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第22話

「……高校の時に彼氏がいてさ、付き合ってたんだけど、つい外で盛り上がってやっちゃったの盗撮されて……、脅されたんだよ。それ、脅してきたやつがちょっとタチの悪いチームの頭で、すげー変態趣味野郎で、見られてないと興奮しねーし、他人のもの寝取るのが好きだし、そのうえ他のに寝取らせんのが好きで……、ちょっと最悪な経験しただけ」 「……その、彼氏とは?」 「卒業の時に別れたよ。俺なんかと付き合っててもいいことねーもん。今、普通の大学生やってんじゃね?」  もう平気だ、と笑おうとしたのにポロリと涙がこぼれる。 「なんで……」 「俺はロクな育ちじゃなかったし、バカだったし……。でも旺実は違ったからな。普通のやつでいい家に住んでたし、大学も決まってたし。俺は変態のおかげで変な目で見るやつも増えて来てたから、ちょうど良かったんだ。あれで、良かったんだよ」  そう笑ったけれど、未練がポロポロと涙になって溢れる。  ウミが、遠慮がちに抱き締めてくる。 「ナツ……泣かないでよ……」  そうは言っても、勝手に溢れる涙は止まらない。 「彼氏のこと、好きだったんだね、なのに……。ナツはえらいね」  子どもみたいな拙い言葉に慰められて子供みたいに泣きじゃくる。 『夏樹が《なつ》なら、俺は旺実で《うみ》だね。《なつ》と《うみ》で相性いいじゃん』そう言って、二人の時は《なつ》と呼んでくれた。セックスの時に何度も名前を呼ばれて抱き締められたら、それだけで天国にいるみたいに幸せだった。  あの変態に脅されて無茶苦茶にされた後も、旺実と別れたら「旺実のことも写真ごとバラす」と言うから、何でもないふりして旺実と付き合った。変態は旺実とシタ後の俺をヤルのが好きで、いつも夜中に呼び出されてチームのやつらの前でヤラレて、そのあとそいつらにもヤラレた。だけど、絶対にやつらは俺に痕跡を残さない。  そのおかげで気付かない旺実とセックスする度に、幸せで、幸せで、どんどん旺実とのセックスに溺れて行って、俺はどんどんそればかりになって…… 『なつ、セックス以外のこともしよう?』  困った顔でそう言われて、それでもねだった。俺が旺実とのセックスに溺れる程、旺実は困っていって……最後は、ただ困った旺実を見るのが辛くて別れたんだ。  あの日、最後の日に旺実は勃たなかった。何をしても勃たない旺実が『ごめんね』と頭を撫でた。俺は『勃たないならいいや』と言って、その場で変態に電話して変態の元に行った。  それが最後だった。来ていた連絡も無視し続け、旺実が進学の為に地元を離れると自然と減って行った。  旺実にとって、俺は忘れたい過去でしかない。そうするのが最善だと思ってしたけど、旺実の中に《なつ》は残らない……。  それが寂しかったんだと、初めて気づく。

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