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第21話 ※R18

 仕事を定時に終え、流石に連日コンビニ弁当じゃなんだろう。とデパ地下で弁当や惣菜を買い込んで宝石君のマンションに向かった。作ってやれれば一番いいんだろうけど、料理なんてツマミくらいしか作れないしな。薬局にも寄ってスキンとローションとマウスウォッシュも買った。いや! 断じてやろうと思ってる訳ではない! でも万一そうなった時のためだ。タバコ臭いらしいし、昨夜宝石君があまりにも辛そうだったから。   「どうぞーー」    エントランスで部屋番号を押すと、宝石君の声がして厳重な三重のオートロックのドアが開いて、今回もあっさり中に入れてくれた。エレベーターは一組しか乗せない仕様で表側には階表示のボタンもなく、知らなければ壁にしか見えない。細部までセキュリティに配慮されている高級マンション。ここにいれば宝石君に危害が及ぶことはないだろうな。   「昨日のご飯美味しかった。結構食べちゃったよ」    コンビニ飯、食べたことなかったんだな。気に入ってくれたんならいいけど。俺のせいで、太らせたらファンから殺されそうだ。   「今日はデパ地下で買ってきた」    宝石君は、机に置いた袋をごそごそ覗くと焼き鳥を取り出して美味しそうに食べている。似合わねーな。似合わなすぎて今までこーゆーの食べさせてもらえなかったんだろうな。   「お前毎日何やってるんだ?」   「別に何もしてないかなーー外には出れないし、誰も来ないから」    俺が来てなかったらライフラインどうしてたんだよ?  あぶなっかしーーな。   「ちょっと話していいか?」   「今話してるじゃない?」   「真面目な話だ。俺は今お前にとって酷いことをしている自覚はあるんだ。だけどどうか許してやってくれないか? 憎しみは何も生み出さない。それどころかどんどん周りを不幸にする。お前にとって憎むべき相手だけじゃない。罪のない、その家族や周りの人間にも波及する。難しいとは思うが、お前が然るべき法的処置をとりたいなら協力する。だから……」    宝石君が薄く笑う。  しかしまったく笑ってはいない。瞳の奥にゆらゆらとした怒りが見えた。 「あの時に僕は死んだんだよ。だからもうなんにも我慢しないって決めたんだ。難しい話も、誰かに指図されるのもうんざり。僕はやりたいことだけするし、その結果誰がどうなろうと知ったことじゃない」    そう……だろうな。被害者である宝石君だけに自制を求めるなんて都合が良すぎる。   「ねえ。セックスしようよ。僕の希望が一つ叶って、黒木さんの希望も一つ叶う。わかりやすいと思わない?」    言いながら猫のように擦り寄ってくる。  だからなんで俺と寝ようとするんだよ? わからない。わからないが、こんなことでいいなら、いくらでも付き合うけど。     ・・・・*・・・・*・・・・*・・・・   「それなに?」   「ローション。昨日えらく辛そうだったから」   「やさしーーねーー」    瓶を取って出そうとしている宝石君の手を止めた。   「俺がやるよ」    俺がお願いしているのに、宝石君に何もかもやらせて俺だけ気持ちいいって言うのは流石に違う気がする。なんとなくだけど男とやるってどうするかも解ったし。それに別に入れなくても宝石君が気持ちよくなればいいし……横にさせようと肩に触るとビクリと体が跳ねた。   「……いい! 僕がやる!」    目線を下にはずして少し震えている。怖いんだ……?   自分から能動的にするのはいいけれど相手からされるのはイヤなのか?  過去に宝石君の身に何があったのか察しられて辛いな。   「わかったよ。任せるわ〜〜」    昨日と同じくベットの上に大の字になった。なんか申し訳ない気はするが、こんなおじさんの体でいいなら好きにしてくださいだ。使ったことがないんだろう。宝石君は俺の体にドロドロと大量にローションをかけた。   「すごい美味しそうな匂い」    強い柑橘系の香りが鼻につく。出し過ぎだ。