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「え、もういいの」
最大限にエアコンを効かせているのにひどく暑い。悠介の部屋のベッドの上で、悠介はTシャツ一枚、透に至っては一糸まとわぬ姿だった。
予想していたよりもはるかに細く華奢な体はどこもかしこも白くて綺麗で、ただ見ているだけで激しく劣情を煽る。だというのに今透は、うつ伏せになり、腰を高く上げた状態で悠介に背を向けていた。つまり、大事なところが全て丸見えの状態である。
「うん、大丈夫。早くほしい……」
知らなかった。あんなに抜けていて、繊細で、控えめで、大人しい透が。こういうときは、こんなにも大胆だなんて。
悠介はコクリと生唾を呑み込み、痩せた透の体で唯一柔らかそうな尻朶を両手でそっと掴む。悠介の唾液で濡れた手で透が自ら解したそこは、しっとりと濡れている。そして酸素を求める魚のようにはくはくと苦し気に開閉し、歓喜のときを今か今かと待っているかのように見える。
初めてなのにうまくできるかなとか。本当に痛くないのだろうかとか。透が受け入れるほうで良かったとか。色々なことがよぎったが、横向きにした顔を枕に伏せた透が言った一言で全てが弾け飛んだ。
「悠介くんが、ほしい」
「……っ!」
痛いほどに張りつめた己の欲望を、その小さな入り口にねじ込む。「ああっ」と声を上げて、しなるその背が眩しい。湿った内壁が締め付けてくる。狭い。そして、ひたすらに熱い。
「と、おる、さん……っ」
押し返してくる襞をかき分けて、ぐいぐいと奥へ進んでいく。腰が止まらない。震える透の手を上から両方とも握りしめて、そのきつさに耐える。根本まで全て埋まり切ったときには、二人とも情けないほど息が上がっていた。
「入、った……」
「うん、うん……」
繋がっている。愛おしい人の体の中に、今、自分の一部がある。その歓喜は何よりも大きな快感となって悠介の胸に押し寄せた。
「透さん、好き、大好きです……っ」
うわ言のように繰り返しながら、ゆっくりと己のそれを抜き差しする。行き来するたびに透は小さく声を上げた。中が熱くてたまらない。手も頬もいつも冷たい透なのに、こんなにも熱い部分があったなんてと驚くばかりだ。
「あ、ん、ぁっ、悠介、くん、ああっ、もっと、速くて、も、いいよ」
透の体の熱さにも、濡れた内壁の心地よさにも、そして貪欲に求めてくる透の大胆さにも、全てに頭がついていかない。夢でも見ているのかとすら思えるが、下半身に伝わってくる確かな熱と快感は現実だ。
悠介は透の白い背に覆いかぶさると、ぴったりと胸と背中を合わせる。透の汗が、悠介の白いTシャツに沁みてくる。ふたつの心臓の音が重なる。シーツを握りしめる両手を上から包み込んで、真っ赤な耳元に顔を寄せた。透を己の体の下に閉じ込めたような姿勢だ。
「透さん。重い?」
「だ、いじょうぶ、んっ、あっ」
透を全て自分で満たす。そんなつもりで、どこもかしこも肌をしっかり寄せ合って、己の欲望を突き上げた。
こんなにも全身で透を感じているのに、まだ足りないと飢えている自分を、悠介はどこかで感じていた。自分にこんなに貪欲な部分があったとは知らなかった。勉強にも。野球にも。友人にも。女の子にも。興味がないというほどではないが、熱くなることができなかった。なのに今、透というひとりの人にこんなにも心を狂わされている。そのことが怖くもあり、嬉しくもある。
「透さん、透さん……っ」
「ふ、あ、悠介くん、すき、好きい……っ」
熱に浮かされた透がぽろりとこぼしたその言葉を、悠介は聞き逃しはしなかった。それは確かに、初めて透から向けられた明確な意思だった。恐らく透自身は己がそれを口にしたことに気づいていないだろう。
胸がいっぱいになる。体が軽くなる。何もかも奪いたいという気持ちと、何もかも守りたいという気持ちが同時に存在している。
人を好きになるとはこういうことなのか。悠介は、自分の中にはじめて芽生えたその感情を、じっくりと噛み締めた。
だが肉体のほうはそう穏やかに待ってはくれない。突き上げている悠介も、突き上げられている透も、限界が近かった。透の内部にあるそこが直接拾う刺激と、断続的に上がる透の艶を含んだ声と、汗でしっとりと濡れて揺れる黒髪や、眩しいほどに白い肌や、二人分の息遣いや。視覚、聴覚、全ての感覚から悠介は余すところなく快感を拾った。何もかもが愛おしい。何もかもがいやらしい。経験の薄い悠介には何もかもがあまりにも毒で、長持ちはしなかった。
「は、ああっ、悠介、くん、いく、いくの?」
「うん、透さん、俺、もう……っ」
「ふふ、ッ、いいよ、いって、僕も……」
透の両手を握っていた手を片方外し、自分の体の下で揺れているその芯を握りこむ。先走りの涙ですっかり濡れそぼったそれは、可哀相なほどに硬く腫れあがっていた。
「そこだめ、すぐいっちゃう、ああっ」
「いって、俺の手の中でいって……」
水音が激しさを増す。それが、悠介が突き上げるそこから生まれたものなのか、それとも悠介の手の中のそれが発しているものなのか、もはや分からない。灼熱の嵐のような熱と快感に飲み込まれ、悠介は透の体内に欲を放った。
「とおる、さ……ッ」
「あッ、あ、ああ……っ」
その瞬間、より一層深く突き上げてやれば、透もまた体をビクビクと大きく痙攣させて、達した。手のひらを汚す白濁は本来であれば汚いものであるはずなのに、それすら愛おしく思えてくるから重症だ。絶頂の快感から何度も小さな痙攣と収縮を繰り返す襞を十分堪能したあと、ゆっくりと引き抜く。
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