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ホームルームが終わり、帰り支度をして廊下に出ると、奥から2組の担任が小走りにやってくるのが見える。
俺としてはこのまま回れ右をしたいが、一応相手は教師なので踏みとどまった。
「せんせー、廊下は走ったらダメだろ」
「すまん山本…!田辺のプリント溜まってるんだが、今から会議なんだ、行ってもらえるか?いつも本当に悪い」
「渡しとくよ。つってもポストに突っ込むだけだけど」
「充分だよ。毎回家にいく時間ないしな、来週のテストも作らなきゃだし…今日も残業だ」
哀愁漂う目の前の大人に俺はどういう言葉をかけたらよかったんだろう。
「彼女いるんだろ?慰めてもらえよ」
「忙しすぎて浮気された」
「ウケる」
ガックリ肩を落として去っていくアラサーの後ろ姿は、教師というブラック企業の過酷さを如実に表していた。
ポケットに適当に折って突っ込んでいた紙を取り出す。結局、第一希望に進学と書いただけだった。
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