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都心のタワーマンションでは夜の喧騒も関係なく、カーテンを締め切った暗闇のなか、まるでここだけ切り取られた世界の様に静寂が広がっていた。
酷い胸の痛みによろけながら手探りで寝室に入りこみ、ベッドに身を投げた。
大きなシーツの海で震える己の身体を強く抱き締める。
寒くて凍えそうなのに、もう、動けそうにない。
目頭が熱くなっていく。なのに一滴も、涙を出すことは叶わなかった。
深い暗闇の中、瞼を閉じる。
「…佐藤さん」
情けなく震えた、微かな声だった。
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