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初めて会ったのは

 慎弥が須藤のことを知ったのは、仕事を通じてのことだった。慎弥が所属する文化スポーツ振興課では、地元の人たちに文化やスポーツに慣れ親しんでもらうために、週末を利用して様々なイベントを企画することがある。その企画の中に、プロのバスケットボール選手に地元の小学生たちへバスケットボールを教えてもらおうという主旨のものがあった。  そこで、地元の実業団チームへと依頼を出したところ快諾してもらえたのだが、須藤はそのチームに所属する選手だったのだ。  慎弥はその企画のリーダーを任され、責任者である課長のサポート役として色々とアレンジしてきた。そんな中、打ち合わせのために実業団チームのもとへ何度か足を運んでいたのだが、須藤と初めて会ったのはその最初の打ち合わせのときだった。  課長と共にコーチへと挨拶をして、少し談笑した後、練習見ます?と言われてトレーニングが行われている会社所有の体育館へと案内された。  その際、コーチが冗談まじりに須藤のことを口にした。 『先に言っておきますけど、うちのエースに須藤っていうやつがいるんですが、こいつ本当に人見知りが激しいんです。たぶん初対面だとほとんど話さないとは思いますけど、悪いやつではないので』  慎弥は実業団のバスケットボールチームについては全く知識がなかったのだが、この仕事を任されたのを機に一通りは勉強していた。  以前、国内のバスケットボールチームは実業団チームとプロチームに分かれていたが、数年前に統一され、現在ではBリーグという1つの場で試合が行われている。サッカーでいう、Jリーグみたいなものだった。Bリーグの発足でバスケットボールの認知度も上がり、ファンも増えてきたらしいが、まだまだJリーグ並みの人気とは言えない状況にある。  そんな中、このチームがリーグの中でも強豪チームの1つであること、その代表選手が須藤であることを知った。男女問わず人気が高いことも。なので、須藤、という名前については一応認識があったが。  人見知りなのか。  チームのホームページにある選手紹介の写真は見た。確かに、女の子が騒ぎそうなルックスだった。じっと睨むように写真に写るその姿に、人見知りというか、根暗な部分がありそうな感じがしないでもなかった。

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