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第34話
なんで…?
急に不機嫌になった気がする火宮が怖い。
怒らせるようなこと、してないよな?
機嫌を損ねた理由など浮かばない。
だけど壮絶に微笑む火宮の機嫌は、確かに悪い。
まさか、酔った?
酒でスイッチが入ってしまったのだろうか。
加虐嗜好だと本人は認めていた。
「隠すな」
無意識に、中心で項垂れる性器に手がいっていたらしい。
鋭い指摘に、ビクリと身体が震える。
「ッ…」
ゆっくりと、身体の横に手を移動させていきながら、目に盛り上がっていく涙を感じた。
「翼」
冷たく呼ばれ、ツンと鼻の奥が痛んだ。
「っ、はい…」
必死で持ち上げた顔と、何とか口に出した返事は、情けなく震えていた。
「フッ、辛いか?」
不意に緩んだ火宮の視線と、愉悦に揺れた声が届いた。
ピリピリした不機嫌なオーラが和らぎ、唇の端がゆるやかに吊り上がる。
舐めるように纏い付く火宮の視線を感じ、羞恥に身体が熱くなった。
「っ…ふっ…」
堪え切れなくなった嗚咽が漏れた。
火宮の視線が、ますます楽しげに揺れる。
「綺麗な、傷1つない身体だな」
ニヤリ、と歪んだ唇が、意地悪く言葉を紡ぎ出す。
涙でぼやけた視界の向こうに、獲物をいたぶる獣のような双眸が見えた。
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