625 / 719

第625話※

「っく…ひぁ」 つぷん、と潤滑ゼリーとやらのチューブが抜かれ、反射的な喘ぎ声を漏らしてしまったところで、ヌルリと火宮の指先が蕾に触れてきた。 ゾワゾワと這い上がるその感覚と、ナカに注ぎ込まれたものを漏らすまいと反射的に力の入る身体が、キュッと蕾を締めてしまう。 尻たぶを割り開いた手はそのままに、俺はヒクつく蕾を火宮の眼下に晒していた。 「ククッ、健気な窄まりをアピールしてみせて」 ニヤリ、と楽しげに、その表情が歪んだのだろうことが、見えなくても分かる火宮の声だった。 「ここを連にも見せたのか?」 ん?と、トントンと蕾をノックするように指先で叩かれて、俺はたまらずガクガクと腰を震わせた。 「っ、してなっ…してませんっ」 もう、だから、不必要な嫉妬はやめて欲しい。 けれど、それを口実に俺を責める気満々なのだろう火宮の行動を、止める術が思いつかない。 「うっ、はっ…」 「ククッ、仮にも、好意を抱いた相手を、数日間もホテル内に閉じ込め、誰の邪魔も入らない状況で、2人きりだ」 「っ…」 「その状態で、手を出さないとは考えられないのだが?」 どうなんだ?と責め立てる火宮の指が、戯れのようにツプ、と後孔にわずかに潜り込んだ。 「ひ!あっ…ンッ」 「クッ、そのいやらしい声を、連にも聞かせたのか?」 「っーー!して、ないっ…」 ブンブンと、大きく首を左右に振った俺に、火宮のなんとも楽しげな笑い声が落ちてきた。 「ククッ、そうか。ではナカを確かめてみようか」 ニヤリ、と、絶対その悪い顔で笑っているだろう。 背後の気配が、愉悦に揺れる。 「っ、や…ッ」 「ふっ、たっぷり注いだから、漏れてきたな」 「やっ、やっ、あぁ、あーっ」 なにこれ。 ジュプッと蕾に突き立てられた火宮の指に、震える間もあればこそ。 すぐに2本目が追加された後孔を、ピースするように広げられて。 「あっ、あっ、やだ。やだっ…」 こんなのまるで排泄だ。 とろり、とろりと粘度の高い液体が、蕾の縁から滴り落ちる感覚がたまらない。 「いや。いやだっ、火宮さんっ、やめっ、許しっ…」 「ククッ、収縮も申し分ないようだが…こちらはどうだ?」 「ひっ、あぁぁっ!」 タラタラと流れ出るゼリーの感覚にパニックになっていたら、突然ズプリと後孔が火宮の指で穿たれた。 ビクンッと仰け反り、尻たぶに掛けていた手が離れる。 「ククッ、傷はない。感度も変わらず。前立腺も…イタズラされてはいないようだな?」 「あっ、あっ、でっ、る…」 グチュグチュと、ナカを好き勝手に調べられ、グリグリといいところを押されたからたまらなかった。 ガチガチに勃ち上がった性器から、タラタラと先走りが溢れ出す。 ポタポタと、膝をついた間の床を汚すそれを見ながら、俺はビクビクと身体を引き攣らせた。 「ほら、イけ」 ナカのいいところを押され、ついでと言わんばかりに竿を掴まれぎゅっぎゅと扱かれる。 突然の強烈な刺激に、俺はあまりにあっけなく白濁を飛び散らせた。 パタタッと顔の付近までその濁った液体が飛んでくる。 「うっ、はっ…」 「クッ、随分と濃い。この数日間、性的なことは何もなかったと信じていいようだ」 「っ、あんっ、だ、からっ、そう言って…っ」 明貴に触れられるようなことも、ましてや自分ですることもなかった。 ドロッと床を汚した液体を見て、火宮が満足そうに喉を鳴らしたのがなんかムカついた。 「ククッ、確認が済んだところで、本格的な仕置きといくか」 「ふぇっ…」 「真鍋の身を護るため、連に媚びた。そして翼、結果的におまえは無事、無傷で俺の元へ帰ってこれたが…」 「っ…」 「相手はあの、中国黒幇最大組織の首領だった。何かを1つ間違えば、何かが1歩違ったら、お前は今頃…」 ぬるりと抜かれた火宮の指が、抜かれる一瞬、ふるりと震えたことに俺は気がついた。 「っ、それは…」 「自分がどれだけ危険な賭けに出たのか、分かっているな?」 「っ、はい。ごめん、なさい…」 「それから、拳銃」 ぐい、と四つん這いから引き起こされ、ぐるんと身体を返される。 ジッと正面から俺を見据えてくる火宮の目が、この上ないほど真剣に怒っていた。 「あんなものの扱い方を覚えさせられて」 「っ、ごめんなさい」 「おまえに、絶対触れさせたくない、絶対に越えさせたくない、一線だったのに」 「ごめ、なさ…」 「はぁっ。生半可では許さないぞ」 「はい」 しゅん、と俯く顔を、「まだだ」と無理やり引き上げられた。 「火宮さ…」 「しかもあのとき、おまえは…」 「くっ」と言葉を詰まらせた火宮の目が映している光景がどの場面なのか、俺は嫌というほど分かっていた。 「っ、あ…」 「あのときおまえは…っ」 「あ、あぁ、あぁぁ、ごめん、なさい…」 ひくんっと震える喉が、震えた謝罪を紡ぎ出す。 けれどこんな言葉の1つで、あのときのあの罪を償えるなどとはもちろん思っていなかった。 「俺の目の前でっ…」 「ごめんなさいっ」 「ふっ、泣いても喚いてもどれだけ謝っても…思い知るまで許さない」 「っ、は、い」 「おまえが自分に突き付けたあの銃口は、俺のここにも、向かっていた」 トンッ、とその胸を指で弾く火宮に、俺はその言葉の意味を理解した。 「俺の想いを、思い知れ」 クッ、と笑った火宮の艶やかな顔が、ゆっくり目の前に近づいた。

ともだちにシェアしよう!