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第20話

「ある意味、それで正解っていうか……。ドールが……」 「あ? ドール?」 「えっと、俺二次元アイドルが好きで……」 「は?」  そこまで言ったらウミの中で何かが吹っ切れたのか、勢い良く説明を始めた。 「俺、実は二次元アイドル『ゆめフェス』の『なつにゃん』のファンで、そのなつにゃんの等身大ドールがあって、あの……ラブドールなんだけど、その、なつにゃんと練習したっていうか……」 「あ? なつにゃん?」  だけど、俺にはちっとも意味がわからない。 「あの、ドールのなつにゃんと練習を……」 「ドールと……、ってダッチワイフかよ!」 「なつにゃんとダッチワイフは違う!」 「人形とヤってたんじゃねーの?」 「……そう、なんだけど……、なつにゃんはダッチワイフじゃない! ラブドールだから!」 「何が違うんだよ。要はヤレる人形だろ」 「そうだけど、そうじゃなくて……」 「あー、わかった、わかった。なつにゃんのラブドールと練習してたから腰振れたってことだな」  はぁ……。でかいため息が出た。  ……何か言ってやりたくて、でも何も言えず黙る。二次元アイドルのダッチワイフとか、異次元過ぎる。 「違うんだよ、なつにゃんはドールだけどドールじゃなくて、ちゃんと肌触りも人間みたいに柔らかくて、小っちゃいなつにゃんからお姉さんなつにゃんまで成長過程もちゃんとあって、日焼けしたりとか……」 「おい、ちょっと待て。それ、なつにゃん? そいつすげえ高いんじゃねーの?」 「え?」 「一体で大きさ変わるとか無理だよな?」 「それが、なつにゃんはオプションで髪型どころか、おっぱいの大きさも、肌色も選べるんです。なので、小っちゃいなつにゃんから、お姉さんまでカスタム可能で、さらに……アソコや後ろ、口のオプションまで選べるんです! それも全部拘りぬいた……」 「ちょっと、待て」  勢いで営業口調になりまだ語りたいと唸るウミを黙らせる。 「ウミ、まさかお前……、借金の原因ソレじゃねーだろうな?」 「え? あ……、えっと……」  目を逸らして挙動不審になるウミを見て、頭が痛くなる。  高価なダッチワイフをいくつも買って、ヤリまくってて金作れなくてこんな所まで連れて来られてこんな事して……。 「マジか……。俺とこんなんしてるんだから多分バカなんだろうとは思ったけど……思った以上にバカだったんだな……。しかも、何回も名前呼ぶと思ったら……」  まさかのなつにゃん被りかよ……。そこは、情けなさ過ぎて言葉にもできない。俺は俺で『ウミ』の名前に旺実を重ねてた。叶わない恋の相手をお互いに重ねて盛り上がってるなんて……、  ホント、バカにも程がある。

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