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第21話
大きな身体を縮めて俺の様子を伺うウミに、俺はもう一つの疑問をぶつける。
「で、セックスの時の強気なのと今と、どっちが本当のウミ?」
「……さっきのは『なつにゃんがオークションに掛けられるなら』っていうイケメンモブの設定です……」
──ダメだこいつ、徹底的に残念なヤツだ……。
「つまり、今が素なんだな」
だけど……と、ウミのキスを思い出す。柔らかくて優しいキスだった。きっと、本質は優しいヤツなんだろうと思う。
……こんな事思うなんて、俺、チョロすぎか?
「ナツは、どうして借金なんて?」
「あー、俺はどうしてって程の理由なんてねーよ。最初は教習所の金とか、生活費とか……、それ使って遊んでまた借りて返してってしてたら、いつの間にか200万だったんだよ。大して遊んだ覚えもないのに」
コワイコワイと茶化して言う。
「……その金があったら、一体何人のなつにゃんが……」
「なつにゃんから離れろ! 遊んだのなんて、ほんのちょっとだからな! まだやってなかったけど、働くつもりだったし……風俗とかさ……ちょっとは需要ありそうじゃん?」
「なつにゃんが風俗で働くなんてダメだよ!」
「なつにゃんじゃねーよ!! 混同すんな!」
「あっ……ごめん。つい……。最初からエロいシナリオ展開!? って思ってたんだけど『ナツ』って名乗られた時に、本物キタ! って興奮しちゃって……。決してナツをなつにゃんだと思ってたわけではなくて、神様からのプレゼントっていうか、俺のなつにゃんはナツっていうか……」
「ウミ、キモい……。お前の言ってること、ほとんどわかんない……」
「とにかく、ナツをなつにゃんだと思ってるわけじゃないから! 今のはなつにゃんの話した後だったからつい……。ごめん。でも、ナツ慣れてるって言ってたし、見られるのも慣れてるみたいだったし……、なんで、って聞いてもいいのかな?」
最後は遠慮がちに問われた。遠慮なんてしなくていいのに。
……どうしよう。今まで誰にも言ったことは無かったけど、旺実もアイツも、俺のこともなにも知らないウミになら、言ってもいいかもしれない。
それに、話をしたら俺の気持ちも何か変わるかもしれない──。そんな期待を込めて、口を開く。
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