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第37話※
「イヤッ!やだぁッ…」
反射的に強張った身体を割り開かれ、後孔にググッと押し込まれた小さな道具。
太い部分が入り口を通過すれば、あとはつるんと抵抗なくナカに入ってしまった。
「ひぃぁッ…ンッ、あッ」
小さいながらも、その存在感と違和感が半端ない。
生理的に異物を押し出そうと、ナカがゾロリと蠢く。
「出すなよ?」
腹に力が入ってしまったことがバレたのか。
先んじて火宮に命じられて息が詰まる。
「ッ、火宮、さんっ…」
「なんだ」
「と、って。これ、取ってくだ、さ…」
イヤイヤと左右に振った頭から、パラパラと涙が散った。
「駄目だ」
「ッ、う。な、んで…」
「くくっ。心配しなくても、たっぷりいい目を見せてやる」
妖艶に笑った火宮の顔がゆっくりと近づき、軽いキスを奪った途端、ビリッと腰が痺れるような快感が走った。
「ッアーー!」
「ふふ、当たったな?」
「ヤァッ、いや、そこッ、イヤァッ」
後ろに差し込まれた指がローターの位置を調節し、目の眩むような快感を生み出す場所に押し当てられた。
一気に角度を増した前から、先走りがタラタラと溢れる。
「ヤ、ァァッ…ひ、みや、さ…」
助けて。
縋るように向けた視線は、火宮の艶やかな笑顔に飲み込まれた。
「ッ?!アーーッ」
ブーンとモーター音が上がり、身体がビクンッと仰け反った。
「っな…ヤァッ!あぁンッ、アァッ!」
ナカのローターがいきなり振動を始め、狂いそうなほどの快感に、悲鳴に近い嬌声が漏れた。
「やぁ、ァァッ!あンッ…あッ」
怖い。気持ちいい。イキたい。
ジタバタともがく足が、シーツに滑る。
頭の芯がボーッと痺れ、後ろから湧き上がる快感に思考の全てが支配され始める。
「くくっ。いい顔をする。もっと乱れてみせろ」
「ンァッ…はァッ、あン、アァッ…」
イキたい。出したい。
ふらりと動いた手が、解放を求めて震える中心に伸びた。
「んァッ?」
触りたい、擦りたい、と伸ばした手は、それに届く前に火宮に捕まった。
「イヤッ!なんでっ…」
イキたいのに。擦って出したいのに。
「駄目だ、触るな」
「イヤァッ、お願い、おねがいっ」
「クッ、許さん」
意地悪ッーー!
大粒の涙が、ボロボロと溢れた。
「許してっ…イキたいぃ。触らせてぇっ!」
もう、羞恥も理性も残っていなかった。
ただただイキたい。
「ふぇぇっ…やだぁ。離してぇッ」
「翼」
「な、に…ヤダ、離して、お願い」
「翼、1つ、約束だ」
わけがわからなくなった頭に、静かな火宮の声が届いた。
「や、くそ、く?」
「あぁ。いいか、翼。おまえにはこれから、勝手に自分でここに触ることを禁止する」
「え…」
「他の誰かに触らせるなどは以ての外だぞ」
まぁそれは当たり前だけど。
でも。
「な…」
「いいな?もし破ったら…」
出た、お得意の、恐怖を煽る言葉の途切らせ方。
「ッ…」
「いまの比じゃないお仕置きがあると思え」
「っ!」
そんな。それはつまり、自慰も禁止だということで。
健康な16歳男子、それはかなり辛いんじゃないだろうか。
溜まったらどうしてくれる。
簡単に頷くわけにはいかない。
「翼、約束だ」
「っ、や、だ…」
「ほら、イキたいだろう?頷けよ」
ヴーンとローターの振動が強くなり、目の前がチカチカと眩んでくる。
思考はもう、ただ1つの要求に収束していく。
「翼。約束すれば、イカせてやるぞ」
「あ、あぁぁ…ァァッ」
イキたい。出したい。触、っ、て…。
「する…。やくそく、する、からぁっ」
「くくっ、そうか。いい子だ」
「おねがっ…触っ、て…イカせてぇっ!」
自分で駄目なら、火宮の手を求めるしかない。
火宮が笑って見下ろしてくる瞳に、懇願するように縋る俺の姿が映っている。
「ハッ、上出来だ、翼」
「な、に…?は、やくぅ…」
「そうだ、翼。俺に、縋れ。おまえを支配しているのは、俺、だ」
「ンッ、あァァッ…わ、かって、るっ」
なんでもいいから、触って。イカせて。
「おまえの全てが俺のものだ、翼」
ズクン、と全身が痺れるような呼び声だった。
「アッ、アァァッ、ひ、みやさ、んっ…」
掻き抱くように伸ばした手は、火宮の背中にちゃんと回った。
同時に何度か性器を擦られ、あっという間に絶頂に達する。
「ひぁ、アァァッ…あぁッ!」
ドクッと飛沫が上がり、ベットリと火宮の手を汚してしまった。
「あ、ぁぁ…ごめ、なさ…」
鮮やかに微笑んだ火宮の瞳には、怒りはなかった。
あ…よ、かった、笑って、る…。
ヘニャリと緩んだ頬がわかった。
ゆっくりと、瞼が重く落ちてくる。
「ふっ…俺以外に、簡単に懐くな」
額に触れた優しい温もりはなんだろう。
「んっ…」
疲れた。眠い…。
留めることの不可能な意識が、すうっと溶けて消えていった。
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