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第24話 side I ※R18

「なあ、名前呼んでもいいか?」    ベットに誘って上に乗ろうとすると優護が聞いてきた。いいに決まってる。僕はずっと優護って呼んでるよ。口に出してはいないけどね。   「いいよ」   「壱哉」   「変な感じ。久しぶりにその名前で呼ばれた。じゃあ僕も。優護」    嬉しい。くすぐったい。まるで恋人同士みたい。優護に手を伸ばし、抱きついた。恋人同士みたいにセックスしたい。   「俺からするのは、やっぱイヤか?」    イヤじゃない。イヤじゃないけど。優護が女性が好きなのは知ってるから。   「……いいけど、勃たないかもよ」    何もしないで、色っぽくもないこんな男の体でその気になるわけない。   「壱哉とするのすげー気持ちいいから大丈夫だ」   「ほんとに?」    気持ちよかったんだ。よかった。優護の手が背中に回って抱き上げられると、ゆっくりとベットに倒された。すごい優しい。軽くキスすると首元を舐められた。皮膚がつるような感触。いくつもの残る傷跡をなぞってる。体中に残る傷跡は自分でもいくつあるかわからない。優護は気持ち悪くはないんだろうか。やりたくなくなるかも……優護の手が僕のものを握った。ローションをつけた優護の暖かい手が上下して気持ちいい。出ちゃいそう。   「辛くないか?」   「……何言ってんの? 気持ちいいよ。おかしくなりそう……」    ……出したい。けど早く優護に入れてほしい。来て欲しいと手を伸ばしたけど優護の手はそのままずっとそのままで離してくれなかった。   「……や、そこやだ!」    優護の指が先をなぞる。気持ちいい! 我慢できない。   「……は、いっちゃう! やだ。どうして入れないの?」    やだ。早く早くして。じゃないと我慢できない。優護の背中に手を回して促すけど、聞いてくれない。どうして? やっぱり勃たないんじゃ? やっぱり僕からした方が良かったんじゃ?   「……あ、ああ!」    我慢したけど優護の手が気持ち良すぎて出してしまった。 「……なんで?」 「気持ち良かったか?」    言いながら優護は頬にキスしてきた。やっぱりダメなのかな……?   「……したくないの?」   「逆だ。だいぶ我慢したぞ」   「だったら、なんで?」   「おじさんはしつこいんだ。もっともっと壱哉の体を楽しんでからだ」   「……エロ親父」    僕が出すところなんか見て楽しいんだろうか……わからない。入れるのが気持ちいいんじゃないのかな? 体を持ち上げられてうつ伏せにされた。ローションを使って優護の指が入ってくる。今度こそ入ってくる。なるべく力を抜いて深く息を吐いた。恥ずかしい……早く早く入れて欲しい。なのにずっと指が僕の中を探るように動いていて入ってこない。あ! 優護の指が気持ちいい場所にあたった。ダメだ。そこはダメ!   「やだ! そこやだ!」    なのにそこを抉るように刺激されて、耐えられず出してしまった。  なんで? なんで入れないんだよ!!   「なんでだよ!」   「辛かったか?」   「違う! なんでしないんだよ!」    やっぱりイヤなんだ。その気にならないからこんなことして誤魔化してるんだ!   どうせ同情か、懐柔かなんだろう!    イヤなら最初からそう言えばいいのに!   どうしようもなく惨めな気持ちになった。   「したくないんだったらもういい!」   「これ見てみろ」    優護は自分の下半身を指差した。すっごい大きくなってる。したくない訳じゃないんだ。   「……じゃあなんで?」   「お前が大事だからだろ」    ……え? 今なんて言った?   「でもさすがに限界だな」    切羽詰まったような優護の低い声。ゾクゾクする。抱き抱えられるとまた優しくベットにうつ伏せにされた。ゆっくりと優護が入ってくる。圧迫感で苦しいけどそんなに痛くない。嬉しい。僕でこんなに固くなって興奮してるんだ。ローションの滑りでずるっと奥まで入ってきた。すごい。自分の中全部に優護の物が入ってるみたいだ。   「……ん」    少しづつ優護が動く。傷つけないように気遣ってくれているのがわかる。   「……あ」  さっきの気持ちいいところにあたった。指で押されるよりずっといい。   「……は、いい。優護……そこ」    すごい。気持ちいい……優護の物で目一杯広げられているのに痛くない。こんなことあるんだ。だからギリギリまで気遣ってくれたんだ。ずっと気持ちいい場所にゆっくりと当ててくれてる。たまらない……気持ちよくて指の先までジンジンする。焦ったい。もっと強くしてもいいのに。ふいに背中の傷に添うように舐められた。ざらりとした舌の感触。    もう無理! もう限界! 出ちゃう!    目の前が真っ白になるような浮遊感。思いっきり出すと、優護のも体の中に入ってきた。あったかい。気持ちいい。体が溶けそう。   ・・・・*・・・・*・・・・*・・・・ 「過去にお前を襲ったのは担任か?」    やっぱ気になるのかな?優護には全部知って欲しいから隠さないけど。   「……そう。クラスメイトもだよ。僕。愛人の子で母子家庭なんだよね。あの学校すっごい生徒の家庭環境に厳しくてそんな家庭の子ども僕だけだった。父親とは一度も会ったことないけど有名な政治家なんだって。だから例外的に入れたみたい。母親はそのことだけが自慢でそのプライドだけで生きてるような人だったから無理矢理あんな学校に入れられちゃったんだよね。だけどまともな家庭の母親とお坊ちゃんたちは僕みたいなの許せないんだよ。それでつっかかられることが多くてよく喧嘩してたんだけど、どうしても体が小さいから力で負けちゃうんだよね。しかも女の代わりにさせられてさーーあの自殺未遂した前原にもやられたことあるよ。死ぬかと思うほど痛くてさぁ。優護としたらセックスってこんなに気持ちいいんだってびっくりした」    何人にやられたかも覚えてない。やっぱ気持ち悪いだろうな。もうやりたく無いって思われたかも……。    背中から強く抱きしめられた。泣いてる? 泣きながら震えているのがわかった。   「もしかして泣いてるんだ? おじさんは涙もろいね」    僕のために泣いてくれてるんだ。あーーやっぱり好きだな。優護の声しか聞けない時から好きだったんだよ。すごくない?   「何人にもやられたし、体は傷だらけだし僕のこと気持ち悪い?」   「そんなことない。そんなこと言うな」   「じゃあもっかいしてよ。今度は前からしたい」    もっともっとして欲しい。全部忘れさせてよ。  優護としかしたことないって思わせてほしい。   ・・・・*・・・・*・・・・*・・・・    恋人じゃないけど、大事だって言って泣いてくれた。優護が同情で僕と寝てくれてるのはわかってるけど、それでもいい。全部優護に書き換えて欲しい。優護との記憶だけにしたい。  このまま復讐が上手くいったら流石に嫌われるかな……もしも優護が僕のそばにずっといてくれるなら、もう他のことはどうでもいいかも知れない……。    ズキっと強い頭痛がして黒い手が自分を押さえつける記憶がフラッシュバックした。気持ち悪い! 慌てて洗面所に行き嘔吐する。顔を上げた鏡に映る青白い自分の姿。貧相で傷だらけ。髪は一時期真っ白になり今でも茶色い、父も母も高身長なのにあの事故以来成長も止まった。    洗面台に涙がポタポタと落ちた。何くだらない夢を見ているんだ!   同じ位の痛みをあいつらに与えると誓ったじゃないか!

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