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第707話※
「っ…」
よろよろと、火宮に続いてどうにかやって来たダイニングでは、テーブルの上に何故か食事が用意されていた。
「え…?」
まさか火宮が?…な訳があるわけなくて。
どう見ても手が込んでいそうなビーフシチューに、ピザみたいなパイみたいなあれは…。
「キッシュだ」
「え、あぁ、キッシュ…」
って!
「ククッ、サラダにデザート、と」
うん。まるでレストランのテーブル上が、そのまま運ばれてきたみたいなこれは、どう考えても火宮が作ったわけがない。
となると、浜……。
「デリだ」
「デリバリー…」
はぁ。なるほど。
って思考を読まないでもらいたい。
「それにしても…」
これが。
なんていうか、俺が知っているデリバリーとは、大分違う気がするんだけど。シェフこそいないけど、パーティーでもないけれど、ケータリングって言った方がしっくりくるんじゃないだろうか、この食卓は。
「ちなみに設置は真鍋がして行った」
「いつの間に…」
確かにさっき、トイレに入る前にはなかったはずだ。
「ククッ、おまえ、何だかんだで、今日は昼抜きだろう?」
「え?あ…」
言われてみれば、朝はアキと旅館で食べて来たけれど、こっちに帰って来てからは、事務所で叱られ、そのまま連れ帰られで、昼食どころではなかった。
「夕食には多少早いが、構わないだろう?食事にするぞ」
ニヤリ、とは笑っている火宮を、俺は思わず不気味なものを見るような目で見てしまった。
「なんだ」
「いえ…」
ふるりと首を振りながらも、火宮の言葉を額面通りに受け取るには、俺は火宮の性格を嫌というほどよく知っていて。
だけど、小休止なのかな。
火宮も一応は食事休憩くらい入れてくれるつもりでいる?
チラリと火宮を窺って、目の前に整えられた豪華な食卓を見比べて、俺は火宮の発言を素直に受け取ってみることに決めた。
のに。
「っーー!」
やっぱりこのどSを信じるものじゃなかった。
今がお仕置き中だってことを忘れちゃいけなかった。
「ククッ、どうした?席につけ」
ニヤリ、と意地悪な笑みを浮かべた火宮が、憎らしくて憎らしくてたまらなかった。
「っ、意地悪火宮ッ」
「ほぉ?そんな暴言を吐いていいのか?」
無理矢理座らせるぞ、と脅しをかけてくる火宮に、ギク、と身体が強張った。
「っ、でも…」
俺の発言は事実だし。
火宮を信じてただの食事をとってやろうと思って引いた椅子に、まさかこんなものがセットされているなんて……意地悪以外の何物でもないじゃないか。
「ん?」
スゥッと薄く目を細める火宮の顔は、俺がごちゃごちゃと考え、振り回されていることが愉しくて仕方がないみたいな表情をしていた。
「っ…」
こンのどS!という発言は、すんでのところで飲み込んだ。
代わりにギリッと睨みつけた目は、ニヤリニヤリとした火宮の愉しげな顔に呆気なく跳ね返されて。
「ククッ、なんのために尻にローションを仕込んだと思っている」
「それは、だって…」
お腹を圧迫して、膀胱を刺激して漏らさせるためだったんじゃ…。
「ふっ、潤滑剤の用途など、1つだろう?」
摩擦を減らすこと。
滑らかに潤すこと……つまりは、後ろを解して、これを入れろ、と。
「自分で解して、『きちんと』そこに座れ」
「っ…」
そこ、というのは、俺が食事のときに着く俺の席で。きちんと、と強調されて言われたそれは、つまりこの座面に天を向いてにょんと突き出るようにくっ付けられている、ディルドの上に乗って座れ、ということか。
「本当、意地悪っ…」
悪趣味。どS。
いくらお仕置きだったって、これが恋人にする仕打ちだろうか。
「クッ、俺色に、染め上げ直していいんだろう?」
「っ…」
そうはいいましたけどね!
