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第9話
快適生活。さようならだな。荷物を一通りまとめて部屋を出ると、宝石君がいると言う部屋に案内された。
「このたびは密着取材をお受けいただきありがとうございました。編集長の神松からもくれぐれも感謝を伝えるように申しつかっております。今回の取材内容はゲラが上がり次第お送りさせていただきます。また動画配信記事についても合わせて映像を送らせていただきますのでご確認頂ければです」
「だーかーらーー固いよーー子供相手になに言ってんの?」
「これだけは言わせていただかないと」
「ふーーん。3日間お疲れ様。お土産あげる」
宝石君は何かを机の上で滑らせてこっちによこした。USBメモリ? 何か秘蔵映像でも入ってるのかな?
「これと同じの入ってるから」
言うと宝石君は手元のタブレットをこちらに向けた。
……? 映画? いやAV映像か? 暗くてよくわからないが、やっている映像だな? なんでそんなもの?
いや! 映っているのは宝石君だ!
しかも多分相手は男だ。上に乗って揺れている姿が映っている。
「わかんないの? 鈍いねーー?」
え、なにが? ちょっと色々ショッキングで、おじさん頭が混乱中なんだけど。
あ、もしかしてドッキリか! 俺が慌てる様子を晒す動画撮ってんのか?
キョロキョロと周りを見回して隠しカメラを探す。
宝石君は近くまで来るとタブレットを俺の目の前に差し出した。
え……? うそ……! 相手の男……?
俺だーーーー!!!!
えええ? どう言うことだ?
ちょ……ちょっと待って! ちょっと待って!
いやダメだ整理なんかつくか!!!
「どういうことだ!!!」
「ひどーい! 覚えてないの? もて遊ばれちゃったかなーー」
茶化すような口調。これはもしかして……。
「何か盛ったな?」
長時間の爆睡。体のだるさ。原因はこれかーー!!
「結構、楽しそうだったけどなーー」
「お前、童貞だって言ってたくせ!」
「童貞だよ。やられたことしかないもの」
「ヘリクツ言うな! 童貞の定義なんぞはどうでもいい!」
「これ記念にあげるね。ちなみに僕15歳だから、どんな弁明しても完全アウトだよ」
(ギャーーーー!!!!)
「お疲れ様。取材結果楽しみにしてるねー」
漫画だったら多分俺は今一瞬で白髪になってる。そのまま、スタッフの姉ちゃんに促されて、マンションから追い出された。
・・・・*・・・・*・・・・*・・・・
タダより高いものはない。とは本当に真理だ! 金言だ! 御神託だ! 魂に刻み込めだ! いや刺青で額に彫り込んでもいい位だ!
何を企んでいるんだろうか? 多分弱みを握って俺に何かやらせたいことがあるのだろう。 しかし絶対に犯罪まがいのことは出来ない。宝石君の要求がそうった類のものであれば自首するしかないだろうな……。
未成年相手(しかも男)の淫行で捕まるのか……俺の人生終わったな。まあまあ真面目に生きて来たのに、神様のイジワル。アパートの窓から見える満月が目に染みる。そんなに強い方じゃないのに、飲んでも飲んでも、ちっとも酔えなかった。
「チキショーーーー!!!!」
思わず立ち上がると部屋の景色がぐるぐるしてひっくりかえってしまった。飲み始めてから5時間、流石に回ってるか。大の字になって6畳一間のしょぼい天井を見上げる。泣きそう……。
いや、どーーせ捕まるなら、めいいっぱい撮れ高を残してやる!!!! 手がかりは沢山ある。大人を舐めやがって! ただで落ちていくと思うなよ。お礼にお前の素性はがっつり暴かせてもらう!
会社には今回の取材をまとめるためだと言って休みを取り家に引きこもって調査を進めた。
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