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第35話
「ふふ、白い肌に映える、いやらしい2つの膨らみだ」
すうっと滑った火宮の視線が、どこに向いているのか、痛いほどにわかる。
チラリと覗く赤い舌が、壮絶な色気を放つ。
「っ…」
ゾクゾクと、背筋を悪寒が走り抜け、身体が小刻みに震えてくる。
「その肌に、舌を這わせたら、甘そうだな」
「っ、や、ぁ…」
「腹の窪みに尖らせた舌先を差し入れたら、おまえはどんな風に鳴く?」
クックッと喉の奥を鳴らしながら、火宮の視線が俺の身体を辿っていく。
触れられているわけではないのに。
ただ見られているだけなのに。
まるで火宮の視線に物理的な力があるみたいに、なぞられた肌がゾワゾワと粟立つ。
「ほどよくくびれた脇腹。薄い腹筋は、まだ成長途中か」
「っ、あ…やァ…」
火宮はソファから1歩も動かず、ただジッと俺の身体に視線を這わす。
「下で震えるソレは、多少小ぶりだが、形も色もいい」
「っーー!やッ…」
「ん?見られて、感じているのか?」
勃ってきたぞ、と囁かれ、ゾクッと身体が震えた。
「やァ…ッ、は、ずかし…」
明るいリビングのLEDの灯が、俺の裸を煌々と照らしている。
ソファに座ったままの火宮の視線が、俺の裸体をジッと見据える。
「淫乱」
蔑むように、けれど嬉々とした、腰にくる低音だった。
「っ、あ、あァ、っンァ…」
わずかも触れられることもなく、火宮の言葉と視線に犯されて、前がはっきりと形を変えた。
「おまえは、恥ずかしくて感じる、変態か?」
「ちがっ…違うっ、火宮さんがっ…」
「俺がなんだ?何もしていない」
そうだ。確かに火宮は、何もしていない。
俺は、俺は一体どうしたんだ。
「やぁァ…ンァッ、やッ…」
見られているだけで、なんでこんなに身体が熱い。
嫌だ、怖い、嫌だこんなの。
「っふ…イヤ、ァ…」
ガクンと挫けた膝が、冷たい床に落ちた。
自分を抱き締めるように回した両手の指が、それぞれの二の腕に食い込む。
折りたたんだ上半身の下で、勃ち上がった自身が揺れている。
「翼」
「ッーー!」
「俺は座っていいなどと、一言も言っていない」
「ッ、ァ…」
「隠していいと、許可もしていない」
首だけ起こして見上げた火宮は、ソファでゆったりと微笑みながら、傲慢に俺を見下ろしていた。
「仕置きが必要だな」
ニヤリと笑った火宮の顔は、妖しく色気を含んで輝いていた。
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