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第354話※

「ほら、翼。出してみろ」 くいっ、と引かれたローターの紐に引きずられ、ナカをぞろりと擦りながら、それが入り口付近まで移動する。 あっ、あぁっ…。 まるで排泄のような感覚に、倒錯的な快感が湧く。 ナカが収縮を繰り返し、先端が僅かに蕾を押し広げた瞬間。 やっ、んぁっ、あぁっ。 あぁ、解放される、と思ったのに。 意地悪くも火宮の手はパッと紐から離された。 あっ、あっ、あぅぅ…。 せっかく後1歩で取り出してもらえると思ったのに。 きゅぅ、と反射的に収縮してしまった蕾が、ローターを奥へ戻してしまう。 もぞもぞと蠢動を始めた内壁に押し戻され、結局ローターは、ナカに留まってしまった。 ひぅ、あぁっ…。 期待した後の絶望感はあまりに大きい。 しかもそれが自分の身体の反応が起こしたことだなんて、浅ましくて泣けてくる。 もっ、やだ。 こんなの無理ぃ、と泣き言を言いたいのに、相変わらず俺の声は出なくて。 じんー。 潤んだ目を向けて後ろの火宮に縋ったら、クックッと喉を鳴らした火宮が、艶やかに微笑んでいた。 「ククッ、降参か?」 鮮やかに微笑む火宮に、全力で頷く。 「では暴言を謝って、今後は控えるか?」 もう言わないか、と言わないところがこの人、俺を分かってる。 「翼?」 謝る。バカ火宮って思ってごめんなさい。 出せない声の代わりに、必死で身体を捩って伝えた俺に、火宮はニヤリと妖しく笑った。 「まだまだ、もっとだ」 はぁっ?これ以上…いや、はい、舌の根も乾かないうちに、やらかさないくらいの学習能力はあります。 っ…許して?火宮さん。 どうしたらいいか、と考えるまでもなく、俺は恥ずかしさに目を瞑って、フリフリとお尻を振りながら、火宮に媚びた。 ぶわっ、と火宮の方から、むせ返るような色香が増加する。 あはは。この人がどうしたら悦ぶのか、自然に分かる俺も俺だね。 あなたに喜んでもらえるためなら、俺はどこまでだって堕ちてやる…。 「ッ、翼」 これでもか、というほど背を仰け反らせて、限界までお尻を高く突き出す。 欄干に括り付けられた手首がギリギリと痛んだけれど、構うものか。 ンッ…後ろの、取って? お仕置き、許して。 お願い、と、再びお尻を軽くくねらせる。 「ククッ、そそられた。許してやる」 ぞくっとするような欲情に揺れた火宮の声が届き、その瞬間、ズルッと内臓が引きずり出されるような衝撃が襲った。 っあーー! 勢いよくローターが取り出されたんだ、って気づいたときにはもう、空になった後孔に火宮の熱が触れていて、ヌルヌルと蕾を擦る先端に、勝手に腰が揺れた。 あっ、挿れて。挿れて、お願い、火宮さん。 「従順に媚びるおまえも、可愛いものだ」 たまにはいい、という囁きが耳をくすぐった瞬間。 ズンッ、と突き立てられた熱に、チカチカと目の前に星が散った。 あぁっ! 欄干の向こうに、庭園の光が煌めく。 後ろからガシッと腰を持たれ、ガンガンとナカを穿たれる。 乱れた火宮の浴衣の裾がハラハラと腿を擦り、それすら快感となって身を襲う。 「クッ、翼」 あっ、あっ、火宮さっ、刃っ…。 「ハッ、今日、は、一段とよく、締まるッ…」 呼吸を乱す火宮も、感じてくれているんだと思うと、それだけでなんかクる。 あっ、刃、もっと。もっとぉ! 不自由な手で、欄干に縋るようにガシリと掴まり、火宮の律動に合わせて俺も腰を突き出す。 っあぁっ! ズンッ、とタイミングの合った突き上げに、奥の深いところを抉られて、頭が真っ白になるような快感が押し寄せた。 や、っばい…気持ちいい。 「クッ、いいぞ、翼」 あぁ、刃も同じ?一緒に気持ちいい? ほわんと心が温まり、へにゃへにゃと頬が緩んでしまう。 「ッ、翼」 あっ、あっ、激し…。イく、出るッ! 「翼、堕ちろッ…」 羽をもがれて、高い高い頂きから。 それでも下に、両腕を広げた火宮が待っていると俺は知っているから。 「ぶちまけろ」 悪い囁きが聞こえて、シュルリと欄干の帯が解かれた。 あぁぁっ!そんなっ…。 ぐい、と膝裏に差し込まれた手に、両足を開いて身体を抱え上げられたかと思ったら。 こんなっ、だ、めっ…。 だけど。 イ、ッ、くぅ…。 立った火宮の中心と繋がったまま、深く深くを穿たれて、耐えきれずに俺は、月明かりとライトアップされた庭園の光に照らされて、派手に白濁を飛び散らせた。 「クッ…ハッ」 パタパタと、床から欄干からその向こうから。あちこちを汚してしまった羞恥にきゅんとした瞬間、身体の奥で火宮が弾けたのも感じた。 もっ、ばか…。 くたん、と脱力していく身体を、がっしりと抱えてくれる火宮の腕が頼もしい。 浮かんだ暴言は甘く蕩けている自覚があって。火宮の空気もトロトロの蜜みたいに俺を甘く包む。 ーー好き、刃。 コテンと頭を火宮の胸に預けたら、ふわりと優しい声が届いた。 「愛している、翼。…次は寝室だな」 っ…。まだするの? 本当、絶倫だな…。 「掴まってろ」 ま、いっか。 付き合いますよ。 求められるのは嬉しくて、実はまんざらでもなかったりして。 お姫様抱っこで運ばれていく身体が、ゆらゆらと心地よく揺れていた。

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