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第202話※
「ふっ、ふぇぇっ、痛いー」
火宮の膝の上で、いつまでもグズグズと燻っている俺の背中を、火宮の手が優しく撫でている。
「ククッ、よく頑張った」
「うぅ…。だって俺が悪いから…」
「ふっ、潔いことで。まぁこれに懲りたら、もう虎の尾を踏んでくれるな」
「うー、はい…」
もう本当、痛いのはごめんだ。
「うっかり俺の嗜好も守備範囲が広がるところだったしな」
「っ!それは駄目ですっ!」
この火宮が、苦痛系まで好み始めたら…。
もう考えるだけで恐ろしい。
俺の身体、絶対に保たない。
「ククッ、安心しろ。苦痛に泣き叫ぶおまえの顔も悪くはないが…やはり啼かせるなら、こっちだろう?」
ニヤリと笑った火宮を空気だけで感じる。
スルリと後ろから股の間に滑り込んできた悪戯な手が、軽く性器を弄んでいく。
「っ…」
「ふっ、勃ってはいないか」
「あ、当たり前ですっ!」
だから痛いのは本気で嫌なんだって。
「ふぅぅん?」
その疑り深い声。
「だから俺はMじゃないんですって!」
あぁ、何度繰り返したんだろう、このやり取り…。
「まぁいい。とりあえず起きろ」
「う、はい…」
次は火宮からのお仕置きか…。
のそのそと身体を起こした俺は、いつの間にか、足に引っかかっていたズボンと下着がすっかり脱げ落ちていることに気がついた。
「わっ…」
「ククッ、今更か?」
「だっ…て」
「ふっ、どうせ脱ぐんだ、気にするな」
気にするなって言ったって…。
「んっ…」
火宮の膝の上に起き上がって、向かい合わせに跨いだところで、いきなり与えられた深いキスに喘ぐ。
「ん、ンッ…」
上顎をなぞられ、歯列の裏を刺激され、ゾクゾクと湧き上がった快感に、ふるりと身体が震えてしまう。
「んっ、あっ…」
何度も教え込まれた馴染んだキスに、俺の舌は勝手に応える。
ぬるりと絡めとられた舌が、やっぱり痺れるほどに気持ちがいい。
「ふっ、ぁぁっ…んっ」
んっ?
パチン、と中心に感じた微かな違和感に、ふと首が傾いだ。
「ククッ、相変わらず感じやすいが…」
「っ!これ…」
「簡単にイかせては仕置きにならない」
ニヤリと花開く悪魔の笑みが、至近距離で輝いた。
「っ、や…」
性器の根元につけられたリングは、射精を阻む最悪な代物。
何度か経験のあるその道具に、絶望的な気持ちが湧き上がる。
「火宮さぁん…」
「ククッ、媚びた顔も可愛いが…今日は生半可じゃ許さないと言っただろう?」
「っー!」
万歳をさせられた身体から衣服が奪われ、シュルッと解かれたネクタイが、素早く俺の手首を捕らえていて…。
「やっ…」
「ククッ、俺の愛、まずは全身に刻みつけてやる。俺がどれだけおまえを愛しているか、思い知るがいい」
「なっ…」
気づいたときにはベッドの上に押し倒されていて、キシリと覆いかぶさってきた火宮の唇が、まずは頭上に上げた両手の指先に触れた。
「あっ…」
チュッ、と指の腹を吸って、ペロリとそこを舌が舐める。
ピクリと震えた指先から、スッと下がった唇が、第1関節に同じ事をする。
「やっ、あっ…」
ふるりと震えた身体を笑いながら、手のひらへ、腕へと下りてくる火宮の唇。
肌にかかる吐息がくすぐったい。
「あっ…やっ、火宮さっ…」
腕をチュッ、チュッと吸いながら、腋にたどり着いた唇に震える。
チロチロと腋を舐められて、たまらずビクビクと身体が跳ねた。
「やだっ、そこ、やだ…」
くすぐったいような、けれどそれだけじゃないこの感覚は快感か。
「そ、んな、とこっ…」
やだー、と足をジタバタさせたら、咎めるように、唇が乳首の上に移動した。
「ひっ…」
胸の突起を強く吸われ、ピクンと仰け反れば突き出た胸を舌で捏ね回される。
反対側の胸は指で転がすように弄られて、ツンと主張するように尖ってしまった。
「あぁっ…やぁんっ…」
「ククッ、いやらしく尖らせて」
「あぁっ、だ、って…」
火宮さんが弄るから。
「ふっ、次は、上か?それとも下か?」
ニヤリと意地悪い笑みが見えたと思ったら、ツゥーッと乳首から上へ、喉から顎へと舐め上げられた。
「ひゃぁっ、それやぁっ…」
ゾゾゾ、と湧いたのは快感か寒気か。
ゆるりと中心が持ち上がったことには気づいている。
「ふっ、嫌?嘘をつく唇は、こうしてくれる」
「んっ、った!」
カプ、と噛まれた下唇が、ジーンと痺れて甘い痛みを残す。
「可愛い頬。ほどよい高さの鼻。口よりものを語る目、形の良い眉…」
1つ1つ囁きながら、火宮がその全てにキスを落としていく。
「う、んっ…あっ、んっ…」
火宮の触れた場所が熱くて、気持ちよくて、焦れた下半身がモゾモゾと揺れてしまった。
「ククッ、まだまだ…」
無意識に火宮に擦り付けようとしていた性器を、ひょいっと身体を浮かせて避けられてしまい、ハッと気づいて頬が熱くなった。
「やっ、違う…」
「ククッ、欲情に濡れたその目の、瞼」
「やぁぁ…んんっ…」
チュッと落とされる唇が、馬鹿みたいに気持ちよくてやばい。
「さぁ、次は下へ…」
スゥッと下がっていった唇が、今度は脇腹を、腹を、臍の窪みを舐めていく。
「ふぁっ、やぁっ、あんっ、んぁッ…」
どこもかしこも性感帯になったみたいに、熱く痺れて快感に悶える。
「んぁっ、あっ…」
臍からスゥッと滑った舌に、さらなる快感の予感がして腰が震えた。
「っ、んっ……え」
その下は、やっと性器に…と期待したのに。
スッとそこを避けた火宮の唇が、太腿へ、膝へと落ちていく。
「っ、やぁっ…な、んで…」
「ククッ、なんだ?何を期待した」
ニヤリと唇の端を吊り上げた火宮は確信犯だ。
脛をスーッと舐めていくその愉しげな顔が憎らしい。
「意地悪っ!」
「クックックッ、だから翼、これは仕置きだと言っているだろう?」
愉悦に弧を描いた目が俺を見て、ツゥーッと足の甲を滑った舌が、足先に触れる。
「あっ、やっ!」
やばい、それ…。
恭しく踵を捧げ持たれたかと思った瞬間、軽く目を伏せた火宮が、慈しむように足の指先にキスをした。
「う、そ、でしょ…」
この、火宮が。
俺様でどS様で、会長で社長で、すっごく偉い立場のはずの火宮が。
「っ、ぁ…」
やば…。
本当、それはヤバすぎる。
足元で揺れる火宮の美貌に、思わずズクンッと腰が震えて、中心がしっかり勃ち上がってしまった。
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