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第40話

結局、あれこれ考えた挙句、前に火宮の口から上がっていたハンバーグを作ることに決めた。 材料を頼んだついでに、コツでも聞こうと思ったのに、内線に出たのは浜崎ではなかった。 「え?いない?そうですか…」 休みなのかな。 勤務、と言っていいのかわからないけど、お使いの人の勤務状況はよく知らない。 下に住んでる、とは言っていたから、どこかに遊びに行っているのかもしれない。 ならば邪魔しては悪いか。 「わかりました。じゃぁえっと、神谷さんでしたっけ?よろしくお願いします」 なんかとても愛想のない、やたら事務的な人だった。 午後。 材料が届くまで暇な俺は、火宮に与えられているスマホをいじり始めた。 火宮に確認した契約プランは、当たり前のように使いたい放題で、ついでにWi-Fiのセキュリティーキーも教わったので、通信制限を気にせず存分に使える。 「あー、でもこんなことでいいのかな」 昼間っから、スマホのアプリでゲーム三昧なんて。なんだか駄目人間になっていく気がする。 だけど、外出は許されていないし、散策してはいけないとは言われていないが、火宮不在中の家の中を好き勝手覗いて歩くのも気がひける。 「引きこもりニート」 いや、ヒモか。ペットか。火宮の玩具か。 自分の身分をうっかり考えたら、とっても虚しくなった。 けれどそれを虚しいと思う権利も、立場も俺にはない。 「だんだん欲張りになってく…」 ポツリと呟いてみてゾッとした。 「だめだ、だめだ」 火宮の所有物でしかない俺にとって、自分の感情や考えというものが、1番不必要なもの。 ましてや自分の希望などは、決して持ってはいけない。 「火宮さん…」 早く帰って来ないかな。 火宮が必要としてくれるときだけ、俺に存在意義があるから。 「暇だよ…」 火宮がいない時間は、やたらと長く感じる。 いたらいたで、意地悪されるし、ベッドでのアレはその、まだ慣れないけれど。 「はーぁ。仕方ないから予習でもしてよっと」 手にしていたスマホでアプリを終わらせ、レシピサイトを開きながら、火宮が料理を食べてくれる姿を想像する。 「クスクス。ハンバーグとか、似合わない。でも今日も美味しいって言ってくれるかな」 可笑しくなりながら、早く材料が届かないかな、と夕方が楽しみになった。

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