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第706話※

ピピピッ、ピピピッ、とタイマーのアラームが鳴り響いた瞬間、俺はがばっと火宮を振り仰いだ。 「っ…」 もったぁ…。 どうにか堪え切った3分間。さぁ外せ、いざ外せ、と足に掛けられた枷を揺らす。 ジャラジャラと耳障りに音を立てる鎖に苦笑して、火宮がゆっくりと枷の側にしゃがみ込んだ。 「早く、早く」 もう1分1秒の猶予もない。 「ククッ、随分と我慢強かったな」 軟禁中は、我慢出来ずに連と飛び出してしまったのに、と火宮が嫌味ったらしく笑う。 「っ…」 意地悪!と叫びたいけれど、そんなことをしたら決壊する。確実に膀胱が弾けて大変なことになる。 俺は、我慢のし過ぎで痛いとすら思うお腹を抱え、足枷がカシャンと外れた瞬間足で床を蹴って、トイレのドアに飛びついた。 「クックックッ」 後ろで火宮の愉しげな笑い声が聞こえたけれど、もう構う余裕もない。どうやらトイレについてくるようなことはないらしいことにホッとして、俺は便座に跨った。 「はぁっ…」 あぁ、気持ちよすぎて死ねるかもしれない。 それほどの、目の眩むような解放感。 じんわりと全身から力が抜けていき、だらりと両腕が弛緩する。前を出し切ってホッとしたところで、後ろから粘度の高い液体が溢れた。 「あっ、やだっ…」 とろり、と伝い落ちるローションの感触が嫌で、俺は反射的に後孔に力を入れていた。 途端にきゅぅんと切なく疼いたナカは気のせいだ。 「っ…」 どうしよう…。 これって洗い流していいものか。 そろりとウォシュレットのボタンに伸びた手は、火宮からの何の言い付けもなかったことに戸惑い、止まってしまった。 「うぅ…」 出すな、とは命じられていないけれど、出していいとも許可を得てない。 勝手に出そうものなら、どんな難癖をつけられて、仕置のネタを与えてしまうかもしれない。 「っ、う〜」 だからといってせっかくトイレに来たのに出さずに帰ったら、俺がこのナカに注ぎ込まれたものを気に入ったみたいで、それも嫌だ。 「どうしたらいいんだ…」 ぐるぐると悩みながら、とりあえず後ろに力だけは込めて、零さないように座り込んでいたら、不意にコンコンというノックの音が割り響いた。 「っ?!」 「翼?大丈夫か?」 「えっ?あの…」 「何かトラブルでも?開けるぞ?」 うわぁ、やばい、やばい。 あまりにトイレが長いことに、火宮が不審がってしまったらしい。 ガチャリと下がっていくドアノブに、俺は慌てて叫び声を上げる。 「っ、大丈夫ですっ!我慢し過ぎたから、ちょっと長かっただけで!」 って、何言ってんだ、俺。 誰も俺の排尿事情など聞いてない!とセルフツッコミを入れながら、俺はうっかり鍵を掛け忘れていたトイレのドアに、冷や汗ダラダラで駆け寄った。 「うっ…」 だけど、その咄嗟の動きが不味かった。 思わず緩んだ後孔から、たらりとローションがひと筋、太腿を伝う。 「あっ、いやっ…」 その感触がいやらしくて恥ずかしくて、俺はそのままトイレの床にしゃがみ込んだ。 「翼?」 あぁぁぁ。ガチャリ、と開けられてしまったドアの向こうから、俺を見下ろす火宮の姿が現れる。 「ククッ、おまえ、何して…」 「っーー!」 後ろに手を回して、お尻の穴を押さえて蹲る俺を見て、火宮の目が妖しく眇められた。 「ふっ、なるほどな」 ニヤリ、と笑った火宮の目が、サディスティックに揺れている。 「出すな、とは言っていないが、出していいとも言われていないから、そういうことになっているわけだ」 健気なことだな、と笑う火宮に、俺は何だか悔しくて唇を噛み締めた。 「っ、火宮さんがっ…」 「あぁ、俺がおまえの全霊を支配しているな」 心地いい、と口元を歪める火宮が、とても嬉しそうだ。 「っ…分かって、いるなら、命令を…」 「あぁ」 「命令を、して下さい」 そうして俺を、あなたの色で滅茶苦茶にして。 だって俺はあなた色に、染め上げ直す調教中なんでしょう? 連に引かれた心の分だけ、火宮の元に惹き直す。 「ククッ、いい覚悟だ」 「っ…」 「おまえのその男前なところが、とても気に入っている」 「男前って…」 全裸でトイレでお尻を押さえて、どう見たって情け無い姿な気がしますけどね! 火宮がとても楽しそうで、満足げに笑っているからまぁいいか。 そんな風に思ってしまう俺は、やっぱりすっかり火宮色なんだろうけど、これ以上って、俺は一体どうなっちゃうんだろう。 それでも火宮からは愛が滲んでいるのが、間違いなく分かるから。 「火宮さん?…刃」 「ククッ、ナカのそれはそのままで、ダイニングまで歩いて来い」 漏らしたら鞭だぞ、と艶やかに笑う火宮に、俺はこくりと頷いて、後孔にキュッと力を込める。 あぁ、意地悪で俺様な火宮の声に、身体が自然と従っていく。 俺もいよいよどMだな…。 ぽつり、とどこかの壁が崩れ落ちていく予感に、ぞくりと身を震わせながら、俺はそろそろと床から立ち上がり、歩き始めた。

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