15 / 19

・・

都心のタワーマンションでは夜の喧騒も関係なく、カーテンを締め切った暗闇のなか、まるでここだけ切り取られた世界の様に静寂が広がっていた。 酷い胸の痛みによろけながら手探りで寝室に入りこみ、ベッドに身を投げた。 大きなシーツの海で震える己の身体を強く抱き締める。 寒くて凍えそうなのに、もう、動けそうにない。 目頭が熱くなっていく。なのに一滴も、涙を出すことは叶わなかった。 深い暗闇の中、瞼を閉じる。 「…佐藤さん」 情けなく震えた、微かな声だった。

ともだちにシェアしよう!