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第14話 高校時代 -7-

岩内はあの後もたびたび、街で士乃がどこにいるか嗅ぎ回っているらしい――お前、変なストーカーに狙われてるぞ?そう友人に忠告されてそれを知った士乃は、彼らの助言に従って居場所を移し、岩内を避けた。 しかし、せっかく馴染んで遊び友達も多くいる街から完全に離れてしまう勇気は士乃には無かったから、避けると言ってもどうにか直接顔を合わせず済んでいる、と言う程度だった。 そうやって逃げ回っていると、岩内は、今度は士乃に色々な形で嫌がらせを仕掛けてくるようになった――ツテでなんとか得たバイト先に悪い噂を流されて続けられなくなった事もあるし、恋人と呼べる安定した関係を持てそうな相手ができかけたのを壊されてしまったこともあった。岩内はどういう手段を使っているのか……士乃に何があったかや、付き合っている相手などを大体把握している。 学生時代に戻ってしまったようだ、と士乃は思った。岩内に見咎められないよう、ボロを出さないよう、息を詰めて生活していたあの頃と同じだ。 相談すれば多分、なにかしら手を打ってくれそうな知り合いも今はいるにはいた。だが、もし士乃が、本気で岩内を追い払おうと行動すれば――きっと後藤を巻き込んでしまうだろう。 結局士乃にできるのは、学生時代のように、不自由な状態に慣れてあきらめることだけだった。だが違うのは、高校生活は3年間で終わりが見えていたが、今の状態はいつまで続くのかが分からない、という点だ。 自分が置かれた状況について考えてしまうと気が塞ぐ――だから士乃は考えるのを止め、くだらない遊びやどうでも良い事で気を紛らわせるよう努めた。 その場のノリで馬鹿なふざけ方をして必要以上にはしゃぐ士乃を、友人たちは、なんにも考えてないおめでたい奴、と評し――そういう士乃と真剣に深く関わろうとする相手が――現れる事はなかった。 士乃は仲間たちに、あけっぴろげで陽気なので一緒にいれば楽しいし、見目はいいが大して頭は良くないのでコンプレックスも刺激されない、そんな風な、お手軽で便利な存在として扱われた。士乃もそういう周りの評価通りの行動をすることに――いつしか慣れきっていた。 そうして――何度目かの恋の相手との関係を、例によって岩内のいやがらせ――以前の恋人との情事の映像を送りつける、というやり方で壊された後――士乃は滝井のモデルになった――

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