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第6話
2日目の取材は10時から1本目の動画撮影。もうルーティーンになってるんだな。
宝石君はスタイリングしてもらうと、すでに世界観が設定されている部屋に入った。ご本人の指示か専属スタッフがいるのかわからないが毎日2回の動画撮影用に家具や小道具などが設置され常にスムーズに撮影ができるようにスタッフが動いている。
しかし……昨日は早く寝たはずだが、どうにも体が怠い。風邪でもひいたんだろうか? 明日の取材終了までは、なんとしても持たせないと。
宝石君は今日はネコになってた。耳と尻尾をつけ胸元には大きな鈴をつけている。薄茶色の瞳が本当にネコのそれみたいですごく似合っていた。金持ちに飼われている、お高い血統書付きの白猫だな。豪華な部屋で優雅にゴロゴロ部屋で過ごして、たまにカメラ目線を送っていた。ふいに宝石君がこちらを見て笑った……気がした。すごい意味ありげで妖艶で、思わずドキリとしてしまった。やばい、ずっと見ているうちに、俺も信者になりつつあるのかも……。
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お次は雑誌社の取材。女性誌かと思いきや、経済誌。【副業】特集だそうだ。俺みたいに簡単に億稼いでる。って思ってる読者に夢を見せるんだろうなーー。
今日も女性記者。これはもう完全に確定だな。
宝石君を見て『かわいー! かわいー!』を連発してる。昨日のキャラクター会社のねーちゃんより全然チャラいな。経済誌だろ? 雑誌大丈夫か? 内容も超絶。薄っぺらい。
Q「200万人登録までに苦労したことってありますか?」
A「何もないよ。運が良かったんだ。見てくれる人みんな優しいから」
Q「これからスファレライトさんみたいになりたい人に何か一言!」
A「みんな僕なんかより魅力的だから大丈夫! 有名になって僕とコラボしてね」
うわーー嘘くせーー!! やれるもんならやってみな。ってかましてるようにしか聞こえない。しかし彼女たちは宝石君の純粋さ(ぜってー嘘)に超感激して甲高い声をあげている。そして女子高のような雰囲気のまま取材終了。
変なおじさんなんでいるの? みたいな冷たい視線を向けつつ彼女たちは帰っていった。あーーやかましかった。
あとの予定は未定だと言っていた。14時だし、宝石君はこれから食事かな?
「時間空いたから取材する?」
考えていると宝石君が声をかけてきた。
「いいんですか?」
「いいよーー密着明日の昼までだし。時間ないでしょ?」
「ありがとうございます!」
やった! 漫然と取材してたけど、どうまとめるか、考えあぐねていたところだったから、少しでも撮れ高があると助かる。
「ご飯食べながらにしよーー」
言うと、宝石君は本物のネコのようにソファーからふわりと飛び降りた。
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また葉っぱ食ってる。いくら動かないからってあんなんで栄養足りるんだろうか……。
俺に出されたランチはサーモンサンド(多分)上品過ぎて食いにくいが、サーモンや香草、チーズらしきものが塊になったパテがスッゲーうまい!
「これからの夢はなんですか?」
思わず気を取られて取材を忘れそうになり、フォークを置いた。
「夢? 事業計画かな?」
他の取材のときはあんなにチャラいのになんで俺には自分のリアルな面を見せてくるんだろう? 素顔も、性格も他のメディアには徹底して隠しているのに。しかも取材内容の口止めもしないしNGも出さない。
「じゃあ、あなたの夢はなに? 一生こんなくだらない取材続けるの?」
自分への取材をくだらない。とは驚いた。ご本人が一番今の状況を茶番だと思っていると言うことか。
「俺のことより、スファレライトさんの夢が聞きたいです」
「取材料だと思って答えてよ。こんなチャラチャラした年下の男に媚び売って取材するために記者になったの?」
なんでそんな質問をしてくるんだ? つまらない仕事を続けて大した金を稼げていない大人を追い詰めて見下したいのだろうか?
「仕事は楽しいですよ。それにあなたをチャラチャラしてるなんて思っていません。昨日からの取材だけでも大変な仕事なんだってわかりましたから」
「ふーーん」
ジッと見つめる綺麗な茶色の瞳に全てを見透かされているような気がする。
「あーーーーそう! 取材おしまい! 昼寝する!」
言うと宝石君は食事を中断して部屋から出て行ってしまった。
はあ? こっちは何にも取材出来てねーし! 気まぐれで我儘でコスプレなんかしなくてもほんとネコみたいだな!!
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