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第143話※
「っ…」
薬のせいだ、薬のせいだ、薬のせいだ。
決して俺の意志なんかじゃない、と言い訳しながら、俺はズボンの前立てを外し、そっと下着をずり下げた。
「ふっ、はンッ…」
ポロンと出て来た性器は、火宮に刺激されたせいで硬さも角度も持ち、もっと決定的な刺激を寄越せと揺れている。
「んっ…ンッ」
オズオズと伸ばした手で握り込み、ギュッと固く目を瞑る。
「ククッ、握るだけか?動かさないとイけないだろう?」
「っーー!」
だからどS!
せっかく目を閉じて、せめて火宮の存在が見えない方がマシかと、わざわざ視界を無くしたというのに。
敢えて声を放って存在を忘れさせないとか、本当にブレなくやってくれる。
「ん?翼?」
「っ、意地悪…」
ジワッと滲んだ涙が閉じた瞼の裏に広がった。
「ククッ、分かっていて煽るおまえが悪い」
「っ、俺は何も…」
「クッ、あのオヤジがな。誰もが畏れる七重組組長だぞ?」
「っ、だって…」
「何をすればあんなに短い時間であっさり気に入られ、朗らかに笑わせられるんだ」
ククッと笑う火宮は、何もかもを見透かしているようで。
「何も…俺は。ただ普通に話していただけ…っ」
「だろうな。さすが俺のイロだ、と言いたいところだが、必要以上に懐かれたのは気に入らん」
「はぁっ?」
勝手に懐いてきたのは向こうです!
俺だって好きで七重さんに絡まれていたわけじゃないのに…。
「言いがかりだ…」
「専売特許だものでな。諦めろ」
あー、そうでした。あなたもヤクザさんでしたね。
「っ…はッ…」
どうしたところで火宮がやると言ったら思い通りになるまで終わらない。
それをよく知っている俺は、渋々性器に添えた手を動かし始めた。
「っ、く、はンッ…」
火宮はここを、ゆっくり撫で上げ…。
「んァ…っ、あんっ…」
キュッと強く力を込め、やわやわとたまごと握り締めて扱く…。
「ん、はッ…んんっ、んァ…」
カリを指で締め付けて…先端を刺激しながら先走りを擦りつけ…。
「あっ、ひ、みや、さっ…」
ぼやぁっとした視界に揺れる、愛しい美貌。
少し意地悪く微笑んで、眇めた目が俺を見る。
「あっ、あぁっ…刃。じん…」
翼、と呼ぶ低い声が好き。
「刃。じんっ…」
少し意地悪く吊り上がる唇にゾクゾクする。
「んぁっ、あぁっ、んッ…出っ…」
翼。
俺を見つめて、俺を呼ぶ。
愛おしそうに、慈しむように。
「翼」
「っ、あ?」
やば…。
「翼」
「っ、あ、あぁっ、あぁぁっ!」
知らぬ間に早まっていた手と、想像とピッタリ重なる火宮の低い声で。
俺は嫌がっていたのが嘘みたいに、あっけなく白濁を飛び散らせた。
「あぁ…あぁぁっ…」
火宮の見ている前で。
火宮を想像して自慰をして。
しかも、イッた。
「あぁぁっ…」
手を汚す白い粘つきがリアルで、俺は恥ずかしすぎて惨めすぎて、クラクラと目を回した。
「翼」
「っ、ふぇ…っ」
「翼、可愛いかった」
「嫌っ、こんなのっ…こんな…」
うぁぁん、と、勝手に溢れ出した涙が、大声の嗚咽に絡んだ。
「ククッ、そそられた」
「ばかっ、ばかぁ…」
恥ずかしいんだから。
悔しいんだから!
火宮がいるのに俺だけ1人で。
触れられるところで見てるのに、自分でなんて。
「やだ…。やだっ」
「翼?」
「抱いてよ、抱いて。刃。じんー」
欲しいのはこの温もり。
欲しいのはこの熱。
ふらりと手を伸ばし、ギュッと目の前の足に抱きつく。
そろりと這わせた指先で、強請るように火宮の熱に触れる。
「抱いて?」
「ッ、翼」
「ねっ?コレ…ここに、い、挿れ、て…」
あぁ恥ずかしい。恥ずかしい。
何甘ったるい声を出して、自分でお尻を触ってアピールなんて。
「ククッ、悪くない」
俺じゃない。
こんなの俺じゃない。
薬だ、薬。薬でおかしくされた身体が言わせてる。
言い訳しながらスルリとズボンを脱ぎ去る。
「刃…」
「ククッ、いいだろう」
「ふぁっ?!」
欲情にギラリと目を光らせた火宮が、ヒョイと俺の身体を掬い上げた。
「っわ…」
「おまえから誘ったこと、忘れるなよ?」
ククッと笑う唇が、そっと耳に寄せられる。
「刃?」
『覚悟しろ』
コソッと囁かれた言葉は欲に濡れていて。
「っ!」
嬉しい。
望むところだ、と盛り上がった気分は、やっぱり薬を盛られたせい……のはずだ。
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