「なあ、名前呼んでもいいか？」 　 　さすがにセックスするのにお前とか、宝石君はないよなーー。 　 「いいよ」 　 「壱哉」 　 「変な感じ。久しぶりにその名前で呼ばれた。じゃあ僕も。優護」 　 　名前を呼びながら、ぎゅ……と抱きついてきた。子どものような華奢な体と純粋な心。抱きしめ返すと胸が苦しくなった。 　 「俺からするのは、やっぱイヤか？」 　 「……いいけど、勃たないかもよ」 　 　そんなこと気にしてんのか？　意外？ 　 「壱哉とするのすげーー気持ちいいから大丈夫だ」 　 「ほんとに？」 　 　綺麗な顔が嬉しそうに笑った。そんな顔されたらなんか切ない。なるべく驚かさないように細い肩を抱きしめてキスをした。背中に手を回して、そっとベットに押し倒す。上から覗き込んだ壱哉の顔は本当に綺麗だ。俺が触れてもいいのか？　と思うくらいだよ。絶対に酷いことはしない。トラウマが無くなるくらい優しく、気持ちよくしてやりたい。喉元にも小さな傷があった。白い華奢な体に無数の小さな傷跡。それを辿るように舌を這わせると、白魚のようにピクピクと体が撥ねた。小さな乳首を舐めながら、ローションをつけた手のひらで彼のペニスをゆっくりと扱いた。 　 「辛くないか？」 　 「……何言ってんの？　気持ちいいよ。おかしくなりそう……」 　 　聞くと、とろっとした瞳で自分を見上げた。破壊力凄まじい……理性飛びそう。ペニスの先の筋を親指で優しく往復させながらなぞり射精を促した。 　 「……や、そこやだ！」 　 　男なら絶対気持ちいいところだ。強く弱く刺激する。 　 「……は、いっちゃう！　やだ。どうして入れないの？」 　 　蕩ける顔で、俺に強くしがみ付きながら、挿入しろとねだる。くそ！　こんな生き地獄あるか？　しかしまだ襲い掛かってはダメだ。頭を振りながら快楽を我慢しようとする壱哉のペニスを擦って射精させた。 　 「……あ、ああ！」 　 　ドクドクと手のひらに温かい壱哉の精液がかかる。 　 「……なんで？」 　 「気持ち良かったか？」 　 　荒い息をする壱哉の頬にキスをする。 　 「……したくないの？」 　 　壱哉は不満そうな不安そうな顔をしている。 　 「逆だ。だいぶ我慢したぞ」 　 「だったら、なんで？」 　 「おじさんはしつこいんだ。もっともっと壱哉の体を楽しんでからだ」 　 「……エロ親父」 　 　壱哉の顔が真っ赤になった。可愛い。あーーもう修行僧の気分。体をうつ伏せにさせてローションを垂らし後ろに指を入れた。初めてだが前立腺が気持ちいいことは知っている。指で慣らしながらゆっくりと探った。壱哉は恥ずかしそうに枕に顔を埋めて体をピクピクさせている。暫くほぐしているとビクリと白い背中が反った。 　 「やだ！　そこやだ！」 　 　ここだな。グリッと抉るとあっけなくまた射精した。 　 「なんでだよ！」 　 　枕に顔を埋めながら壱哉は叫んだ。 　 「辛かったか？」 　 「違う！　なんでしないんだよ！」 　 　あーーもう。なんて可愛いんだ。もう母ちゃんの顔でも思い浮かべるしか手がないな……。 　 「したくないんだったらもういい！」 　 「これ見てみろ」 　 　変態みたいでイヤだが、ギンギンに勃っている息子を見せた。 　 「……じゃあなんで？」 　 「お前が大事だからだろ」 　 　呆然としている壱哉の額にキスをする。 　 「でもさすがに限界だな」 　 　前からより幾分は楽なはずだ。後ろを向かせてゆっくり壱哉の中に入った。ゆっくりなるべく負担をかけないようにローションを塗り少しずつ入っていく。 　 「……ん」 　 　それでも、やっぱり苦しそうだ。壱哉のペニスを擦りながら、さっきの場所を探るように腰を動かす。 　 「……あ」 　 　艶のある声。ここだな。見つけた場所を狙って腰を動かした。 　 「……は、いい。優護……そこ」 　 　白い背が気持ち良さそうにしなって俺のものを締め付ける。たまらない。気持ちいい。もっと強く思いっきり打ち付けたい。だけど絶対乱暴にしてはだめだ。 　血色を帯びてきた背に大きな傷が浮かび上がる。その傷を舐めると壱哉の体が痙攣して射精しる。そのまま俺も壱哉の中でイった。 　 　セックスイコール挿入だと思ってるなんて、どんだけ酷い目に遭ってきたんだ？　チラリと彼を凌辱した人間が脳裏に浮かんだ。チリチリと胸が苦しくなる。俺は嫉妬しているんだろうか？ 　 「過去にお前を襲ったのは担任か?」 　 　無神経だろうか？　取材じゃない、俺自身が壱哉のことを知りたかった。 　 「……そう。クラスメイトもだよ。僕。愛人の子で母子家庭なんだよね。あの学校すっごい生徒の家庭環境に厳しくてそんな家庭の子ども僕だけだった。父親とは一度も会ったことないけど有名な政治家なんだって。だから例外的に入れたみたい。母親はそのことだけが自慢でそのプライドだけで生きてるような人だったから無理矢理あんな学校に入れられちゃったんだよね。だけどまともな家庭の母親とお坊ちゃんたちは僕みたいなの許せないんだよ。それでつっかかられることが多くてよく喧嘩してたんだけど、どうしても体が小さいから力で負けちゃうんだよね。しかも女の代わりにさせられてさーーあの自殺未遂した前原にもやられたことあるよ。死ぬかと思うほど痛くてさぁ。優護としたらセックスってこんなに気持ちいいんだってびっくりした」 　 　挙句にあの事件か……壱哉になんの過失がある？　あまりにも酷い……恨んだって、復讐したいって思ったって当たり前だ。背中から彼の細い肩を抱きしめた。 　「もしかして泣いてるんだ？　おじさんは涙もろいね」 　 　お前こそ、こんなひどい話を笑いながらするなよ。 　 「何人にもやられたし、体は傷だらけだし僕のこと気持ち悪い？」 　 「そんなことない。そんなこと言うな」 　 「じゃあもっかいしてよ。今度は前からしたい」 　 　笑いながら俺に抱きついてくる。俺とするのが気に入ったんならいくらでも付き合うよ。いやもう同情じゃない……俺は……。 　　・・・・＊・・・・＊・・・・＊・・・・ 　 　落ちるように寝てしまった壱哉の体を綺麗にしてベットに寝かせた。自虐的なことばかり言うが全然汚くも醜くもないよ。本当に綺麗で天使みたいだ。背中の大きな傷にそっと触れる。無理矢理羽をもがれた可哀想な天使だな。 　 　彼が俺と寝る理由が一つだけ見つかったかもしれない。同情させ、愛情を持たせて自分の兵隊にするためだ。例え、そうだとしても、まったく彼を責める気にはならないが少し胸が苦しいな。ダメだ……俺はもう取り込まれてるかも知れない。壱哉をこんな目に遭わせた奴らが憎くて仕方がない。これが彼の手管だったとしても、俺はもう冷静な判断を下せなくなっている気がする。