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第703話※

クチュッ、クチュッと先走りの濡れた音が、いやらしくリビングに響いた。 「っ、は、ぁっ…」 ギシリ、とソファに腰掛けさせられた身体がソファの背もたれを鳴らし、M字の形に開かされた足の指先が、きゅぅ、と丸まった。 「い、やだ…んぁっ、見な…で」 あぁ、恥ずかしい。恥ずかしい。 だけど、自身を弄る手は何故か止まらなくて。 ぎゅぅと固く瞑った目の向こうでは、ジッとソコを見つめてくる火宮の視線を痛いほどに感じた。 「ハァ…ッ、う、んンッ…」 恥ずかしいのに、それは背徳的な興奮に変わって、フーフーと鼻息が荒くなる。 クチュクチュとソコを弄る手はますます大胆さを増し、溢れ出す先走りは止まらなかった。 「ククッ、どMめが」 いい加減に認めたらどうだ、と揶揄う火宮の声が聞こえる。 「っ、や、ぁ…違う、ちがう、俺は」 ふるふると左右に力なく振る首は、どこまでの説得力があるだろうか。 「は、ぁんっ…」 ぐりっと自分で自分のイイところを、手が勝手に擦り上げる。先っぽのところとか、裏筋の弱い部分。グチュグチュと聞こえる水音が、あまりに居た堪れなかった。 「あっ、やだ、やだ」 「ククッ、イきそうか?イくまで続けさせるからな」 そぉっと薄く目を開けて見れば、ニヤリ、と意地悪な笑みを浮かべた火宮が、心底愉しそうに俺の痴態を眺めている。 「っあ…あぁんっ」 そこに宿る欲情の色に、ズクンと腰が重くなった。 「ふっ、あっ、ンッ…」 「ククッ、蕾の方まで汁を垂らして」 「やぁっ、言わな、で…」 「可愛いペニスが、出したいと震えているぞ」 やだ。やだ! 視線で、言葉で、空気で煽られて、ビクビクと腰が勝手に震え出す。 「ククッ、おまえは先端のところが好きだろう?」 「あっ、はっ、ん、そこ…っ、そこ」 「裏筋を、付け根から先端に向かってゆっくり撫でて、そのまま先っぽを握り締める」 「うぁっ、あんっ…」 火宮の言葉に操られるかのように、俺の手が勝手に性器を擦り上げる。 火宮の言葉で言われた通りに、ゆっくり裏から先っぽへ。 「ククッ、パンパンに腫れ上がって、出したいな?」 「あっ、出したい。イきたい」 「出せばいい。イけ」 そうすれば終わる。 頭でも身体でも分かっている。 分かっているのに、なんで…? 「あっ、あっ、イけないっ、出せないぃっ」 なんで? 縛められているわけでもないのに。 射精の欲求は最高潮に高まっているというのに。 足りない。 決定的な何かが足りないんだ。 「あっ、あっ、イ、きたっ、い」 欲望の熱はぐるぐると渦巻いて、中心に向かって集まり切っている。 なのにイけない。イくことができない。 「ククッ、後ろが、ヒクヒクと物欲しそうに震えているな」 「っあ?」 「なるほど、おまえはそちらがないと、出せない身体になったのか?」 「あ、や、そんな…」 確かにお腹の奥が、もっと奥が、何か欲しいって疼いているけど。 「ふっ、最高だ。翼、空いた片手を後ろに伸ばせ」 「あっ、や。やだ…」 イヤイヤと、左右に首を振りながも、欲しくてたまらないそこに手は伸びる。 「蕾の入り口をぐるりと撫でて」 「ふぁっ…」 「少しだけ軽く、指先を潜らせてみろ」 あぁ、いやだ。 そこは入り口じゃなくて、出口でしょう? 理性がどこかでぎゃぁぎゃぁ喚き、けれど欲情に溶けた脳みそは、火宮の言葉を従順に身体へ伝達する。 「んっ、あっ!