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第10話

昴は無事に家に帰っただろうか、すぐ風呂に入って暖かくしただろうか、そんな事を考えているうちに退勤の時刻になった。    その日は久しぶりの中番で、松木は九時に退勤するとレンタルコーナーに足を運んだ。迷いなく、アダルトコーナーの十八禁の暖簾 のれんを潜る。 (お、この子可愛い)  面陳列されているパッケージが目に入り、手に取ってみる。黒髪のショートカットの女優が指を咥えてこちらを誘っている。胸は小さいが好みのタイプだ。あと二枚は適当に選び、アダルトコーナーを出た。新作の洋画を二枚追加で借り、レジへと向かった。 「はい、宜しく」  カウンターにDVDを置くと、女性スタッフの富田が顔を上げた。もう十年も働いている、ベテランのスタッフだ。年は確かアラフォーだと聞いた。 「ぬるっとアダルト借りてくのやめてよー」 「明日休みだからよ、観賞会だ」 「あたしだからいいけど、他の若い子じゃ、セクハラって騒がれるから」 「へいへい」  松木は適当な返事を返す。 (よく言うぜ。アダルトのマスターバックもアダルトの中古作りも平然とやる連中のくせに)  この店舗は、男性スタッフが自分と店長、大学生のバイトのたった三人しかいない。なので、必然的にアダルトのマスターバックを女性スタッフがやるハメになる。最初こそ文句を垂れていたが、今では素知らぬ顔であの十八禁の暖簾を潜るのだ。  アパートに帰り、コンビニ弁当を食べ一緒に買ったビールとつまみをテーブルに用意する。レコーダーにDVDをセットし、ソファに腰を下ろした。隣人に音が漏れないよう、ヘッドフォンを装着し再生ボタンを押す。  確かオフィスもので、上司に犯される設定だった気がする。  白シャツに短いタイトスカート姿の女が、上司の男と絡み始める。お硬いOLキャラ設定なのか、女は恥ずかしそうな上目遣いで、こちらに視線を送っている。  それがアップになった瞬間、  ドクンッ!  松木の心臓が大きくなった。  どこかで見たような場面だと思った。  今日の大雨で店に避難してきた昴。上目遣いで自分を見つめてきた昴と、上目遣いで奉仕をしている女優の姿が完全に一致してしまったのだ。短いショートカットの髪と涼しげな切れ長の目元が似ている気がする。  一度女優が昴に似ていると認識してまうと、女優が昴にしか見えなくなってしまう。  ダメだ……ダメだ……!!  そう思うも、女優が着ている白シャツは今日見た昴の制服のシャツを、そして透けた乳首を思い出せた。  その瞬間、松木は自分の汚れた右手を呆然と眺めた。 「やっちまった……」  AV女優と昴を重ね完全に昴で抜いてしまった事と賢者タイムも相まって、松木は酷い罪悪感に陥る。  女子高生ならまだしも、同性である昴とAV女優が被るなんて、自分はどうかしてしまったのだろうか……。  その時、携帯からメッセージを告げる音がした。  昴からだった。 『まっつん、今日はありがとう♡おやすみ♡』  可愛いスタンプも添えられていて、無邪気な昴の顔が浮かぶ。ハートなんて高校生にしてみたら深い意味などなく、装飾の一つの感覚なのだろう。しかし、相手によってはこんな事でも期待してしまう輩もいるのではないかと心配になる。 「そんな安易にハートとか使っちゃダメ!」  いない相手に突っ込みを入れても声は届きはしない。  今日のショタコンおやじと今の自分は変わりないのではないか、そう思うと更に凹んだ。 (すまん、昴……俺は汚れたおっさんだ……)    罪悪感に苛まれつつも、その後そのアダルトDVDをもう一度見てしまった。  休みは終始ダラダラと過ごし、結局、例のアダルトDVDを封印した。また、昴と重ねてしまいそうで、休み明けに早々返却してしまった。

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