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第19話
甘やかしてくれる腕に満たされる。
俺の身体はいつの間にか体操マットの上に横たえられて、後ろからウミに抱き締められていた。
甘い抱擁に気恥ずかしくなって身じろぎすると「ハッキリしてきた?」と聞かれる。
「……してきた」
──こんな事してていいんだっけ? ハッとして周りを見回す。
「今日はもういいって。終わったよ」
そのウミの言葉通りに檻の外にはもう誰もいないようだ。
「覚えてない?」
「……覚えてない」
「返事はするけど名前読んでもボーっとしてるし、何されても反応鈍いし……、結構心配した」
「マジ? そんなんだった?」
「そんなんだった。座り込んだまま動かないから、最悪ここで寝るつもりで待ってたけど、起きて良かった」
「ごめん」
「俺のせいだろ?」
「そーいや、そうだな。ウミ、マジで容赦なくガンガン突くから……」
「良かった?」
期待と不安の混じった、でも期待の方が勝った表情で聞かれる。
「バーカ! 良くねぇよ。あんなんマジでツライだけだから」
「そうなの? ナツあんなにイってたのに……」
「……俺は、そーゆーの慣れてるからな。普通あんなんじゃイけねーって。自信持つなよ、お前。腰が振れりゃいいってもんじゃねーんだからな」
自嘲しながら不貞腐れる。本当は『名前を呼ばれて感じてた』なんてとてもじゃないけど、恥ずかしくて言えない。
「練習したのに……」
驚いて起き上がりウミを見る。
「練習? 童貞じゃなかったのかよ」
「……あっ」
しまった、という顔にどういうことだと詰め寄る。確かに、童貞にしては動きに淀みがなかった。と言っても、動けてたというだけだが。そう言えば、客に見せつけるような事もしてたな。
童貞だからと無茶な動きでも多目に見てやったのに。
「……あの、えっと……」
しどろもどろになりながらウミがその場に正座する。……説教してる体育教師じゃないんですけど?
「往生際悪いな、さっさと吐けよ。……もしかして、挿れたことないだけでただの素人童貞じゃねぇよな?」
だったら詐欺だ。
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