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第284話※
「やっ、あぁぁっ、ひ、みや、さっ…」
嘘でしょ?
この人が。
俺様で社長様でヤクザの会長様の火宮刃が、俺の足元に跪いて、俺の性器を舐めている。
「あっ、ぁんっ、あぁぁっ」
やばいよ、やばい。
この倒錯的な光景、鏡に映るその姿に、やばいくらいクる。
「あっ、だめ、火宮さっ…」
出ちゃう。
早かろうが何だろうが、散々焦らされた身体にこの刺激はとどめの1発でしかない。
「あっ、もっ、刃っ…」
気持ちよくて、感じすぎて、おかしくなる。
「っ…」
ジュルッ、チュゥ、とわざと音を立てて吸われ、俺は今度こそ、絶頂に身体を震わせ…。
「ひぁっ、あぁぁっ、あーッ…」
ぎゅぅ、と不自由な手で火宮の頭を押さえつけ、サラリと揺れる黒髪を掴み、ビュルルッとその形のよい唇の奥へ白濁を吐き出した。
仰け反った白い喉が目の前の鏡にチラつき、トロンと潤んだ瞳が俺を見つめる。
「っ…」
誰?
その艶かしくいやらしい顔を見せている、色っぽい少年は、誰。
「クッ、見ろ、翼。これが、俺の何より大切な、俺だけがさせられる、俺の最愛の恋人の、1番艶やかな姿だ」
綺麗だろう?と自慢げに笑う火宮の顔が、いつの間にか俺の顔の後ろに映っていて。
クイッと掴まれ、上げさせられた顎が、もう1人の俺から目を逸らすことを許してくれない。
「あっ、あっ、やだ…」
チラリと見えた赤が、やけに艶かしく、俺が吐き出したものを受け止め飲み下した口から覗く。
「あっ、あんっ、じ、ん…」
なんていやらしい顔。
出したばかりなのに、またも欲情を揺らし、貪欲に快楽を求める、浅ましい瞳が俺を見る。
「ククッ、元気だな」
むくりと起き上がってしまった性器を笑われ、顎を捉えた方でないほうの手が、スルリと肌を這い回る。
乳首を掠めたそれが、痺れるような快感を湧き立たせ、脇腹をなぞる指先に、ゾクゾクと身体が震えた。
「あぁぁ、はぅぁぁ…」
本当、誰だこれ。
こんなにむせ返るような色香を放って、あまりに妖しく身をくねらす淫らな少年を、俺は知らない。
「ククッ、翼。分かるだろう?」
背後に映る、欲情を宿した艶やかな火宮の色香にも負けない、甘く淫らな姿を晒す俺は…。
「あっ、はっ、刃に、だけ…。こんなの、刃に、だけです…っ」
他の誰が触れても、俺はこんな風にはならない。
他の誰にも、こんな姿は見せない。
涙で潤んだ目を鏡の中の火宮に向けたら、ニヤリと意地悪く持ち上がった頬が見えた。
「当たり前だ。俺以外の前で見せてみろ…」
あぁ、途中で途切れるその声は、お得意の脅し技だ。
ギラリと宿った獰猛な光は、苛立ちと嫉妬と独占欲で。
けれどもその奥に揺れるのは、俺が愛おしいと、自分だけが唯一だと、自信たっぷりの優越感と溢れる愛情だから。
「刃だけっ。他の誰にも…」
分かったから。
俺の身体は意外とえっちだ。
反省したから。
今回浅はかに、他人の手を肌に許してしまったこと。
「もっ、しない…」
おまえはおまえを何よりも守らなくてはいけない、俺のために…。
火宮の想いが胸に溢れて、それを示すかのように、中心からはまた透明な液体がタラタラと漏れた。
「ククッ、翼、最後まで、ちゃんと見ていろよ」
「っあ…ッ!」
まさかっ。
それって…。
グイ、と後ろから持ち上げられた太腿に、がばりと大きく開いてしまった股がが丸見えになった。
「刃っ、もっ、お仕置き…」
終わりじゃ…?という希望的観測は、猛った性器を取り出し、後ろからわざわざ鏡に映るように俺の足の間に晒し、その先端を蕾に触れさせた火宮の行動で砕け散った。
「よく見ていろ、おまえにこうして触れていいのは、俺だけだ」
「っあーッ、アーッ…」
ズプッと後孔を穿たれる感覚と、俺の淫らな孔が火宮の性器をズブズブと飲み込んでいく様が視覚でも捉えられた。
「クッ、締めすぎだ、力を抜け」
「あっ、あっ、無理っ、刃。じんー」
そのキュッと寄せられた眉も、熱い吐息を吐く唇も、俺のナカを穿つ硬い愛おしい熱も、全部、全部。
目に映る全てが、身体に感じる全てが、気持ちよくて心地よくて堪らないから。
「あっ、あっ、刃。じんっ…」
あぁ本当、みっともない。
中心からは涎を垂らして、揺さぶる火宮の動きに合わせて腰を揺らして、トロンと焦点の合わない目で俺を見つめちゃってる俺。
「クッ、翼。翼」
ズプッ、ヌプッ、と出入りする火宮の楔が目に見えて、同時にナカを擦られるこの新たな感じ。
「あっ、あっ、もっ、イく…イっちゃう…」
ガンガンと奥を、入り口を、前立腺を、巧みに突かれて、再び駆け上がった頂の上。
「く、ぅ、ぅ、あぁーっ、じんッ」
きゅぅん、と切なく胸が震えて、下腹部に力が入ったと思ったら、ビュルルッ、と堪える間もなく白濁が飛び散った。
「クッ、翼…」
あぁ、そのイキ顔。
ずるいなぁ。自分も見なよ…。
軽く目を伏せて、きゅっと唇を引き結んで、ほら見て、こんなに色っぽいんだから。
こんなにこんなに愛おしいんだから。
鏡に映る火宮の顔に、にこりと笑った目は合わず。
人には見させておいて、自分はその瞬間目を伏せてしまうとか、本当にずるくて意地悪な人。
俺の大好きな恋人。
「じん、好き…」
へにゃりと緩んだ俺の顔は、あまりに幸せそうに甘く穏やかに、俺を見て笑っていた。
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