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対、魔獣

注意! 魔獣を害獣とみなしての、戦闘シーンです。 苦手な方はこの章を飛ばしてください。 大丈夫、なくても話は通じます。 +++++  話し合った作戦の通りに、といいたいところだけど、二頭を引き離すことにちょっとばかり手こずって、何とか小さい方の魔獣を水場近くに追い込んだ。  こっちの魔獣相手にきたのは、サファテとオレと、後方支援二人に騎士団から三人。  当然のようにオレのフォローについているサファテは、両刃の大刀で魔獣の尻尾を切り落とす。 「ルウ!」 「任せろ!」  鋭く聞こえたサファテの声は、オレへの制止だったのかもしれない。  けど、無視して地面を蹴った。  痛みで暴れる魔獣の口から吐き出されてるのは、できたら見間違いだと嬉しいなと思うけど、さっき姿を見失った冒険者仲間の一部のような気がする。  同行していた別のヤツが魔獣に目つぶしを食らわせた。  ィイイイイイガアアアアアア!  耳をつんざくように声をあげ、魔獣はちょうどいい感じに最後尾の足で立ち上がりやがるから、そこめがけて滑りこむ。  オレは昔から抜き胴が得意なんだよ。  竹刀とは違うから、打ち抜くことはできないけどさ。  オレ愛用の浅く反った片刃の刀は、日本刀によく似た形で、突きに使えるように先から少しだけ、薄く両刃に仕立ててある。  立てた刃を突き立てて刀を返して横に向け、踏ん張りをきかせて勢いをつけて薙ぐ。  ぷつり、と手応えがあった。  不思議なことに、手応えって確かにあるんだよなって思う。  力任せで何とかなっちゃってるのか、すごくいい感じにピンポイントで急所とでもいうべきとこをつけたのかっていうのは、何故だかわかるものなんだ。  振り切ると同時に、体を引く。  内側から押される力で、少しも引っかかることなく刀は振りぬけた。  やべ、来る!  傷口の正面からは飛退けたものの、暴れまわる魔獣の腹からは筆舌に尽くしがたいものがまき散らされる。  いや、待って勘弁してくれ。  遠くで後方支援の誰かが嘔吐する音がした。 「ぅアち!」  見たくないし説明もしたくないようなモノと一緒に、降ってきた魔獣の消化液が、オレをやく。  せめての悪あがきで顔をガードしながら、後退する。 「ルウ!」 「いいから、止め! 早く!」  オレの前に出てきたのは騎士団員。  魔獣の足止めをして、止めを刺したように見えた。  息の根を止められたのかどうか確認する間もなく、オレの体がふわりと宙に浮く。 「何?!」 「息を止めておけ」  サファテの声がして、浮いた体が重力に逆らわずに沈み、ざぶんと音がした。  消化液を浴びたオレを、水の中に投げ込んだんだろう。  いや、手っ取り早いし、いい判断ですよ多分。  ただオレ、泳ぎが苦手。  もう少し心の準備させてほしかったなあ……

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