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第22話

「とりあえず、この両手鍋と、こっちの片手鍋」 火宮に任せておくと、なにを買い始めるか分かったものじゃない。 料理を一切しない、と断言していたのも納得な、ぶっ飛んだ選択をする火宮から、俺は主導権を奪い取った。 「フライパンは丸いのがいいなぁ」 「これか?」 「あっ、いいですね」 鍋のサイズで学習したか、今度は手頃な大きさのフライパンが差し出された。 「わっ、見て下さい。これ、焼いたものがくっつかないんですって」 すごーい、と、展示されていた動画を見ていた俺は、いつの間にか率先して調理器具選びに精を出していた。 あれ?なんかこれって完全に、火宮さんに手料理作らないとならない流れに…。 「ふぅん、じゃぁそれにしろ」 機能に大して興味がなさそうな火宮が、簡単にそれを購入品に加える。 「って待って、それ、値段が全く可愛くないんですけど…」 「そうか?気にするな」 サラリと言う火宮だが、よくよく見れば、先ほど選んだ鍋も、見回した周囲の品々も、いわゆる高級品と言われる部類のものばかりだ。 「散財が趣味?」 思わずボソッと呟いてしまった言葉は、火宮にばっちり聞かれてしまったらしい。 「なんだその悪趣味は」 「あっ、いえっ」 「フッ、浪費ではないだろう?」 必要経費と言われればそうだけど、それにしたってこの高級嗜好なのはどうなのだろう。 「いいものはいい。まぁおまえにはまだわからないだろうがな」 「ふーんだ、俺はどうせ貧乏人ですよー」 何せ火宮に出会う前の俺の財産は、マイナス数千万。 火宮のおかげでゼロにはなったが、結局ゼロだ。 「そうやさぐれるな。ほら、とっとと他の道具も選んで行くぞ」 大袈裟に舌を出して火宮に反抗していた俺は、スタスタと次の棚に向かってしまう火宮に置いて行かれかけて、慌てて後を追いかけた。

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