん。じん、もっとぉ」 「クッ、ハッ、おまえは、な」 「あっ、あっ、そこイイ。そこすき」 「ウッ。煽るな」 馬鹿者、と吐息に混じる掠れた声に、ゾクゾクッと腹の奥が痺れる。 「あぁ、じん、もっと。もっと激しくしていいから。もっとじんで、俺をいっぱいにしてっ…」 ふわふわと、脳内が宙に浮くような感覚になって、もう何を言っているのか何を考えているのか、俺にも俺が分からない。 「クッ、だから、おまえは。そんなに煽るようなことを言って、知らないぞ」 「んぁぁっ!いい、いいです、じんが…じんがしたいことは、ぜんぶすき」 「クッ、もう止まらん。覚悟しろ」 ハァァッ、と激しく熱く、深い吐息が耳に触れたと思ったら、ガシッと両側から掴まれた腰を、思い切り高く持ち上げられた。 「んぁっ?あぁぁぁぁっ!」 ズプンッ、とかヌプンッ、とか、目も眩むような衝撃と共に、奥の奥まで火宮の熱が突き込まれた。 ビクンッと震えた身体が、ガクガクと壊れた人形みたいに痙攣し出す。 「あっ、あっ、じん、じんっ」 火宮を掻き抱く手からはふらりと力が抜け、ズンズンと突き上げられる衝撃に、ただただ全身を揺さぶられた。 「あっ、あっ、あぁぁーっ、くる、きちゃう、イッちゃ…」 「クッ、俺もだ。出す、ぞ。おまえも、イ、け」 ハッ、ハッ、と余裕を失くした火宮の吐息が、泣きたくなるほどに嬉しくて。 ナカを擦り上げる熱が、奥を穿つその硬さが、愛しいと抱き締める腕が、気持ちよくて幸せで。 「あっあっ、あぁぁぁぁぁぁっ!」 「クッ、は、うっく…はぁ」 ビクンと突っ張った身体から、ビュクッと濃い白濁が吹き上がる。 同時にぎゅぅっと搾り上げた内壁に、ビクビクと震える火宮の熱が弾けたのを感じた。 「あっ、あっ、あぁ…」 「くっ、もう、締めるなっ…」 止まらない、と眉を寄せる火宮が、長い絶頂に呻くのが聞こえる。 「ふ、は、あは…」 あぁ、好きだ。やばい、嬉しい。 ぶるりと身体を震わせて、最後の一滴まで絞り出した火宮の顔が、ふわりと綻んでいく様がたまらなく色っぽかった。 「じんー」 ふらりと伸ばした手で火宮の頬に触れ、その唇を視線で強請る。 「ククッ、まったく、おまえは、本当に」 最高だ、と笑う穏やかな口元が優しい弧を描いて、ゆっくりと唇が重なった。 「いっしょう、いっしょに…」 ぽつりと溢した声を最後に、スゥッと意識が混濁していく。 「おやすみ、翼。嬉しい言葉だ。だけど、俺は…」 な、に…? 快楽と疲労に心地よく蕩けた頭は、もう火宮の呟きを理解できない。 「おまえが諦めてくれるたくさんの想いを…もうこれ以上、増やしたくはないんだ…」 ア、キ、の、こと…? 火宮と共に歩むため、俺が諦めていく思いは少なくない。 「それ、でも、俺は…」 あなたを最優先に生きる自分が嫌じゃない。 むしろそれが幸せなんだって、あたなだってわかっているはずなのに。 「愛している。愛している、翼」 ふわりと心地よく、優しい手が髪に触れて。 スゥッと溶けるように、意識はそのまま真っ白い闇に沈んでいった。

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