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第3話

 中世の貴族の息女の部屋を覗き見た。  と言う感想……だな。一時間もの間、宝石君は何をすることもなく、アンティーク調の部屋で本を読んだり、窓辺で外を眺めたり、髪を梳いたりして過ごした……だけだ。事前に彼のチャンネルは視聴して解ってはいたが、これで億? 億を稼いじゃうんだよなーー金のことばっか言ってなんですが! 今の世の中の経済構造におじさん頭がついて行かないわーー撮影が終わると、またあの衣装部屋に戻り元の宝石君に戻してもらっていた。 「お腹空いてない?」  そう言えばもう3時過ぎだな。考えてなかったが外食すべきなのかな? しかし取材が途切れるのは惜しい。今日は取材終わりまで食べなくてもいいか。 「作ってもらうから一緒に食べれば?」 「食事も取材していいですか?」 「いいよーー」 「では、お言葉に甘えます」  カメラを回しながらインタビューして食事するのは流石に無理だな。宝石君が映るようにダイニングテーブルにカメラを固定して準備した。  シェフもお抱えかな? 背の高い女性シェフが小鳥のエサみたいなプレートを宝石君の目の前に置いた。体が小さいからと言ってもだいぶ小食だな。サイコロ状のローストビーフとサラダとパンがちんまりと皿にもられていた。俺の前に置かれたプレートは普通サイズだ。 「あまり食べないんですね?」 「あんまり動かないからね」 「ありきたりですが、好きなものとか、嫌いなものはありますか?」 「ほんとつまんない。好きなのは僕のことを好きな人。嫌いなのは僕のことを嫌いな人」  宝石君は不満そうな顔をして話をはぐらかした。 「あなたを好きな人はあなたのことを、どんな些細なことでも知りたいんです。何を食べたら幸福な顔を見せてくれるのか、何を食べたら不機嫌になるのか」 「やっぱり、おにーさん面白いねーー好きなのはねー生クリームとマカロン。嫌いなのは苦いもの」  絶対嘘だろう。対外用の設定だな。 「食事の後は何をするんですか?」 「んーー今日は、キャラクター商品の打ち合わせがあるって聞いてる。その後はテレビ取材。だったかな?」  宝石君が横を見るとマネージャー(多分)が頷いた。 「そちらは外した方が良いですか?」 「別にいいよーー発売前の商品とかはNGかもだけど。あとで画面から削って貰えばいいんじゃない?」 「では取材させていただきます」  どうしてこんなに取材に協力的なんだろう……? こちらには利益しかないが、宝石君サイドには特段利益はないはずだ。雑誌にしても、もっとティーン向けとか、女性向けの方が広告効果はあるだろうし、オファーも多いはずなのに。  まあ、もちろんどんな思惑があるにせよこの機会を逃すバカはないけどな……。

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