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第626話※

チュッ、チュルッと唇が吸い上げられ、舌を絡めとられる。 馴染んだ感触の馴染んだキスに、とろんと落ちていく瞼はもう止めようがなかった。 うっとりと、口内を蹂躙する舌に全てを明け渡し、散々教え込まれた通りに舌を絡ませ返す。 心地の良い情熱的なキスに夢中になっていた俺は、不意に火宮の指先が首に掛かり、カシャンとそこに何かを嵌めていったのを感じた。 「んぁ、えっ?冷た…」 ぐるりと首に巻かれた『何か』は、ぴったりと肌に吸い付くような冷やりとした革のバンドのようで。 「え?えっ?」 シャラリと鳴る金属音に、パッと首元を見下ろしたら、ちょうどその中央辺りから2本の鎖と、リストバンドのような革製のバンドが2つ、垂れ下がっていた。 「これ…」 チョーカーやネックレスの類ではないことは、その形状を見れば明らかだった。 恐る恐る持ち上げた手を、そっと首に回されたバンドに沿わせれば、なるほどこれは、多分首輪と呼ばれるもので間違いないだろう。 そしてこの中央から垂れ下がった2本の鎖の先のバンドは…。 「悪さをした手は、こうしてくれよう」 ニヤリ、と妖しく笑った火宮の目がキラリと光って、素早く両手が捕らえられたかと思ったら、それぞれ手首に2本のバンドが嵌められてしまった。 「えっ、やっ、これって…」 「ククッ、銃など覚えたいけない手だ。自らにその銃口を突き付ける悪い手だ。使えなくなった方がいいだろう?」 チャラチャラと、振っても引っ張っても外れそうにないそれは、両手の自由を奪い取る枷で。 しかも首輪と繋がっているせいで、その稼働範囲が恐ろしく狭い。 首元から伸びている鎖は30センチもなくて、頭を起こした状態で、胸の辺りにぶら下がっているといったところだ。 「そんな…」 これで俺の抵抗力は、ますます削られた。 チャラチャラと手枷を引っ張っては、それにつられてグイと首が引っ張られて慌てる俺を、火宮が可笑しそうに見下ろしている。 「ククッ、安心しろ。おまえの使えない手の代わりに、俺の手がなにもかもをしてやるからな」 「っ…」 「さて、まずはベッドに移動しよう」 ククッと楽しげに喉を鳴らした火宮に、ひょいと両脇を抱え上げられ、俺の身体はベッドの方へと運ばれていった。 「っあ…」 ぽすん、と背中から優しくベッドに下ろされ、柔らかいスプリングに身体が沈む。 グイと両足を割り広げながら、身体を割り込ませてきた火宮に、ニヤリと妖しく見下ろされた。 「っ…ん、ふ」 「ククッ、緩く勃ち上がっているぞ?さっきのキスだけで感じたか?」 「あっ、あっ、やっ…」 グリッと膝で性器を押され、ビクンッと身体が跳ねた。 「ククッ、イきたくなれば、構わずイッていいからな?」 「え…?」 「24時間、好きなだけイかせてやる」 ニヤリ、と意地悪く頬を持ち上げる火宮に、ゾクッと鳥肌が立ったのは、その目に宿る欲情を見つけたからか。 それとも、その言葉の恐ろしさに思い至ったからなのか。 「イキたいときに自由にイけるんだ。嬉しいだろう?」 「っ…」 ククッと喉を鳴らした火宮が、サイドテーブルの上に置かれていた箱に手を伸ばす。 果たして好きにイけるということの方が幸なのか。我慢させられる方がマシなのか。 その答えはこれから、俺は身をもって教えられることとなる。 「ククッ、今日は1つ、新たな扉を開いてやろう」 ニヤリ、と唇の端を吊り上げた火宮が、箱から太めのバイブを取り出した。 チロリと赤い舌を覗かせ、そのバイブを舐め上げる。 仕置きと名をつけたときの火宮が、俺に楽やマシな選択肢を与えてくれるわけがないことを、俺はこれまでの経験から、十分に知っていた。 ゆっくりと、そのバイブの先端が、股の間に消えていくのを、俺はゾクゾクと身を震わせながら、ジッと見下ろしていた。

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