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第29話
「はっ!?」
急激な意識の浮上に、頭が一気に覚醒する。
ガバッと起こした身体の下には、柔らかいスプリングの感触があった。
「え…?もう朝?ってか、ベッド?」
一瞬うっかり眠ってしまっただけだと思ったのに、カーテンの隙間から射す光が明るい。
やば…。あのままソファで眠り込んでたんだ。
「しかもこれって、火宮さんが運んでくれたってこと?」
完全にやらかした、俺。
夜の相手をしなかったばかりか、勝手に先に寝て、しかもそれがソファの上で、火宮に寝室まで運ばせたとか。
「お、怒ったかな…」
叩き起こされなかったのが謎だが、火宮の機嫌は非常に気になるところだ。
「ひ、火宮さんっ」
慌ててベッドから飛び降り、リビングに飛び出したそこは、残念ながら無人だった。
「だーよーねー。とっくに仕事だよねー」
窓の外が明るい時点で予測していた現実。
この上図々しく寝坊とか、自分の神経が信じられない。
「はぁっ。帰ってきたら、ちゃんと謝ろう」
別に先に寝てはいけないという命令を受けているわけではないが、所有物の態度として間違っているだろうことはわかる。
文句を言われないからといって、甘えてしまうのも駄目だろう。
「んーっ」
大きく伸びをして、とりあえず洗面所に向かおうとしたところに、不意に人の気配が湧いた。
「あれ?火宮さ…」
もしかして戻ってきた?と振り返ったそこにいたのは、予想とは違う人物だった。
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