34 / 719

第34話

なんで…? 急に不機嫌になった気がする火宮が怖い。 怒らせるようなこと、してないよな? 機嫌を損ねた理由など浮かばない。 だけど壮絶に微笑む火宮の機嫌は、確かに悪い。 まさか、酔った? 酒でスイッチが入ってしまったのだろうか。 加虐嗜好だと本人は認めていた。 「隠すな」 無意識に、中心で項垂れる性器に手がいっていたらしい。 鋭い指摘に、ビクリと身体が震える。 「ッ…」 ゆっくりと、身体の横に手を移動させていきながら、目に盛り上がっていく涙を感じた。 「翼」 冷たく呼ばれ、ツンと鼻の奥が痛んだ。 「っ、はい…」 必死で持ち上げた顔と、何とか口に出した返事は、情けなく震えていた。 「フッ、辛いか?」 不意に緩んだ火宮の視線と、愉悦に揺れた声が届いた。 ピリピリした不機嫌なオーラが和らぎ、唇の端がゆるやかに吊り上がる。 舐めるように纏い付く火宮の視線を感じ、羞恥に身体が熱くなった。 「っ…ふっ…」 堪え切れなくなった嗚咽が漏れた。 火宮の視線が、ますます楽しげに揺れる。 「綺麗な、傷1つない身体だな」 ニヤリ、と歪んだ唇が、意地悪く言葉を紡ぎ出す。 涙でぼやけた視界の向こうに、獲物をいたぶる獣のような双眸が見えた。

ともだちにシェアしよう!