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第2話
「なんだってーー!びっくりしてー鼻血出ちゃったよーでも大切な事だよねー生きた保健体育!ちゃんと教えてもらって良かったーー危うく、りんちゃんを傷つけるところだったよ。しょうちゃんって超親切!」
社長室が個室だからってなに朝から恥ずかし気もなく男同士の性行為の内容を大声で喋ってるんだ!
「…ということで、予習はバッチリだから実践したいです!」
あーーーーぶん殴りたい!ぶん殴っても、すぐ起き上がって平気な顔してんだろうなー自分の想像でさらに憎悪が増した。
「これ以上セクハラを続けると訴えますよ」
実際訴える訳にもいかないのだが、どうにも腹の虫が収まらない。深森と桐生のやつどうしてくれようか。すでに脳内では二人とも壺の中で仲良く塩漬けだ。
「いいですか?昨日も言いましたが、私はあなたを恋愛対象としては見ていません。なので諦めていただきたい」
山田の動きが止まる。ビックリした顔をしたまま固まって動かない。
「やだーーーー!!!!」
…と思ったら大声を上げる。隣の総務部から何かありましたか?と慌てて部下が飛んできた。
厄介。厄介すぎる。創業して10数年見てきたが、こうなった山田は一度たりとも、意思を通さなかったことがない。今までは仕事上のことで、結果正解だったから許容してきたがこれは全く別問題だ。
* * *
「また来たんですか?」
流石に連日で邪魔されたのが不満なのか桐生が不機嫌そうに山田を迎えた。
「ここさっちゃんちでしょー?しょうちゃんだって来てるじゃない!」
「俺は恋人。あなたは上司です」
「ちがーう!ともだちーーー!!!だって酷いんだよ!男だってことはどうしようもないのにさー性転換すればいいのかな?」
「やめてください!」
185センチもある体躯の女性がうちの社長とか怖すぎる。
* * *
「話がしたいんだけど」
普通に喋ってる。珍しい。
桐生の入れ知恵だな。
「僕が男だってことは、もう変えられない事だから。それ以外で改善すべき点があれば言ってください!」
と言われても、それが一番の条件だから、どうしようもないんだが。それ以前に今、就業中なんでこのくだらないやり取りを今すぐ停止して欲しい。…いや、いい機会だから色々矯正させてやるか。
「条件をクリアしたからって承諾するわけじゃないですからね」
うん!うん!と頭をブンブン振って山田は頷いた。
「まず言葉遣い。そのこどもみたいな口調を一切やめていただきたい。我が社の社長としての風格と言動、容姿を備えてください。ヒゲは毎日剃る。寝癖は整える。猫背を正してまっすぐ歩く。服はスーツ。定時の出退勤。途中でふらふらどこかに行かない!仕事中の無駄話もやめていただきたい」
なんでこんな当たり前のことを言わねばならないのか?母親でもあるまいし。
「わかったーー頑張る!」
言った側からそれか!
「あ、了解しました。八魂専務」
ジロリと睨むと山田は慌てて言葉を訂正した。
そのくらいやればできるはずだろう?頭だけはいいんだから。
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