小さい手のひらでそれを俺の腹から塗り広げていく……やばいイケナイことをしている背徳感と快感がまたむくむくと湧いてきた……。   「気持ち良さそうーー!」    反応している俺の体を見て、ご機嫌でぬるぬるしてる。気持ちいいけど、色っぽくはないなーー。   「これ舐めても大丈夫なのかな?」    いいながら俺についているローションをぺろぺろと舐め始めた。あーーやばい。気持ちいい。宝石君の体にもローションがべったりついて密着した肌が滑ってぬるぬるするし。   「やばい…もう出る……」   「まだダメ!」    やっぱ入れるのか、宝石君は俺の上に乗るとゆっくり自分の中に入れようとする。呼吸を長くしてタイミングをはかってゆっくりと腰を落としていく。ローションのおかげで昨日ほどは辛くはなさそうだが、気持ち良さそうには見えない。少しでも楽になるように体を触る。ローションのついた手で宥めるように乳首や性器を触るとビクビク反応した。少しは痛みが紛れるといいけど……。   「……あ……」    小さく呟くと宝石君の体がびくりと振動した。少しびっくりしたような顔をして大きな瞳が揺らいだ。その中にユラッと快楽の色が見える。気持ちいいんだ……体の中が。攻めたい。その気持ちいい場所を思いきり突き上げて嬌声を上げさせたい。神経が焼かれるような凶暴な気持ちを奥歯を噛んで抑え込む。宝石君の細い腰を掴んで気持ちのいい場所にあたるように固定して少しだけ腰を動かした。   「……いい。気持ちい……」    ゆっくりとストロークを大きくしていっても、さっきまでの苦痛の表情はない。傷付けないように、少しづつ……早く、強くする。ローションの水音が生々しくて興奮する。   「あ……いく……も……」    俺を見る蕩けた宝石君の表情。ぎゅうぎゅうと搾り取られる感覚。たまらない。全然いい……失礼極まりないが女性より全然気持ちいい! 俺が出す前にイカせたい! 懸命に耐えて宝石君のペニスを上下に摩った。   「……あーーー」    心地よい高い嬌声と一緒に宝石君が出したのを確認して思いきり中に出した。たまらない。すげーー快感。   ・・・・*・・・・*・・・・*・・・・ 「びっくりしたーーすっごい気持ち良かった!」    ピロートークにしては、あけすけ過ぎる。だが無邪気な宝石君の一言一言の裏が辛い。セックス経験があるのに気持ちいい感覚を知らないなんて、どれだけ酷い目に会ってきたんだろうか……辛い忌むべき行為でしかないんだろうな。しかしなぜか俺としたがるかという謎は未だ解けていない。けれど俺とまた寝るっていうんだったら、なるべく気持ちよくしてトラウマを無くしてやりたいけど。   「黒木さん。明日休みでしょ?」   「土曜だからな」   「じゃあさ。動物園行きたい!」   「はあ?」   「オプションだと思って連れて行ってよ。帰ったら動画撮るからさ」   「お前が外に出たら大騒ぎになるぞ」   「大丈夫。変装するし」    ……まあ、気をつければ大丈夫か? こんなところに一人で引きこもっているより健康に良さそうだし。明るい方に気持ちを向けて欲しいしな。   「じゃあ行くか」   「やったーー」    宝石君がすげー無邪気に笑った。本当に子どもみたいでさっきまでの嬌態を思い出すと罪悪感が増してくる。ほんといけないことをしている感覚が拭えない。   「開園と同時に入るからね! 黒木さんも早く寝なよ〜〜!」    宝石君は機嫌よく、そのまま丸まって寝てしまった。幼い寝顔。過去にあんな悲惨な体験をしたとは思えない。しかし、丸まった背中には生々しい大きな傷がある。引き攣れたような大きな傷が縦に2ヶ所。間近で見ると細かい傷も多数残っていた。足にも後遺症。外傷だけじゃない……精神面でも大きな傷を抱えてるはずだ。信じていた友人からの裏切り。先生や多分家族もだろう。そして青春の一番大事な時期も喪失した。    許せるわけないよなぁ……。    ごめんなーーなんか、おじさんすげー切ないわーーいったい落とし所はどこにあるんだろうなーー。

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