あぁっ…」 つぷり、と触れた指先が、グニュッと柔らかな襞の間に沈んでいき、きゅぅと締め付けられる感触に、先走りの雫がダラダラと量を増した。 「ククッ、好都合だ。それを塗り込めて、もう少し奥まで指を入れてやれ」 「ふぁっ、あっ、あっ、気持ち…。きもちいい」 あぁ俺は一体何を口走っているんだろう? 全裸で明るいリビングのソファーの上。ぴしりと服を着込んだ火宮の前で、両足をおっ広げて、自ら性器を擦り上げ。 「あっ、あっ、イく…イきそ…っ」 グチュグチュ、いやらしい音を響かせて、前だけでは飽き足りず、お尻に自分の指なんか突っ込んで。 「はぁぅっ、あっ、あっ、イ、くぅっ…」 ずるっと滑り落ちた背中がソファーに擦れた。 その刺激すらもがゾクゾクとした快感に変わり。 腰を、お尻を、性器を火宮の方に突き出し見せつけるような姿勢になってしまいながら、目の前に訪れる絶頂に目が眩んだ。 「出るッ…火宮さ…じんっ」 ニヤリ、とした火宮の顔が、視界の片隅に見えた気がして…。 そのときにはもう、ビュビュッ、と派手に白濁を飛ばしていた。 「うぁっ、はっ、はっ…」 ドロリとした濃い目の白濁が手のひらを伝う。 全てを絞り出すように勝手に動いた手の中に、飛ばしきれなかった白濁がダラリと溢れた。 「ふぁっ、あっ、あっ…」 イってしまった。火宮の目の前で、自慰をして、1人で。 途端に理性が舞い戻り、カァァッと頬が熱くなる。 「ククッ、よく出来たな。なるほど、濃いな」 「っ…」 いつの間にか真ん前まで来ていた火宮が、俺の汚した手を取って、それをベロリと舐め上げた。 「っは?ちょっ、何して…」 バカなの?! びっくり慌てて身体を起こしたら、お尻に入れていた指がズルリと抜けて、「ひぁんっ」なんて変な声が漏れた。 「ククッ、連とは本当に何もなかったと、信じてやるか」 「っーー!」 あぁそうだった。なんでこんなに恥ずかしいことをしていたかっていうと、そもそも身の潔白の証明のためだった。 すっかり蕩けた頭が、すっかり忘れていたことを思い出して、俺はようやくその件は終わりにしてもらえそうな予感に、ほぅと息を吐いた。 「こ、れで、満足、ですか…?」 「あぁ。不貞疑惑はな」 ククッと喉を鳴らす火宮だけど、どうせそもそも俺を苛めたいだけで、不貞行為なんて初めから疑ってなんかいなかったくせに。 「んっ、あっ、じゃぁ…」 「ククッ、後は、行方不明になって、散々心配をさせた挙句、連と楽しく温泉旅行に興じていた仕置きだな」 「っ、う…」 あぁやっぱりそれがメインだよな。 「2泊3日」 「はい…」 「おまえがこの家を勝手に空けて、俺ではない誰かと楽しく過ごしていた期間だ」 「はい……」 あぁどんな目に遭うんだろう。 「クッ、その、同じ期間だけ、おまえをここに監禁する」 「えっ?」 「手を洗って、それを綺麗にしたら、始めるぞ」 ジャラッとどこからともなく火宮が取り出したのは、長い鎖がついた足枷らしきものと、首輪で。 「っ…」 「言いつけを破って、勝手に中から鍵を開け、フラフラ別の男について行くような悪いやつは、監禁してたっぷりとお仕置きだ」 「っーー!」 あぁ、ニヤリとした、その最高に愉しげでサディスティックなその美貌。 オワッタな…。 ヒクッと引き攣る俺の顔は、これからされるお仕置きに、史上最悪の目を予感して、完全に怯み切っていた。

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