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第56話

ッー!火宮さんっ! もう駄目だ、という絶望の中で、最後にその名を縋るように呼んでいた。 嫌だっ、火宮さんっ…。 声にはならない叫びを、心の中で繰り返す。 背後でスッと真鍋が動いた気配がして、身体がガチガチに強張った。 「っ…」 バシッ! え? 突然の衝撃に、一瞬頭が真っ白になった。 は?え?なに?お尻が…。 「痛っ、た、あぁぁっ!」 一呼吸も二呼吸も置いて口をついた悲鳴が、空気をビリビリと振動させた。 「手をどけて下さい」 「は?え?ちょっ、待っ…」 なんだこれ? だってズボンは履いている。 お尻は痛いんだけど、想像していた、その、無理矢理貫かれたという痛みじゃなくて…。 「翼さん」 「ッ!な、に?」 「はぁっ。縛りますか?」 「え?」 ツン、とベルトが触れたのは、どうやら無意識にお尻に回っていたらしい手で。 「何を勘違いなされているのか知りませんが、怠惰のつけは、臀部への半ダースほどの折檻で支払っていただきますよ」 「え…それって…」 「ベルトで、ここを打たせていただきます。残り5回」 「なっ…」 まさか、罰って、お尻を叩かれるの? 「手を」 「っ…」 いや、ヤられるわけじゃなくて良かったけど、だからってお尻をぶたれるのもいいわけなくて。 「や、だ…」 「だから、駄目です。最初から真面目にやる気を出さなかったことを後悔して下さい」 「ッ…」 お尻を庇っていた手が捕まり、背中に押さえられてしまった。 嫌だ…。 「っ、あぁぁっ!」 痛い、痛い、痛い。 身体が反射的に仰け反る。 嫌だと言っているのに、容赦なく強引に、お尻をベルトで打ち据えられた。 「ひぃっ、痛ッー!」 ボロボロと、目から生理的な涙が溢れ出した。 「うぁぁっ!ごめんなさいー!」 目の眩むような痛みの中、真鍋を舐めたら痛い目を見るのはおまえだ、と笑っていた火宮の顔が思い浮かんだ。 許可って、こういうこと? まさか、こんな体罰食らうなんて。 火宮の忠告を聞かなかった自分が恨めしい。 「っ、ひっく…」 もう、やだ。 これから真面目に勉強する…。

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