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第12話

「……ナツ、ナツ? 気付いたの?」  呼び掛けられ、揺さぶられてハッと気づく。 「大丈夫か? ……泣いてる?」  胸を這っていた手が頬を支え不安そうにのぞき込まれて心配される。  あれ、旺実じゃない……。  ぼんやりと考えて、だんだんと状況を思い出した。  そうだ、あれは終わった事じゃないか。今は高校時代じゃないし相手はアイツらじゃない。今は……、金のためにやんないといけないんだった。  完全に覚醒して周りを見回した。  体育館倉庫を模した檻の中。まだ観客たちはなぶるような視線を投げかけている。そして、隣にはアイツでも旺実でもなく、ウミがいた。  ……チッ。ウミが『ナツ』なんて何度も呼ぶから嫌な事思い出したじゃねーか。  あの頃、高校時代は大好きだった旺実と、大嫌いだったアイツらの思い出で占められている。どうせなら旺実の、旺実との幸せだった時を思い出せれば良かったのに『ナツ』と呼んでくれたのは旺実だったのに──。

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