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校長室にある革張りのソファーは沈みが悪くて十分以上座っていると腰が痛みを訴えてくる。
上にずらりと並んだ歴代の校長達が額を隔てて一斉に俺を見下ろしていた。
目の前にはきっちりとスーツを着た男が手を組んで開いた両膝に肘をおき、下から覗き込むように俺を見つめている。
その横にはまたスーツ姿の小太りの中年男性が、腕組みをして探るような温度のない目を俺に向けていた。
俺は状況が飲み込めないまま、同じ言葉を繰り返す。
「何を、言ってるのかよく…」
慣れているのか、理解力のない目の前の子供に言い聞かせるように、もう一度同じ内容を告げた。
「ご友人の田辺誠くんですが、沢口愛実さんという大学生のマンションの下で遺体として発見されました。」
「遺体…」
繰り返しても、脳が言葉をうまく処理できない。
「彼とは幼少からの馴染みだと先生方から聞きました。素行はあまり良くなかったそうですね」
「いえ…それは一年前からで…、それまでは真面目な奴で…」
「立派なご両親で本人も勉強熱心だったとか、ストレスですかね。珍しくないですよ、裕福な家庭に起きがちなことです」
「…彼女の部屋で何があったんですか」
そう冷静に問う自分が、信じられなかった。
男は一瞬、情報を開示するか躊躇う素振りを見せた。
隣の男に目配せをして、ついに口を開く。
「ーー沢口愛実の部屋から薬物が見つかりました。
一般の学生の手に渡ったのが信じられないほど、強い幻覚と依存性が生じるものです。
田辺誠の遺体からも反応があったことから、昨日も二人で使用していたと推測しています。」
ー沢口愛実の証言によると、昨日部屋に訪れた田辺に誘われて、好奇心で吸ってしまった。意識が朦朧とするなかで性行をしていたが、終わった後、喫煙の為に田辺はベランダに出ていった。突然外から発狂する声が聞こえて、窓を見ると田辺の姿は無く、下を覗くと地面に頭から血を流して死んでいた。ーー
「売人が特定できていないのが厄介でして、どこの組織から流れているのか拠点を探るためにも、田辺の交遊関係について我々も調べる必要があります」
周りの音が遠ざかっていく。
脳裏に浮かぶのはーーいつかのあいつの笑顔だった。
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