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第649話※
「ひっ、あっ、あぁっ、あっそこ、駄目っ…だめですっ…」
ビクリと身を竦ませて、ガクガクと震える足で畳を蹴り上げる俺は、漏れる悲鳴を必死で噛み殺した。
「ククッ、どこが駄目だって?イイの間違いだろう?」
ニヤリと笑う意地悪な火宮の目が、スゥッと細められて俺を見下ろしている。
「あっ、やんっ!…イイからっ、イイから駄目なんですっ…」
ふぇぇ、と漏れる泣き言は、火宮を愉しませるためだけに終わっているようだった。
「ふっ、あっ!だから、ソコッ…」
グリッとナカのいいトコロ…前立腺だと教え込まれたところを指先で押され、俺はたまらずビクリと仰け反った。
身に纏う衣服はすでになく、裸に剥かれた身体を、火宮が本家で仕事をするときの休憩室…自由に使える部屋として割り当てられているのだそうな和室の室内に転がされて、責め立てられているところだった。
「あぁぁっ!」
ひくんっと晒した喉から、甲高い悲鳴がこぼれてしまう。
「ククッ、俺は別に構わないが、ここは本家、しかも防音などそこまで望めない、畳敷き襖張りの一室だぞ」
「っ…」
「うっかり廊下を通った本家の人間に、聞こえてしまわないとも限らない」
そうなったら恥ずかしいな?と笑う火宮に、俺は涙の膜が張った潤んだ瞳をジトリと向けた。
「クックックッ、その、泣きそうなくせに強気に睨んでくる目」
「っ…」
「おまえは、まったく」
だから飽きない、と喉を鳴らす火宮の意地悪な指先が、またも容赦なくグリグリと前立腺を抉った。
「ひっや…あぁぁ、んぐ」
バタバタと暴れた手足が、不意に柔らかな何かに触れた。
それが何かを確かめる間もなく、俺はこれだと急いでそれを抱え込む。
ぎゅぅ、と顔に押し当てて、悲鳴を殺したその柔らかなものが座布団であると、パタパタと飛ばしてしまった白濁が落ち着いたところで気が付いた。
「クッ、もうイッたのか」
早いな、と笑う火宮の指が、俺の腹に飛び散ったのだろう白濁を掬っていく。
「ふっ、これは仕置きなのだから、我慢させてやろうかと思ったが…」
「っ…」
「今日はイき地獄の方がよさそうだな」
ニヤリ、と妖しく笑う火宮の顔が、座布団で塞がれて見えない視界の向こうに見える気がした。
「仕置きって…」
ビクビクと、座布団を下ろしながら、チラリと火宮を窺えば、やっぱりニヤリと愉しげに笑み崩れた顔がそこにあった。
「ふん、この俺を差し置いて、オヤジに頼ったりするからだ」
「それはっ…」
「しかも俺の目の前で、オヤジに縋るなど、見せつけてくれたしな」
「あれはっ…」
「ククッ、おまえはもう少し、俺のパートナーとして、俺の隣に立っているということに、自信を持った方がいい」
これだけ愛されて、これだけ強かに振る舞えて、どうして分からないんだ、と苦笑半分、慈しみ半分で火宮が笑う。
「おまえは本当に、俺が魅入られるくらい強くしなやかで、俺でもドキリとするくらい、賢く大人びて」
「ひ、みや、さん…?」
「甘えを自分に許さずに、強く、強くその両足で地面を踏みしめて立っているおまえのどこに、情けない要素があるんだか…」
怖いほどに男前じゃないか、と笑う火宮に、俺の手からストンと力が抜けた。
「クックック、おまえは本当にな。次から次へと忙しい」
「火宮さん?」
「そんなおまえが、たまらなく愛おしいよ、まったくな」
「っ…」
どうにもならない、と笑う火宮が、するりと俺の太腿を撫で上げる。
「今日も存分に教え込んでやるか」
「えっ、えっ」
「まぁ、半分は仕置きだけれどな」
オヤジの件でのな、と嘯く火宮の意地悪なその手が、きゅっと俺の中心を掴み上げた。
「イきたいだけ、イきまくれ。乱れて悶えて、醜態を晒してみせろ」
ククッと喉を鳴らす火宮の目が、ギラリとサディスティックな光に揺れた。
こんな本家の只中で。火宮にとっては実家とも呼べそうなこんな場所で。
俺は一体、何をどうされてしまうのか。
仕切りも壁も決して厚いとは言えない、音なんて駄々洩れだろうこの部屋で。
本家の理事が、その情人をアレだなんて…。
「っ…」
「ククッ、いつもと違う和室で、このシチュエーション。さすがのおまえも興奮するか?」
「ひぁっ…」
むくりと勃ち上がった性器を撫でられ、口からは思わず悲鳴が漏れる。
「仕置きだからな。楽もマシも、そんな程度で済ませるつもりはないからな」
「あっ、あぁぁっ!」
ぎゅっぎゅと扱かれた中心が、すっかり固く育て上げられたときにはもう、パクリとその意地悪なことばかりを言う口の中に銜えこまれていて。
「あぁもう1つ、言い忘れていたが」
「あっ、あっ、なっ、に…?」
「この部屋に鍵は掛からない」
ニヤリ、と告げられた火宮の言葉は、俺に絶望をもたらすには十分なもので。
「ひぃぁっ…あぁぁ、っ、ん、んんっ、ぐ…」
「こら、噛むな」
傷になる、と、唇を強く引き結んだ俺を咎めて、火宮がずっぷりと指を3本、俺のナカに埋めてくる。
「あぁっ!」
じゃぁやめて!と訴える視線は、ニヤリと意地悪な笑みに返り討ちにされて。
ならばと引き寄せた座布団は、ぐいと奪われポイッと遠くに投げ捨てられてしまった。
「なっ、ちょっとっ!」
これじゃぁ悲鳴が殺せない。
駄々洩れの喘ぎを誰に聞き咎められるか分からない状況なのに。
ぶわっと浮かんだ涙で滲んだ視界の先に、火宮の愉悦に崩れたサディスティックな笑顔が見えた。
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