153 / 719
第153話※
「っ、あぁ…あッ」
「ん?どうした」
ニヤリと人の悪い笑みを浮かべて、愉悦に瞳を揺らしておいてよく言う。
身体を洗ってやるという名目の下、ボディーソープをつけた手で、わざといやらしい触り方をしているのはどこの誰だ。
「やめっ…そ、こ…ッ」
胸の突起を捏ねるように撫で回され、ヌルヌル滑るボディーソープの泡が、ゾクゾクと快感を焚き付ける。
勝手に背中が仰け反り、腰が捩れる。
「ククッ、手が不自由なおまえに代わって、洗ってやっているだけだろう?」
執拗に胸を弄り回して、平然とのたまう火宮はやっぱりどSだ。
まったくブレない。
「や、ぁぁ…もっ、い…他もっ、洗っ…」
とにかく胸への刺激から逃れたくて、カシャカシャと手枷の鎖を鳴らせば、クックッと愉しげな火宮の笑い声が返った。
「他?あぁ、こことか?」
「っ!」
「こっちもか」
サディスティックな笑みを浮かべながら、スルッと脇腹に滑った手にビクッと身体が跳ねる。
下っ腹に滑ったもう片方の手が、サワサワとその下の茂みを撫でる。
「イヤッ…火宮さっ…」
本当もう勘弁して。
キュッと握られた性器と、やわやわと揉むように掴まれた袋にガクッと力が抜けた。
「あぁぁ…いやぁ」
「ククッ、何が嫌だ」
「っ、意地悪…」
ウルッと目が潤んでしまった自覚はあった。
不自由な手で縋り付いた風呂場の壁が滑る。
「やぁ…火宮さんッ…」
立っていられない。
性器の刺激から逃れようと腰を引いたら、今度は突き出す形になってしまったお尻をつるりと撫でられた。
「ひぃゃぁっ!」
「ククッ、ここも、念入りに洗ってやらないとな」
「もっ…ばかぁ…」
ツプッと双丘の間に潜り込んできた指に、ますます力が抜ける。
ボディーソープの滑りを借りて、難なく2本の指を呑み込んでしまったのが分かった。
「ククッ、淫乱」
「ふぇっ、違う…」
クチュクチュと卑猥な音が上がり、浴室の壁に反響するのがたまらなくて、ポロポロと涙が溢れ出した。
「洗ってやっているだけなのに?」
「っ、あ…やぁっ…」
もうその建前はいいから。
どうせ最初からこうして意地悪して、愉しむつもりだったくせに。
「ククッ、しょうがないな」
「っ、な…」
「ふっ、ここだったな」
「ひっ、やぁぁっ」
クイッとナカで指が曲げられた瞬間、目の眩むような快感が突き抜けた。
わざと狙って前立腺とやらを責めた火宮のせいだ。
「いやっ、やぁっ…」
ガクガクと膝が震え、腰が勝手に揺れてしまった。
「もっ、やっ。もっ、やだ。イッちゃう…イッちゃうからぁっ」
「ククッ、いいぞ?」
「やだっ、やだぁ!」
俺だけ1人でなんて。
指だけで喘がされて、イかされるなんて。
「挿れ、て…。ひ、みやさん、も、一緒に…」
お願い、と小さく囁いて振り返ったら、グイッと足の間に膝が割り込んできた。
「ククッ、可愛いことを。誘い方が上手くなった」
「っ…そ、んな、の…」
「ふっ、翼。好きだ」
「っー!」
これって、背後からの壁ドンってやつ?
後ろから覆い被さるように身体を近づけ、俺の頭の真横には火宮の手。
耳元に近づけられた唇からは、色気全開の低い声が、全身に沁み渡るように囁かれる。
「っ、んアッ…」
熱い楔がズンッと一気にナカに突き立てられ、思わずその刺激でイッてしまった。
「ふぁぁあっ、んッ…」
「ククッ、挿れた瞬間にイクなど。なんて可愛いことをしてくれる」
「ひぃぁっ、やぁっ、あっ、あァッ」
パタパタと浴室の壁に飛び散った白濁が、タラリと垂れていく様が酷く淫らだ。
イッているのにもかかわらず、ナカを穿つ火宮の熱は、ズンズンと抽挿を繰り返す。
「あっ、あぁっ、待っ…んっアァッ」
気持ちよすぎて激しくて、目の前がチカチカと眩む。
耳の穴をねっとりと舐られ、その舌がツゥーッと首元に滑っていき、ゾクゾクと快感が駆け上がる。
「った!っあ、あァッ!」
ズキ、と痛んだ首は、火宮がそこに噛み付いたせいか。
キスマークというにはあまりに過激な、きっと歯型がくっきり付いただろう痛み。
嬉しくて、痺れるほどに気持ちよくて、涙がハラハラ溢れ出る。
「あっ、あっ、刃。じんー」
「ククッ、翼」
あぁ好きだ。
俺を呼ぶ低い声が。
ナカを穿つ激しい熱が。
上がる吐息に、むせ返るような色気を放つ火宮の匂いが。
全て、すべて。
「好きっ、刃。じん」
「ふっ、はっ…そんなに締めるな…」
持っていかれる。
囁く声まで色っぽくて、きゅうん、とナカがますます締まった。
「くっ…」
「好き。好きっ。俺はっ…俺のぜんぶは、刃の、ものっ…」
「ん、ッ、くそ…」
ハッと乱れる火宮の呼吸から、余裕が消えたのがやけに嬉しい。
「刃だけ。刃にならっ、全部あげる。だから、ちょ、だい?」
「っ、翼」
「吐息1つも…血の一滴までも…刃のぜんぶを、愛してる」
必死で振り返って、必死で微笑んだ。
「ッ!クソッ…」
ぎゅっと眉を寄せた火宮が、グイッと俺の片足を持ち上げて、ナカを穿ったままぐるんと身体を返した。
「ひぃぁっ…」
向かい合って抱きしめられ、枷のついたままの手を、火宮の首の後ろに掛ける。
「刃っ…」
「ッ…」
噛み付くように与えられたキスと、ますます激しさを増した火宮の律動。
苛烈な刺激と鮮やかな快感が身体を満たす。
「イ、クッ…」
上り詰めた絶頂から、2人揃って飛び降りる。
「くっ…」
ズクンと震えた火宮の熱と同時に、飛び出した白濁が互いの腹の間を汚す。
きゅうっ、と締まった後孔が、愛しい人の熱に食いついて。
堕ちる!
ガクンと力の抜けた身体を、ガシッと逞しい火宮の腕が抱き止めた。
「刃」
へにゃりと頬が緩んでしまい、ぶら下がるみたいに枷に体重を掛けてしまう。
「刃…」
好き。
ふわっと笑って見せたのを最後に、スゥッと意識が遠ざかった。
ともだちにシェアしよう!