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第272話

翌日も俺は、めげずに豊峰に猛アタックしていた。 朝の挨拶は、俺の「おはよう」に対して、豊峰からは「あぁ」と返ってきた。 体育の時間の2人組を作っての柔軟体操では、「豊峰くんっ!俺と組もう?」に対して、やっぱり「あぁ」という一言だけど、本当にペアになってくれた。 「お昼一緒にしよ!」にも「あぁ」。 5時間目の教室移動「一緒に行って」にも「あぁ」。 もちろん行動も伴っている豊峰に、俺はそれが嫌々だとしても、義務感からだとしても構うことなく、四六時中絡んでいた。 その度に周りのクラスメイトのざわつきと注目を感じていたけど、俺は気にせず豊峰へと突っ込んで行っていた。 そうして放課後。 「え?親睦会?」 「うん。一応みんな顔見知りだけど、クラス替えはあったからね。今日はクラス親睦会だよ。火宮くんも参加だよね?」 中心になって幹事を務めているらしいグループの1人が、俺のことも誘いに来た。 見ればあちこちで出欠を確認しているクラスメイトたちの姿が見える。 「えっと…豊峰くんは…」 行くのだろうか、とキョロキョロしたところで、ちょうど真後ろを通りかかった豊峰を見つけた。 「あっ、豊峰くんっ!」 「あ?」 「あのっ、今日クラスの親睦会なんだって。豊峰くんも…」 ぎょっとなったクラスメイトの顔が見えたけれど俺は構わず豊峰を誘おうとした。 けれど。 「俺はいい」 「え…」 あからさまにホッとしたクラスメイトの顔が目の端に見えた。 「え、豊峰くんが行かないんじゃ、俺も…」 「あんたは行って来いよ」 「え…」 「じゃぁな」 プラッと手を振って教室を出て行く豊峰の真意は何なのか。 「あ、俺…」 「火宮くん?あの、どうする?」 来て欲しいな、と期待の目で見てくるクラスメイトは、なんだか振り切りにくくて。 「えっと…」 「みんなも、火宮くんと話してみたいって思っている子、結構いると思うんだけど…」 「あー、うん。そうだよね、わかった。参加する」 親睦会と言いつつも、多分、物珍しい編入生である俺を誘い出したいんだろうな、ということくらいは俺にも分かる。 ここで空気を読まずに豊峰を追いかけるという選択肢もあるにはあるが、さすがに俺も、それを選ぶことはできなかった。 「ところで親睦会っていうのはどこで?」 「街のカラオケ店」 「分かった。店の名前ってわかる?」 「うん、ちょっと待ってて」 幹事ー、と走っていくクラスメイトの背中を見送りつつ、俺はすでに姿の見えなくなってしまった豊峰を今日は諦めて、クラスの親睦会に向かうことに決めた。 もちろん今日は寄り道していくという連絡は、ちゃんと忘れなかった。

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