「俺色に、戻すための躾だ」
「っーー」
そう言われてしまっては、その果てのない強い独占欲と、愛情ゆえの強い支配に、俺はどうしたって絆されてしまう。
「っ、あなたの、命令だから」
他の誰かが言ったとしても、俺は絶対に従わない。
「あなたの前で、だけだから」
他の誰かの前なら俺は、決してこんな姿を晒しはしないんだから。
「っ、あ、んっ…」
そろりと伸ばした手は、素直に後ろに回り、クチュリと後孔に潜り込む。
「ふぁっ、あっ…」
あぁ気持ちが悪い。
自分の指に絡みついてくるナカも、自分のナカを蠢く自分の指も。
「んンッ、や、ぁっ…」
生理的な涙がジワリと滲み、口からは無意味な拒絶の言葉がポロポロと零れた。
「あっ、ふンッ…」
とろり、と指を伝って後ろから溢れ出すローションがどうにもいやらしい。
グチュグチュと、音を立てているのか自分の後ろに突っ込まれた指だとか後孔だとかは思いたくもない。
「んっ、あんっ…」
それをまた、ジーッと火宮に見られているかと思うと、もう堪らなかった。
「ククッ、さすがに勃たないか」
羞恥も嫌いではなかったはずだが?と笑う火宮が憎らしい。
「こんなことさせられて、見られて、感じるわけないですよねっ?」
ちょっとはMかも、と思わなくはないけど、やっぱり俺はMじゃない。
いつもの否定の言葉を身体に肯定されて、少しだけホッとする。
「ククッ、ならば仕置きになっているようでなにより」
「っーー!」
そうでしたねっ!
これはお仕置きで、俺が嫌がらなきゃ意味がないですよね!
感じてしまったら感じてしまったで、心と身体のギャップに苦しむけれど、この行為はこの行為で辛いだけだ。
「ククッ、ほら、そろそろいいんじゃないか?」
「んぁんっ、ちょっ…」
いつの間に後ろに回り込んで来たのか。
ムギュッ、と尻たぶを掴まれて、両側に割り開かれるように引っ張られたから堪らない。
「ほぉ?これはこれは、ソソルな」
「あっ、やっ、バカ…」
ぬろろろーっと俺のナカにある指を手を掴まれて引き抜かれ。
「っあんっ!」
ずぷっ、と今度は無理矢理押し込まれて、ビクンッと身体が跳ねた。
「ククッ、自分の指の味はどうだ」
「あっ、嫌に、決まってます…っ。気持ち悪い」
「そうか?だがここは、パクパクと美味そうに咥えているぞ?」
「あっ、言う、なぁっ…」
ぬるり、と滑るローションに、難なく自分の指を咥え込んでしまっている蕾は自覚している。
「このまま、ピースをするように指を広げてみろ」
「う、ぁっ、あんっ…」
2本目を突き立てるように促され、ずるりとそれが入り込んだところで命じられた。
「んっ…ぁっ」
怖い、怖い、怖い。
だけど思ったより伸びる。広がる。
それがまた怖い。
「クッ、いいだろう。もう座れそうだぞ?」
優秀な穴だ、と褒められても、そんなの少しも嬉しくない。
「っあんっ!」
ちゅぷんっ、といきなりナカから指を抜かれて、思わずゾクゾクッと湧き上がったイケナイ感覚は、無視をした。
「ふ、っぅ、あっ…」
火宮の手から解放され、自分の指も引き抜いた後ろを、そっと座席の座面に跨がらせる。
「っ、っ…」
ごくりと唾を飲み込みながら、座面に突き出る張り型の先端に位置を合わせて蕾をあてがい、俺はぎゅっと固く目を閉じた。
「座れ」
「っ、は、ぅ…」
ずるり、と腰を落とした後孔に、ディルドがゆっくりと埋まっていく。
「あっ、あっ、あっ…」
指よりは太い、けれども火宮のものよりは大分細いそれを、俺の後ろは痛みもなく飲み込んでいった。
「うぁぁんっ、んっ」
ぴたん、とお尻が座面に着いたのと同時に、ズプンッとディルドがナカに収まった。
ぞろりと擦り上げられたナカが収縮して、感じてはいけない、感じたくなんかない、と思うのに、火宮に躾られた身体が、ゾクゾクと快感を得るのは止められなかった。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ…」
荒い息を吐きながら、なんとか座席に収まった俺の向かいに、火宮が座る。
「ククッ、では食べるとするか」
この状況で、この状態で。
本当、意地悪だ。
人を苛めさせたら右に出る者はいない。
「っ、ふ、ぅん…」
そろりと箸に手を伸ばすだけで、グリッと動いてしまうナカが、もう堪らなかった。
「ククッ、これから3日間、食事のときはこれだからな」
「っな、あぁっ…」
本当、鬼!
まさか毎食、こんな目に遭わなくてはならないのか。
あまりにあまりな仕打ちとその宣言に、ザッと引いた血の気とその音は、驚くほどに盛大だった。
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