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第332話※

——だ、い、す、き。 どうか唇の動きを読み取ってもらえますように。 大袈裟なほど口を大きく動かして、どうしても伝えたい4文字の言葉を形作った。 大好き。 あなただけが、ただ1人特別で。 あなたのためならば俺はなんだってできる。 そう、それこそなんだって。 ふわりと浮かべた笑顔の目から、ツゥーッと意図しない涙が流れた。 「翼」 スッと指を引き抜いた火宮が、空になったそこに、猛った熱を押し付ける。 「翼。俺はおまえのためならば、鬼にも修羅にもなれる」 っ…。 「だけど翼。俺はおまえのおかげで、人であれる」 刃…。 「だから翼、おまえは必ず、俺の側にいろ。おまえは必ず俺の元にいて、俺を、愛してくれなければならない」 っーー! それは、傲慢な命令口調なのに、切なる火宮の願いにも聞こえて。 側にいて。俺を愛してと、狂おしいほどにひたむきに伝わってくる想いでもあって。 ——刃っ…。 ごめんなさい、少しだけでも、離れようとなんかして。 あなたと距離を置き、1人で抱え込もうとなんかして。 「共に生きると誓った。あの日から、俺の道はおまえと共に、おまえの道は俺と共にあるだろう?」 うん。うん、火宮さん。 「翼、俺はいつだって一緒に、悩んで苦しんで、そして喜んで、繋がっていたい」 っ…1人じゃ、ないね。 互いに、互いがいる。 「愛している、翼。おまえだけを、ただ1人」 っ、あぁっ! 熱烈な告白と共に、熱い楔に一気に後孔を貫かれた。 ビクンと仰け反った背中に、ゾクゾクと快楽が駆け上がり、熱の集まった中心が震える。 嬉しい。好き。大好き。愛してる。 嬌声も想いも声にはならないけれど、多分きっともう、そんなのいらない。 ズプズプと穿たれるナカが、熱く絡みついて火宮を締め付けているのが分かる。 「クッ、翼。翼…」 ぎゅっと眉を寄せて、軽くハァハァと息を上げて、律動を早める火宮が興奮してくれているのも分かる。 んっ、んっ、火宮さん、刃っ…。 ぎゅっと搔き抱いた身体がゆさゆさと揺れ、いっそう激しくナカを擦り上げられる。 あっ、イく…出るっ…。 ズンズン、ジュプジュプとナカを熱く激しく突かれて、俺はたまらず喉元を曝け出した。 刃っーー! ドピュッ、と中心から白濁が飛び散る。 射精の余韻で収縮するナカを、なおもズンズンと穿たれて、頭がおかしくなってしまいそうだ。 あっ、あっ、イッてるのに…。 まだまだ、もっと、と貪欲に求められ、放ったばかりの性器がまたも力を取り戻し、続けざまの絶頂に導かれる。 「クッ、翼ッ」 ばか、バカ火宮っ…。 もっ、辛いってば。連続でこんな、壊れちゃうっ…。 頭も身体も悲鳴を上げるのに、心だけはたまらなく満たされていき、放ったばかりの白濁の上に、また新たな白が加わる。 イキまくったお腹の上が、もうドロドロだ。 ひぃぁぁっ…。 ピュッと飛び出た白濁と同時に、ぎゅぅ、とナカをきつく締めつけてしまい、そこを擦り上げた火宮から、熱い迸りが奥に注がれた。 あぁぁ、じんー。 「翼」 ふわりと緩む、そのイキ顔がたまらない。 ゆっくりゆっくり近づいてきたそれが、焦点が合わないほど間近に迫って。 んっ…。 優しく温かいキスが落ちる。 愛しい、愛しいと、語るキス。 俺も、お返しとばかりに、必死で舌を絡みつかせ、愛しい、愛しいと、キスで語った。

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