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第98話 ネガティブ勇者、おかえり

「…………掴んだ!」  リオの声に、闇の渦が蠢く。  レインズは黒いモヤに突き刺した剣にありったけの魔力を込めた。テオもレインズの魔力が底を尽きないように彼に自身の魔力を送っている。  確実に、二人を連れ戻すために。  渦の中心から強い光が放たれ、黒い塊が浮き上がってきた。  光が消えていくと共に、黒いモヤも消えていく。  その中から現れたのは、ナイをキツく抱きしめるアイン。 「ナイ! アイン!」  レインズは魔法を解き、二人のことを抱きしめた。  リオも二人の無事に安堵し、気を抜いて地面に座り込んだ。 「二人とも、無事でよかった!」 「……ん、レイ?」 「レインズ、様……」 「おかえり、二人とも」  いつもの微笑みとは違う、涙でグチャグチャになった笑顔。  その表情に、二人も涙を浮かべて笑顔で返す。 「ただいま、レイ」  憑き物が落ちたように、ナイの顔は年相応の子供らしい笑顔をしていた。  その笑みに安心したのか、レインズの体から一気に力が抜けて地面に倒れ込んでしまった。 「レ、レイ?」 「レインズ様! 大丈夫ですか!?」  心配する二人を見て、「ガハハ!」とリオがいつもの豪快な笑い声を上げた。 「俺もレインズも力を使い切ってスッカラカンだからな。ま、俺はお前より強いから全然平気だけどな!」 「何を言ってんだ。私だって、これくらい……」 「よく言うぜ! 立てもしないくせによ!」  リオは震える足で立ち上がり、レインズの肩を抱き上げた。  お互いにフラフラだが、とても満ち足りている。この上ない達成感が、笑顔を与えてくれている。  頼もしい二人の背中。  深い闇から救い出してくれた。  道を切り開いてくれた。  ナイは隣に立つアインを見た。ナイの視線に気付いて、笑いかけてくれた。  きっとまた弱い自分は立ち止まって、座り込んで、悪夢に魘されて心を折るかもしれない。  だけど、そんな時に一緒にいてくれる人がいることを知った。  優しさを受け止めていいと知った。  だから、前を向く。  犠牲になったみんなの思いも、全部背負って。  勇者としてこの世界に来て、魔王として消えていった皆の望みを叶えるために。  自由になったこの世界で、大切な人と過ごす。  ただ、その願いのために。 「生きるよ。この世界で、僕の未来を」

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