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第624話※

「ひぅ、あぁ、んっく…」 クチュッ、チュプッ、と音を立てて、火宮の指先が俺の口内をかき混ぜている。 ソファに座った火宮の目の前、床に跪いた俺に、まず「口を開けろ」と命じた火宮に従えば、その空洞に火宮の指が突っ込まれた。 「クッ、特に変な癖はついていないようだな」 ニヤリと口角を上げて薄目で俺を見下ろす火宮が、満足そうに喉を鳴らす。 「ぷはっ…だから、俺はアキさんには何も…」 「ストップ。俺の前で、あいつの名を出すな」 ツゥーッと唾液の糸を引きながら、口から引き出された指が、今度は唇に当てられる。 黙れ、と命じるその仕草に仕方なくぐっと黙った俺に、今度は「後ろを向け」という命令が飛んできた。 「これでいいですか?」 のろのろと身体を半回転させ、火宮に背を向ける。 半ば反抗的に問いかけたら、トンッと背中を押され、バタンと目の前の床に両手をつく羽目になった。 「なっ…?」 まるで火宮に臀部を差し出すような四つん這いの体勢だ。 恥ずかしくて驚いて、思わず上半身を起こそうとした俺の背中が、ぐ、と押さえつけられる。 「動くな、そのままだ」 「火宮さんっ?」 「ククッ、翼、次は後ろの孔だ。自ら尻を割り開き、俺にそこがよく見えるようにしろ」 「っな…」 その命令の意味が頭に入った途端、カァァァァッと顔が熱くなる。 眩暈がするような要求に、俺はふらふらと頭を振った。 「やっ…」 嫌だ、出来ない。 そんな恥ずかしい真似、自分からしろなんて、この人は鬼か。 計らずもうるりと潤んだ瞳を後ろに向けて、許しを乞うように火宮を見上げた俺は…。 「翼?」 拒否するか?と妖しく笑う火宮の視線に気圧されて、ブンブンと反射的に首を振っていた。 左右に。 「じゃぁやれ」と言わんばかりに、俺の背中から火宮が手を離してくれる。 けれどここで逆らって身体を起こすような真似をしたら、それこそ後が恐ろしい。 俺は渋々、本当に嫌々、両手を床から離し、肩で上半身を支え、両手の指をゆっくりと尻の割れ目に掛けた。 「っ…」 くっ、と屈辱に息が詰まる。 潤んだ瞳に溜まった涙は今にも零れ落ちそうなほど限界で。 真っ赤になっているだろう顔は、耳までもがジンジンと熱かった。 「ふっ、はっ…」 無意識に呼吸が荒くなる。 じり、と力を込めた指先が、じわじわと両の尻たぶを割り広げていく。 「っ、んっ、あ…」 ひやり、と、普段ならば決して外気には晒されるはずもない場所に、ふわりと風を感じたらもうたまらなかった。 「うぁぁ、ふぇっ、火宮さん…」 ひぐっ、と情けない嗚咽が漏れた。 だけど、ジッとこんな俺の醜態を見下ろしているらしい火宮から、赦しの声は与えられず。 「っく、ふぇ、ひっく…」 ぽろりと、とうとう伝った涙が床に弾けて、俺はゴリッと額を床に押し付けながら、ぐいっと指先に力を込めた。 「あ、あ、あぁ」 蕾が完全に露出しただろう。心もとない空気を、後孔に感じる。 ジッとそこを眺める火宮の視線までもを感じ、ボロボロと溢れる涙が止まらなかった。 「うぇっ、えっ、ぇっ…」 しゃくりあげるような嗚咽が漏れ、ツンと鼻の奥が痛む。 震える手で必死に蕾を晒したままでいたら、不意に火宮の気配が揺れた。 「入り口は、腫れているようなこともなければ、傷ついているようにも見えないが」 「あ、たり前、ですっ…」 だって何もされてない。 本当に明貴は、俺に不埒な真似も危害を加えるようなこともなかったんだ。 ふるふると首を振った俺の尻に、ふと火宮の手が伸びてきたのが分かった。 「ひぁっ?」 「ククッ、色気のない声を上げるな」 ガキ、と笑う火宮が、ツプッと後孔に何かを差し込んできた。 「ひゃっ、だって、えっ?やっ、な、なにっ?」 その「何か」から、つぷーっとナカに冷たい物体が流れ込んでくる。 「火宮さんっ?」 半ばパニックになりながら、思わず双丘から手を離してしまったら、パンッと尻たぶをぶたれてしまった。 「ひぃぁっ!」 「ちゃんと開いていろ」 「あっ、だって、やっ、やっ、冷たっ…」 「ククッ、落ち着け、ただの潤滑ゼリーだ」 「はっ、あぅっ…」 ジュルジュルとナカに注ぎ込まれていくソレに、ビクビクと身体を震わせながら、俺は火宮の言葉を必死で拾い上げた。 「潤滑、ぜり…」 「あぁ」 聞けばなるほど。チューブタイプのそれの口を蕾に突き立てられ、火宮がぐしゃりとチューブを潰したのだろう。 異物が逆流するかと思えるような勢いで、ナカに入って来るそれは、仕置きという名目上だからこそか。 「ひぃん…」 当然、不快でしかないその感覚を受け止めながら、俺はハラハラと泣きつつ、この地獄のような行為が早く終わることを祈っていた。

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